緊張性気胸

六訂版 家庭医学大全科 「緊張性気胸」の解説

緊張性気胸
(外傷)

 気胸のうち、空気が流入する損傷部が一方向に弁状となっている場合には、吸気によって胸腔内へたまった空気を呼気(こき)時に体外へ排出できず、そのため呼吸運動をするたびに胸腔内に空気がたまっていきます。

 胸腔内圧は極度に上昇して、肺は高度に虚脱(きょだつ)収縮)し、縦隔(じゅうかく)は反対側へかたより、患側の横隔膜(おうかくまく)は下降して重い呼吸循環不全を示すようになります。この状態を緊張性気胸と呼びます(図36­C)。

 緊張性気胸の症状は、高度の呼吸困難、患側胸郭(きょうかく)の著しい膨隆(ぼうりゅう)皮下気腫(ひかきしゅ)チアノーゼ頻脈(ひんみゃく)などです。

 緊張性気胸は、生命に関わる極めて重篤な状態で、一般の人ができる応急処置はないので、迅速に救急車を呼び、しかるべき医療機関に搬送してもらわなければなりません。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の緊張性気胸の言及

【気胸】より

…ところが,このような状態の胸腔に,気体が流入すると,肺は縮み(このような状態を肺虚脱という),呼吸の障害となる。さらに多くの気体が流入すると,胸郭内の他の臓器をも圧迫して,その臓器の機能障害を起こすにいたる(これを緊張性気胸という)。しかし一方,人為的に胸腔に気体を流入させると,肺と胸腔内面が遊離するため,胸腔内の性状が観察しやすくなり,また肺を縮めることによって,肺内の病気を変化させることができるので,人為的に気胸を起こさせ,診断,治療に応用することもある(これを人工気胸という)。…

※「緊張性気胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」