総動脈幹症(読み)ソウドウミャクカンショウ

デジタル大辞泉 「総動脈幹症」の意味・読み・例文・類語

そうどうみゃくかん‐しょう〔‐シヤウ〕【総動脈幹症】

重篤な先天性心疾患の一。心臓から血液を送り出す大動脈肺動脈が2本に分かれず、両心室から1本の太い血管(総動脈幹)が生じ、そこから冠動脈・肺動脈・大動脈が枝分かれしている奇形をさす。総動脈幹残遺症
[補説]本来、心臓では、全身から戻ってきた血液(静脈血)が上大静脈下大静脈から右心房に入り、右心室から肺動脈を通して肺へ送り出されると同時に、肺で酸素を十分に取り込んだ血液(動脈血)が肺静脈から左心房に入り、左心室から大動脈を通して全身へ送り出される。総動脈幹症の場合、肺に送り出される酸素の少ない静脈血と酸素の多い動脈血が、ともに総動脈幹に送り出されて混ざるため、全身に十分な酸素が供給されず、また、左心室は右心室より高い圧力で血液を全身に送り出しているため、肺にも通常より高い圧力で過剰な血液が送り出されることにより、心不全呼吸不全を起こす。人工血管等で右心室と肺動脈をつなぐ手術を行う。

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内科学 第10版 「総動脈幹症」の解説

総動脈幹(遺残)症(その他の先天性心疾患)

(7)総動脈幹(遺残)症(truncus arteriosus)
概念・頻度
 大動脈,肺動脈の分離が完成せずに,心室中隔にまたがる形で単一大血管が起始する疾患である.先天性心疾患の0.7%を占める.円錐中隔の欠損を伴い,心室中隔欠損は必ず併存する.1000出生に0.06~0.11人の比較的まれな疾患である.
血行動態・管理・治療
 出生後まもなくから肺血管抵抗の低下に伴って高肺血流となる.拡張期にも血流は体-肺方向へと大きく流入するため,体血流減少は心室レベルでの大短絡よりも顕著となる.解剖学的修復としては,心室中隔欠損の閉鎖+肺動脈主幹部の動脈幹からの分離+右室-肺動脈グラフト作成であるが,一期的に施行困難な場合には肺動脈絞扼あるいはN2吸入による肺血流制限を行って体血流を確保し,全身状態の安定化を待っての修復となる.高肺血流により肺動脈の閉塞性病変をきたしやすいので早期の修復が望ましい.[山田 修]
■文献
Fyler DC, Buckley LP, et al: Report of the New England Regional Infant Cardiac Program. Pediatrics, 65(Suppl): 376-461, 1980.
Rose V, Izukawa T, et al: Syndromes of asplenia and polysplenia: A review of cardiac and non-cardiac malformations in 60 cases with special reference to diagnosis and prognosis. Br Heart J, 37: 840-852, 1975.
Ryan AK, Blumberg B, et al: Pitx2 determines left-right asymmetry of internal organs in vertebrates. Nature, 394: 545-551, 1998. 7)~10)全体
Mitchell ME, Sander TL, et al: The Molecular Basis of Congenital Heart Disease. Semin Thorac Cardiovasc Surg, 19: 228-237, 2007.
Anderson RH, Baker EJ, et al: Pediatric Cardiology,3rd ed, Churchil Livingston/Elsevier, Philadelphia, 2009.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「総動脈幹症」の意味・わかりやすい解説

総動脈幹症
そうどうみゃくかんしょう
truncus arteriosus communis; TAC

総動脈幹遺残症あるいは総動脈幹開存症ともいう。胎生第5~8週に大動脈と肺動脈は分離するが,これが分離せずに1本の動脈幹として残った先天性の奇形をいう。左右両心室から1本の血管が起り,これによって各循環系へ血液が供給される。常に心室中隔欠損を伴う。臨床的には,肺うっ血のため呼吸困難を起しやすく,またチアノーゼが生後まもなく現れるものと,著明でないものとがある。予後は一般に不良で,早期に手術を行う必要がある。

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