繰越明許費(読み)くりこしめいきょひ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「繰越明許費」の意味・わかりやすい解説

繰越明許費
くりこしめいきょひ

国の歳出予算経費うち、その性質上または予算成立後の事由によって、年度内に支出を終わらない見込みのあるものも出てくるが、それらについてはあらかじめ国会議決を経ておけば翌年に繰り越して使用することができる。このような経費を繰越明許費とよぶ。一会計年度における歳出予算の経費の金額はその年度内に支出を完了することを要し、これを翌年度に使用することはできないのが原則である。しかし、予算の年度区画というのがそもそも人為的なものであり、この原則を例外なしに貫くことは、かえって予算の執行硬直化をもたらすことになりかねないから、財政法では一定の条件のもとに翌年度に繰り越して使用できる場合を認めている。繰越明許費もこの特例の一つで、あらかじめ国会の議決を経ておき、実際に繰越しの必要が生じた場合は、事項ごとに事由および金額を明らかにして財務大臣承認を経ることとなっている。予算の繰越しには、このほか事故繰越しがある。これは、年度内に支出負担行為をした経費について、災害など避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかった場合に限られるもので、財務大臣の承認を経て翌年度にその経費を繰り越して使用することができる。

 なお、地方公共団体においても、国の場合と同様、繰越明許費および事故繰越しが認められている。

[林 正寿]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「繰越明許費」の意味・わかりやすい解説

繰越明許費 (くりこしめいきょひ)

国家の歳出予算の経費のうち,その性質上あるいは予算成立後のなんらかの理由により,年度内に支出を完了することのできない見込みのあるものについては,あらかじめ国会の議決を経て,翌年度に繰り越して使用することができる。これを繰越明許費という。毎会計年度の歳出予算はその年度内に使用することが原則(会計年度独立の原則)であるが,この原則をそのまま貫くとかえって実情にそぐわず,予算使用が不経済,非効率的になる場合がある。したがって,そのような場合に限って例外的に歳出予算の繰越しを行い,翌年度の予算として使用することが認められているが,繰越明許費はこの一例である。歳出予算の繰越しには,このほかに,事故による繰越し,継続費による繰越しなどがある。
会計制度 →予算
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「繰越明許費」の意味・わかりやすい解説

繰越明許費【くりこしめいきょひ】

国または地方公共団体の歳出予算のうち,その性質上または予算成立後の事由により年度内に支出が終了しない見込みの経費で,あらかじめ国会の議決を経て翌年度に繰越し使用できるもの(財政法14条3項)。翌年度を年限とする継続費性格をもつ。会計年度独立の原則の例外規定。
→関連項目概算要求予算

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「繰越明許費」の意味・わかりやすい解説

繰越明許費
くりこしめいきょひ

財政法で認められている歳出予算の繰越制度。歳出予算のうち経費の性質上または予算成立後の事情によって年度内に支出が終らないと見込まれるものを,あらかじめ国会の議決を得ておいて翌年度に繰越して支出できるようにする制度。国の予算はその会計年度内に支出するのが原則である (単年度主義) が,やむをえない理由がある場合は財政法 14条の3によって繰越支出が認められる。たとえば公共土木事業などの経費で,天候その他の理由で工事が遅れ,年度内支出が不可能になるような場合である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報