胃石(読み)イセキ(その他表記)Bezoar

デジタル大辞泉 「胃石」の意味・読み・例文・類語

い‐せき〔ヰ‐〕【胃石】

ザリガニの胃の中にある、白色の円盤形の炭酸カルシウムの塊。脱皮後2、3日で体内に吸収され、外骨格形成に用いられる。古くはオクリカンキリとよび、眼病薬として用いられた。アカテガニベンケイガニなどにもある。
胃内にできた結石。摂取した異物食物が物理的・化学的変化によって形成されたもの。ベゾアール
動物が、食物をすり潰して消化を助けるために飲み込んだ石。アザラシ・ワニ・鳥類などにみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「胃石」の意味・読み・例文・類語

い‐せきヰ‥【胃石】

  1. 〘 名詞 〙 ザリガニ、アカテガニなどの甲殻類の胃にある二個の結石。球形または半球形で白色、カルシウムを含む。ザリガニの胃石は古くからオクリカンキリと呼ばれ、眼病の薬とされた。

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家庭医学館 「胃石」の解説

いせき【胃石 Bezoar】

[どんな病気か]
 胃石とは、胃内の異物の1つで、胃にある石、あるいは、石のように硬いものをいいます。摂取した食物成分や異物が、胃内で化学的・物理的変化のために結石化します。
 空腹時にカキを大量に食べて生じる柿胃石(かきいせき)、コンフリーヒレハリソウ=植物の一種)によるコンフリー胃石(いせき)、野菜や果実の繊維、海藻類などによる線維胃石(せんいいせき)、毛髪を飲み込む癖のある人にみられる毛髪胃石(もうはついせき)などがあります。
 柿胃石は、形成が速く健常な胃内にも形成されますが、ほかの植物胃石(しょくぶついせき)は、胃切除後の残胃(ざんい)、糖尿病性神経症、胃がんなど、胃運動の低下や胃排出障害のある場合に形成されやすくなります。
 とくに柿胃石は、吐(は)き気(け)・嘔吐(おうと)、上腹部痛などの急性症状を現わし、上腹部に移動性のしこり腫瘤(しゅりゅう))をふれます。便や吐物(とぶつ)に胃石がまじることもあります。また、胃石によって胃粘膜(いねんまく)が傷つき、びらん(ただれ)や潰瘍(かいよう)となることがあります。
 柿胃石以外では、無症状、あるいは軽度の症状で、慢性的です。
[検査と診断]
 カキを食べたことや、毛髪を飲み込む癖などを聞き出す問診が重要です。腹部単純X線検査、腹部超音波検査、上部消化管X線検査、内視鏡検査などで診断します。
[治療]
 胃石を溶解して縮小させる試みとして、胃洗浄、炭酸水素ナトリウム剤、パパイン製剤、分解酵素剤(ぶんかいこうそざい)などが使用されます。
 最近では、内視鏡を用いて生検鉗子(せいけんかんし)で胃石を破砕し、小片として十二指腸(じゅうにしちょう)より肛側(こうそく)へ排出させるか、内視鏡を介して回収することが多く行なわれます。
 胃石の排出や回収が不可能な場合や、大きくて腸閉塞(ちょうへいそく)をおこした場合には、外科的手術となります。

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改訂新版 世界大百科事典 「胃石」の意味・わかりやすい解説

胃石 (いせき)
gastrolith

ザリガニやアカテガニなど,汽水から淡水域に生息する甲殻類の胃中にできる主として炭酸カルシウムからなる白い結石。球形,半球形,円盤状のものがあり,胃壁に沿って左右2個作られる。一般的には脱皮に先立ち,甲殻中のカルシウム塩が血液中に溶かし出され,胃に送られて胃石が形成されるのであるが,クロベンケイガニなどでは必ずしも脱皮の前に形成されるわけではない。脱皮後は胃石は溶かされて血液カルシウムとなって新しく分泌された甲殻を硬化させるのに使われる。すなわち胃石の形成は,カルシウム塩の多くない生息環境において,甲殻中の炭酸カルシウムを脱皮のたびにすべて捨ててしまうのを防ぐ機構と考えられる。そのため,胃石は脱皮の直前に最大になる。ザリガニの胃石はとくに発達がよくて直径5mm以上になり,古くからoculicancri(〈カニの目の意〉)とよばれ眼病薬とされてきたが,これは外形からの発想であるにちがいない。効能書によれば,肺病,性病の特効薬であり,また強壮剤でもあるが,成分を考えれば,にわかには信じ難い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃石」の意味・わかりやすい解説

胃石
いせき

甲殻類のうちザリガニやオカガニなどの胃の中に、脱皮時に形成される2個の白色球形をした結石。海産のエビやカニ類と違い、カルシウム塩含量の少ない淡水にすむザリガニなどにとってはその補給がむずかしいところから、脱皮に先だち古い甲らの裂け目のできる部分やはさみなどからカルシウムの再吸収がおこり、胃に送られて胃石として蓄えられる。脱皮が終わると、胃石のカルシウムは血中にイオンとして溶け込んで、新しい甲らに運ばれ石灰化してそれを硬化する。しかし、一般には古い甲らを食べてカルシウムを得ることが多く、胃石がすべての供給源ではない。ザリガニの胃石はラテン語で「カニの目」を意味するオクリ・カンクリoculi cancriの名で古くから知られ、眼病薬として使用されたが、その効用には疑問がある。

[守 隆夫]

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岩石学辞典 「胃石」の解説

胃石

ヤギやカモシカなどの動物の体内に見られる石の古い名称.これらの石は強力な解毒剤と信じられていた.ペルシア語のPad-zahrは解毒剤の意味.

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栄養・生化学辞典 「胃石」の解説

胃石

 →ベゾア

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