網膜光凝固術の原理と適応

六訂版 家庭医学大全科 の解説

網膜光凝固術の原理と適応
(眼の病気)

 網膜光凝固術は眼科医がもつ最も強力な治療手段のひとつで、眼科の臨床では広く応用されています。網膜光凝固が広く普及したのは、光源としてレーザー光が実用化されたことが大きな理由です。レーザー光は波長がよく揃っているという特性があり、正確で効率のよい光凝固ができるようになりました。機器も年々改良され、格段に扱いやすくなっています。

 網膜光凝固の原理は、照射された光が吸収されると熱が発生し、組織の熱凝固が生じるというものです。簡単にいえばやけどを作り、それが瘢痕(はんこん)化することでさまざまな治療効果を期待するということです。光を吸収するのは、通常、網膜の外側にある網膜色素上皮ですが(図45)、血管や赤血球標的にすることもあります。治療効果には、網膜新生血管の予防と退縮網膜出血浮腫(ふしゅ)の吸収促進、水もれを塞ぐ、網膜と網膜色素上皮・脈絡膜(みゃくらくまく)癒着(ゆちゃく)増強脈絡膜新生血管の退縮などがあります。

 網膜光凝固が行われるのは糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)、網膜静脈閉塞症(へいそくしょう)、中心性漿液性脈絡網膜症(しょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)、網膜裂孔(れっこう)、網膜剥離(はくり)、未熟児網膜症、コーツ病、網膜血管腫(けっかんしゅ)など実に多種多様です。

 なかでも糖尿病網膜症が最も多く、網膜新生血管(増殖網膜症)の予防・治療、網膜浮腫(黄斑症)の吸収促進と2通りの目的があります。網膜新生血管の予防・治療を目的とするのは他に網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症などがあります。網膜浮腫・出血の吸収は網膜静脈閉塞症、コーツ病、網膜血管腫などでも目的になります。中心性漿液性脈絡網膜症では水もれ部分をピンポイントで凝固します。網膜裂孔網膜剥離に対する光凝固は網膜の癒着促進が目的です。加齢黄斑変性症では脈絡膜新生血管の退縮が目的で、新生血管を直接凝固します。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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