家庭医学館 「胆嚢良性腫瘍」の解説
たんのうりょうせいしゅよう【胆嚢良性腫瘍 Benign Tumor of the Gallbladder】
超音波検査の普及にともない、胆嚢(たんのう)内の腫瘍性病変(しゅようせいびょうへん)が偶然発見される機会が増えてきました。胆嚢良性腫瘍というと、がん・肉腫(にくしゅ)などの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)を除く腫瘍性病変ということになりますが、胆嚢の粘膜面(ねんまくめん)に限局(げんきょく)してできる隆起(りゅうき)である良性の非腫瘍性(ひしゅようせい)ポリープも含めて胆嚢良性腫瘍と呼ぶことが多いようです。
このなかには、コレステロールポリープ、過形成性(かけいせいせい)ポリープ、炎症性ポリープ、腺腫(せんしゅ)、腺筋腫症(せんきんしゅしょう)(コラム「胆嚢腺筋腫症とは」)などが含まれます。
胆嚢ポリープの大半を占めるコレステロールポリープの主体は、コレステロールを食べた白血球(はっけっきゅう)の一種である組織球(そしききゅう)が集まったものです。30~40歳代に多くみられ、胆嚢内に多発することも少なくありません。
過形成性ポリープは胆嚢粘膜上皮(ねんまくじょうひ)の過形成より生じたものです。
炎症性ポリープは炎症性肉芽組織(にくげそしき)やリンパ組織よりなるもので、胆石症(たんせきしょう)を合併したり、胆嚢炎症状をともなうことが多いようです。
腺腫(せんしゅ)は胆嚢腺(たんのうせん)の上皮にできる良性腫瘍で、その形態から、乳頭状腺腫(にゅうとうじょうせんしゅ)と非乳頭状腺腫とに分けられています。
[症状]
無症状のことが多く、健康診断や別の病気の精査中に発見されることがよくあります。胆石などを合併していると腹痛などの胆嚢炎症状が出ることもあります。
胆嚢腺筋腫症の場合は腹痛、多くは長期間にわたる鈍痛(どんつう)がおこります。
[検査と診断]
胆嚢の病気は、その解剖学(かいぼうがく)的位置により、胃のように、直接組織の一部をとって調べることが簡単にできないため、画像診断だけでは良性か悪性かの判断がつかないことが少なくありません。
もっとも簡単で有力な検査法は腹部超音波検査ですが、悪性腫瘍の可能性があるときには、いろいろな検査を組み合わせる必要があります。たとえば、腹部CT、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ないしきょうてきぎゃっこうせいすいたんかんぞうえい)、超音波内視鏡、MRIなどです。
[治療]
胆嚢良性腫瘍のうち、治療の対象となるのは、症状があるものや、がんなどの悪性腫瘍が否定できないものです。
症状がない場合に治療をどうするかのポイントは、ポリープ(腫瘍)の大きさ、形状、そして増大の経時的変化です。直径が10mm以下のものはがんになる可能性が非常に低いのですが、10mmを超えるとがんになる頻度が高くなり、20mmを超えるとがんである可能性が大きくなります。
したがって、施設によるちがいもありますが、基本的には10mm未満とそれ以上に分け、10mm未満であれば3~6か月ごとに超音波検査を行なって増大の変化を観察し、直径が10mm以上の場合は、精査した後、腹腔鏡下胆嚢摘出術(ふくくうきょうかたんのうてきしゅつじゅつ)または開腹下胆嚢摘出術(かいふくかたんのうてきしゅつじゅつ)(胆石症の「治療」の外科的治療(手術))を行なうべきでしょう。腺筋腫症の場合は、症状があることが多く、手術することが多いようです。