縫合(読み)ホウゴウ

デジタル大辞泉 「縫合」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ごう〔‐ガフ〕【縫合】

[名](スル)
縫い合わせること。特に、外科手術外傷などで切断された患部を縫い合わせること。「切開した傷口縫合する」
頭蓋骨とうがいこつを構成する骨が、鋸歯きょし状の縁を互いにかみ合わせて連結しているもの。

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精選版 日本国語大辞典 「縫合」の意味・読み・例文・類語

ぬい‐あわ・す ぬひあはす【縫合】

[1] 〘他サ下二〙 ⇒ぬいあわせる(縫合)
[2] 〘他サ五(四)〙
※狐の裁判(1884)〈井上勤訳〉一一「巧みに前後彌縫(ヌヒアハ)し善人顔を為すといへども」

ほう‐ごう ‥ガフ【縫合】

〘名〙
① (━する) 縫い合わせること。特に、手術や外傷による身体組織損傷を縫い合わせること。
※医語類聚(1872)〈奥山虎章〉「Episiorrhaphy 子宮脱ニ其口ヲ縮メンガ為メニ陰唇ヲ縫合スル術」 〔後漢書‐方術伝下・華陀
頭骨二つの骨が、のこぎりの歯のようなぎざぎざをつくり、連結している部分の称。〔生物学語彙(1884)〕

ぬい‐あわ・せる ぬひあはせる【縫合】

〘他サ下一〙 ぬひあは・す 〘他サ下二〙
① 縫って双方が合うようにする。縫ってつなぐ。合わせて縫う。
※岩淵本願経四分律平安初期点(810頃)「皮肉を縫(ヌヒ)合て好薬を以て之に塗りしかば」
② 食い違わないように、二つのことをうまく合わせる。つじつまを合わせる。

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普及版 字通 「縫合」の読み・字形・画数・意味

【縫合】ほうごう(がふ)

切開部分を縫い合わせる。〔後漢書、方術下、華陀伝〕先づ酒を以て沸散をせしめ、うて覺むる無ければ、因りて腹背を刳破し、~則ち斷截(だんせつ)洗して、疾穢を除去し、にして合し、傅(つ)くるに膏(しんかう)を以てす。四五日にして創(きづ)(い)え、一に皆復す。

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改訂新版 世界大百科事典 「縫合」の意味・わかりやすい解説

縫合 (ほうごう)
suture

(1)解剖学では骨の不動結合の一種をいう。骨どうしが結合組織の薄層で連結されていて,長い連結部は,凹凸のある曲線をなして互いに食い込んでいる。ヒトを含めて哺乳類では頭蓋骨の連結にのみみられる。なお類似の結合は,カメの甲やハコフグの外骨格にもみられる。

(2)外科における基本的な手術手技の一つ。手術または外傷によって口の開いた部分は,互いに引き寄せて密着させておくことによって治癒が早まる。この目的のために針と糸を用いて組織を縫い合わせるのが縫合である。縫合には大きく分けて結節縫合と連続縫合があり,多くは前者が用いられる。用いる糸の材質には,カットグート(腸線)やポリグリコール酸など生体に吸収されるもの,絹,木綿,ナイロン,ポリエステル,ポリプロピレン,ステンレススティールなどの非吸収性のものがあり,それぞれ単線,編糸,フッ素樹脂やシリコーンで加工したものなどがある。縫合する針にも直針と湾曲針がある。これら糸,針,縫合法は,縫合する組織の種類や部位,形態によって選択される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「縫合」の意味・わかりやすい解説

縫合
ほうごう

(1) suture 縫合せること,特に外傷の傷口や手術時の切り口を縫合せて,ふさぐこと。縫合針,持針器および縫合糸によって行う。縫合糸として用いられる材料には,絹糸,テトロン,テフロン,ナイロン,ポリプロピレンなどの合成繊維製糸,銀線などのほかに,カットグート,コラーゲン糸,ポリアミノ酸製の糸などのように,体内で分解吸収される吸収性縫合材料もある。そのほか,金属や接着材などの特殊な材料も応用されている。 (2) bone suture 解剖学的には,頭蓋にみられる骨の連結様式の一部をいう。

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岩石学辞典 「縫合」の解説

縫合

堆積岩の組織で,石英の粒子が隣接する粒子を妨害して,鉱物粒子の境界線が非常に不規則に入り組んで接し合い,骨の縫合線に似た形をとるものに使用する[Blake : 1888].

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世界大百科事典(旧版)内の縫合の言及

【頭骨】より

… 下あごでは上記のように下顎軟骨が系統発生上の本来の母体であるが,下あごを備えた最古のものである古生代の棘(きよく)魚類以来多くの皮骨性要素が現れて下顎軟骨に交代した。個体発生上もまず下顎軟骨が発生し,次いでその周辺に多くの皮骨が現れて縫合suture(不動性関節)でつながり合い,下あごの骨格になる(その上に歯が生える)。そしてもとの下顎軟骨は,前記のように終生メッケル軟骨として残存する両生類を除いて,変形,退化していく。…

【関節】より

…第1は,相接する2個の骨または軟骨の間に可動性がほとんどあるいはまったくない場合で,これを不動結合とよぶ。少量の結合組織繊維で結びつけられた頭蓋の各骨の間(縫合)や哺乳類の歯の歯根と歯槽骨の間,軟骨で結びつけられた哺乳類の骨盤の左右の恥骨の間(恥骨結合)や頭蓋底の蝶(ちよう)形骨と後頭骨の間などがその例である。これらの場合,動物の種類によっては骨化して一体となっていることもあり,同じ動物でも加齢とともに骨化して2個の骨が癒合することもある(骨結合)。…

【頭骨】より

… 下あごでは上記のように下顎軟骨が系統発生上の本来の母体であるが,下あごを備えた最古のものである古生代の棘(きよく)魚類以来多くの皮骨性要素が現れて下顎軟骨に交代した。個体発生上もまず下顎軟骨が発生し,次いでその周辺に多くの皮骨が現れて縫合suture(不動性関節)でつながり合い,下あごの骨格になる(その上に歯が生える)。そしてもとの下顎軟骨は,前記のように終生メッケル軟骨として残存する両生類を除いて,変形,退化していく。…

※「縫合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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