胸郭(読み)キョウカク(その他表記)chest
thorax[ラテン]

デジタル大辞泉 「胸郭」の意味・読み・例文・類語

きょう‐かく〔‐クワク〕【胸郭】

胸部外郭をつくるかご状の骨格胸椎きょうつい肋骨ろっこつおよび胸骨からなり、心臓・肺などの臓器を支え保護する。
[類語]胸部胸腔きょうこう胸板むないた胸間きょうかん胸元むなもと胸先むなさき胸倉むなぐらふところ胸壁バストチェスト

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精選版 日本国語大辞典 「胸郭」の意味・読み・例文・類語

きょう‐かく‥クヮク【胸郭】

  1. 〘 名詞 〙 胸椎(きょうつい)肋骨(ろっこつ)、胸骨がかご状に組み合わさって胸部の壁をつくっている骨格。内部胸腔(きょうこう)と呼ばれる腔所で、肺臓、心臓などをおさめる。前面は運動性に富む軟骨となっており、胸郭の運動や呼吸運動を助ける。
    1. [初出の実例]「びろびろと胸廓一杯に、気味悪く拡がって居る肺も」(出典:蘭学事始(1921)〈菊池寛〉五)

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改訂新版 世界大百科事典 「胸郭」の意味・わかりやすい解説

胸郭 (きょうかく)
chest
thorax[ラテン]

脊椎動物のうち爬虫類鳥類哺乳類において,胸部の背骨つまり胸椎,左右の肋骨,および胸部腹面中央部にある胸骨から成る籠状の骨格。その内部には心臓,肺,胃などがある。魚類では肋骨はあるが,腹方で開放した形をなし,また胸骨がないので胸郭は形成されない。両生類では肩帯に付属して胸骨があるが,肋骨が退縮していて胸骨に達しないのでやはり胸郭をつくらない。現存の爬虫類のうちヘビ類では,肩帯とともに胸骨もなく,またカメ類では胴の骨格全体が箱のようになっているが,スッポンに見られるように本来の肋骨は胸骨に連結しないので,これらの動物も胸郭をもたない。その他の爬虫類は胸郭を備えるが,胸骨の形態や構成は種類によりきわめて多様である。鳥類では肋骨は数対だけに限られる一方,胸骨は大胸筋の付着面として広大な外表面をもつ。また胸椎は前後に融合して棒状となり,屈曲性がない。哺乳類では胸骨は本来肋骨と肋骨の間に1個ずつ1列に発生するが,やがて前後に融合骨化して3個ぐらいになることが多い。肋骨は一般に背方と腹方の2部分からなり,爬虫類と哺乳類では背方の半分は骨化するが腹方の半分は軟骨(肋軟骨)のままとどまるのが普通である。哺乳類では後方のいくつかの肋骨は胸骨につながらず,遊離端で終わる。鳥類の肋骨は腹方の半分も骨化してすべて胸骨につながり,背方部と腹方部は関節で連結している。
執筆者:

12個の胸椎が後正中部の支柱をなし,これと関節をつくって側方から前方へ伸びだす12対の肋骨と,前正中部でそれをまとめる1個の胸骨で組み立てられている。胸郭は胸壁の支柱をなして,重要な胸部内臓を保護するとともに,呼吸運動にさいしてその内腔すなわち胸腔の容積を増減させて,肺への空気の出入りを可能にする。この胸郭容積の増減は肋骨のあいだに斜めの2方向に張る内外肋間筋の作用で行われる。外肋間筋が収縮すると,各肋骨がもちあがり,胸郭が拡大して肺がひろがり,息が吸いこまれる(吸気)。内肋間筋が収縮すると各肋骨が下がり,胸郭が縮小して息が吐き出される(呼気)。また胸郭の外から肋骨を引き上げて吸気運動を助ける筋肉(小胸筋,前鋸(ぜんきよ)筋)もある。それぞれの肋骨は対応する胸椎に2点で関節をつくっている。すなわち肋骨はその先端の肋骨頭と,そのやや外側にある肋骨結節というこぶの2点で胸椎と関節をなす。肋骨のこの両関節での小さい回旋運動が,前方では大きい上下運動(上述の呼吸運動)となるのである。肋骨は前のほうが軟骨になっているから,それによって胸郭は運動性が大きくなり,また外力が加わったときにも骨折を起こしにくくなっている。肋骨は普通上位7対のものが直接に胸骨と関節で結合し,それより下位のものは前方で合流しながら胸骨に達する。最下位の2~3対は短く,胸骨まで達しないで終わっている。

 胸郭の全景は釣鐘状で,その中に広い胸腔を抱く。胸腔は自然体では主として中央の心臓とその左右にある肺で満たされ,そのほかになお胸腺,気管と気管支,食道などの内臓器官,大動脈,肺静脈,上下大静脈,肺静脈,胸管などの大脈管,迷走神経と横隔神経が走る。胸郭の上の口は第1胸椎,第1肋骨および胸骨で囲まれ,自然体ではくびの部分の脈管,神経などがここを通って胸郭の中にはいる。各肋骨間のすきまを〈肋間隙(げき)〉といい,自然体では前述の肋間筋でふさがれている。胸郭の下口は第12胸椎,胸骨下端(剣状突起),その間に張る左右の肋骨弓からなり,横隔膜によって腹腔と境されている。

胸骨は胸の前面正中部にある一つの細長い扁平な骨で,皮膚を通して容易に触れることができ,しかもこの骨の骨髄は高齢まで造血活動を示すので,針をさして骨髄を採取し検査する骨髄穿刺(せんし)(胸骨穿刺)に用いられる。胸骨は上部の柄,中部の体,下端の剣状突起の3部からなる。剣状突起はみぞおちに当たるところにあって若いときは軟骨でできている。胸骨の両側には鎖骨と普通上位7対の肋骨が関節によって付着する。体と柄との間は60歳近くまでは軟骨結合のままとどまり,剣状突起も中年を過ぎてようやく完全に骨化する。胸骨の両側の胸郭の下縁を肋骨弓といい,左右の肋骨弓のなす角を肋骨弓角という。
骨格
執筆者:

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百科事典マイペディア 「胸郭」の意味・わかりやすい解説

胸郭【きょうかく】

爬虫(はちゅう)類・鳥類・哺乳(ほにゅう)類の類胸部の外郭をつくる弾性のある籠(かご)状の骨格。内部に心臓・肺,胃を含む。ヒトでは,胸椎12個,肋骨12対,胸骨1個からなり,関節で可動的につながっているので,肋骨の上げ下げがその容積の増大減少となり,いわゆる胸式呼吸運動となる。肋骨と肋骨の間は肋間隙(げき)といい,肋間筋でふさがれ,肋間動静脈,肋間神経が通る。胸郭の下口は横隔膜で腹腔と境される。
→関連項目胸骨肋骨

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胸郭」の意味・わかりやすい解説

胸郭
きょうかく

胸部の外郭を形成する部分で、胸椎骨(きょうついこつ)、肋骨(ろっこつ)、肋軟骨、胸骨からなり、上壁は胸膜に覆われ、下部は横隔膜によって腹部と隔てられている。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胸郭」の意味・わかりやすい解説

胸郭
きょうかく
thorax

胸部の外郭を形成する部分。 12対の肋骨,12個の胸椎,胸骨から成る。胸郭の内部には胸腔があり,ここに心臓とこれに出入りする大血管,肺,食道などが収められている。胸腔は胸膜におおわれ,腹腔とは横隔膜で境されている。胸腔内圧は陰圧で,呼吸とともに変動する。前胸壁には乳房が存在する。

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栄養・生化学辞典 「胸郭」の解説

胸郭

 肋骨で囲まれた首から横隔膜までの体の部分.

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世界大百科事典(旧版)内の胸郭の言及

【簞笥】より

…つまり一種のユニット家具といえよう。【小泉 和子】
【西洋の簞笥】
 西洋で簞笥に該当する語は,チェスト・オブ・ドロワーズchest of drawersとよぶ整理用のひきだしを備えた収納家具と,これらを二つ重ねにしたチェスト・オン・チェストchest on chestとよぶものである。 ヨーロッパ中世には貴重品や衣類などを収納する家具として,日本の長持に相当するチェストchestとよぶ長方形蓋付きの箱があった。…

【ひつ(櫃)】より

…長持も和櫃の一種であるが,近世以降は櫃というと葛籠(つづら)や行李(こうり)くらいの大きさの木製の物入れを指すようになった。【小泉 和子】
[西洋]
 西洋では物を収納する蓋付きの大型の箱を〈チェストchest〉とよび,収納家具の原初的な形態を示す。すでに古代エジプトやギリシアには表面を象嵌細工や塗料で装飾した芸術的にも質の高い作品がみられた。…

【胸】より

…動物の体に前後軸にそって形態の異なる部域が区別されるとき,頭部(前体部),頸部(けいぶ)に続く胴部(後体部)の前方域を一般に胸部という。
[動物の胸]
 無脊椎動物のうち外骨格に明りょうなくぎりができて典型的な体部域が区別できる昆虫類では,頭部と腹部の間の部域が胸部といわれ,脚や翅が付属し筋肉が発達している。甲殻類では,頭部に続き,一般に歩脚あるいは遊泳肢としてよく発達した付属肢をもつ体節が並んだ部域で,とくに十脚類では頭部と一体となって頭胸甲carapaceに覆われた頭胸部cephalothoraxを形成している。…

【胸】より

… 脊椎動物の胸は一般に心臓を中心とする領域である。胸はもともと人体において,脊柱・肋骨・胸骨の籠である胸郭で支えられた体幹の上半部(ただし背面の体壁を除く)のことで,その内部には心臓や肺などがあり,横隔膜により腹から隔てられる。これと類似の領域を他の動物にも認めて,一般に胸または胸部と呼ぶわけであるが,人体と同様に定義できる哺乳類以外の動物の胸は,ヒトのそれと同じものではない。…

※「胸郭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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