翁草(読み)オキナグサ

デジタル大辞泉 「翁草」の意味・読み・例文・類語

おきな‐ぐさ【翁草】

キンポウゲ科多年草。日当たりのよい山野に生え、高さ約30センチ。全体に長く白い毛が生え、葉は羽状複葉。春、暗赤褐色の花を1個下向きにつける。実は白い毛をもち、風で飛ぶ。根を漢方で白頭翁といい、下痢に薬用。桂仙花けいせんか善界草ぜがいそう 春》「―手になだらかな山の景/八束」
の別名。
の別名。
[補説]書名別項。→翁草

おきなぐさ【翁草】[書名]

江戸中期の随筆。200巻。神沢貞幹著。初めの100巻は明和9年(1772)成立、のち100巻を加えたが天明8年(1788)大半を焼失、再び編述したもの。明治38年(1905)全巻を刊行。中古以来の古書からの伝説・奇事・異聞の抜き書きや自身の見聞を記録したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「翁草」の意味・読み・例文・類語

おきな‐ぐさ【翁草】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. キンポウゲ科の多年草。本州、四国、九州の低山地の草地に生える。全体に絹毛があり、高さ一五~三〇センチメートルになる。太くまっすぐな地下茎から深く羽状に切れ込んだ葉を叢生(そうせい)する。四、五月ごろ、葉の中心から高さ一〇~四〇センチメートルになる花茎を伸ばし、先端に内面が暗赤色、外面に絹毛を密生した六弁の花を開く。花後、雌しべは長く尾状に伸び、密に生えた羽毛とともに老人の銀髪を思わせる。漢名、白頭翁。赤熊柴胡(しゃぐまさいこ)。はぐま。おばがしら。うばがしら。けいせんか。ぜがいそう。ねこぐさ。《 季語・春 》
      1. [初出の実例]「凡て、諸の山野に在るところの草木は〈略〉細辛・白頭公(おきなぐさ)」(出典:出雲風土記(733)飯石)
    2. 植物まつ(松)」の異名
      1. [初出の実例]「翁草 松 住吉や庭のあたりの翁くさ長ゐもてみる人をおこちて」(出典:蔵玉集(室町))
    3. 植物「きく(菊)」の異名。《 季語・秋 》
      1. [初出の実例]「霜がれのおきな草とは名のれどもをみなへしには猶なびきけり」(出典:順集(983頃))
    4. 植物「あおやぎそう(青柳草)」の異名。
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 江戸時代後期の読本。五巻五冊。伊丹椿園作画。正称「今古奇談翁草」。安永七年(一七七八)、京都、菊屋安兵衛刊。全一〇話の奇談怪談集。唐代小説「崑崙奴」を翻案した一編があり、最後の「怪談振舞」には作者自身の姿が投影されている。
    2. [ 二 ] 江戸中期の随筆。二〇〇巻。神沢杜口(とこう)(貞幹)著。寛政三年(一七九一)成立。明治三八年(一九〇五)刊。京都町奉行所与力であった自己の見聞した事実や中古以来の古書から記事を抜き書きして、批評などを加えたもの。なお、天明四年(一七八四)刊の抄出五巻本がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「翁草」の意味・わかりやすい解説

翁草 (おきなぐさ)

江戸後期の随筆。神沢杜口(かんざわとこう)著。1791年(寛政3)成立。200巻。別に抄出刊本5巻,異本200巻がある。諸書,諸記録を抄録し,また,自己の見聞を記して一書としたもの。杜口は京都町奉行所の与力であったので,他書に見られぬ京都の事件や風俗について記述した章が若干ある。また,今日原本の知られぬ他書からの抄出もあって注目される。近世後期の京都の随筆としては第一級のものの一つ。内容は歴史,地理,文学,芸能,有職故実,芸術,工芸宗教など万般に及ぶ。《日本随筆大成》第3期に収められている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「翁草」の意味・わかりやすい解説

翁草
おきなぐさ

江戸中期の随筆。200巻。神沢杜口(かんざわとこう)(1710―95)著。1792年(寛政4)の西山拙斎(せっさい)の序文、その他によって、1760年代後半から90年ごろ(明和(めいわ)から寛政(かんせい)初年)にかけて順次成立したと推定できる。近世に成立した書籍、記録を抄録して一書と成したもの。内容は、歴史、地理、文学、芸能、有職故実(ゆうそくこじつ)、美術、工芸、宗教など多岐にわたる。杜口が京都町奉行所(まちぶぎょうしょ)与力であったので京都の事件、風俗などについて、また俳人でもあったので江戸中期京都俳壇についての、それぞれ詳しい記述がみられる。版本『翁草』は5巻の抄出本。『異本翁草』もある。

[宗政五十緒]

『『日本随筆大成 第3期 19~24』(1978・吉川弘文館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「翁草」の意味・わかりやすい解説

翁草
おきなぐさ

江戸時代後期の随筆。神沢杜口 (貞幹) 著。 200巻。巻一に安永5 (1776) 年の序がある。寛政3 (91) 年成立。抄出して5巻とした天明4 (84) 年刊本と,異本と称される写本 (国会図書館本) がある。他書をそのまま写した部分が多いが,著者の見聞の記録は,歴史,地理,風俗,文芸など百般にわたり,江戸時代を理解するうえに有益な資料である。杜口は,別号其蜩庵,宝永7 (10) 年に生れ,寛政7 (95) 年に没したという。大坂の人で,京都町奉行の与力。半時庵淡々について,俳諧に遊んだ。

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百科事典マイペディア 「翁草」の意味・わかりやすい解説

翁草【おきなぐさ】

江戸後期の随筆。元京都町奉行所与力神沢貞幹(杜口(とこう))〔1710-1795〕著。200巻。1791年成立。自己の見聞や,中古,鎌倉から江戸期までの伝説,奇事,異聞を諸書から抜書きしたもの。近世後期の京都の随筆としては出色のものの一つ。
→関連項目高瀬舟(文学)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「翁草」の解説

翁草 (オキナグサ)

学名:Pulsatilla cernua
植物。キンポウゲ科の多年草,園芸植物,薬用植物

翁草 (オキナグサ)

植物。マツ科の常緑針葉高木,園芸植物,薬用植物。アカマツの別称

翁草 (オキナグサ)

植物。マツ科マツ属の常緑高木の総称。マツの別称

翁草 (オキナグサ)

植物。キク科キク属の草の総称。キクの別称

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