繭の豊収を祈って作られる作り物の一種。柳やミズキなどの枝に繭の形にした餅やだんごを多数つけたもので,メーダマ,繭餅,繭だんごともいう。東北から関東,中部など東日本の養蚕地帯で盛んに作られた。普通は小正月に作るが,初午(はつうま)に再度作る所もある。繭玉のほか,養蚕道具をかたどった餅をつけたり,近年ではだんごや餅の代りにせんべいで作った繭玉をつける所もあり,また正月に縁起物として繭玉を飾る商店もみられる。繭玉は,明治の養蚕奨励で普及したが,木綿が有力な作物であった地方などでは繭玉以前に木綿玉(もめんだま),綿だんごなどと称するものが作られていた。これは柳の枝などに綿の花や実の形のだんごをつけたものであった。明治以後は繭玉にとって代わられ,繭玉が餅花の総称となっている所も多い。繭玉は茶の間,かまど,神棚など屋内の各所に飾られるが,16~20日ころに下ろして食べる。これを養蚕仕事になぞらえて,繭玉かきとか繭玉練りという所もある。
→餅花
執筆者:飯島 吉晴
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…稲荷神社としては京都の伏見稲荷大社や愛知の豊川稲荷が有名であるが,また各地には大小さまざまの稲荷があり,信仰を集めている。稲荷信仰とは別に,長野,山梨,埼玉などの養蚕地帯では,この日を養蚕祈願の日とし,蚕影様(こかげさま),オシラ様などの祭りをしたり,繭玉を作って屋内外の神に供えたりしているし,東北地方や東海地方には,馬(午)にちなんで蒼前様(そうぜんさま)や馬頭観音に参る所があるが,いずれも農事に関係したことである。近畿地方南部などでは,餅投げなど厄払いに関するいろいろな呪法が行われる。…
※「繭玉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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