デジタル大辞泉
「脂肪肝」の意味・読み・例文・類語
しぼう‐かん〔シバウ‐〕【脂肪肝】
肝臓に大量の脂肪が沈着した状態。また、その肝臓。栄養過多・アルコール過剰摂取・肥満・糖尿病などが要因となって起こり、肝硬変へ移行することも多い。
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しぼう‐かんシバウ‥【脂肪肝】
- 〘 名詞 〙 肝臓の脂肪が著しく増加した状態。栄養過多、アルコール乱用、糖尿病、肥満などの際に生ずる。吐き気、倦怠感などの症状がみられる。
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脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)
どんな病気でしょうか?
●おもな症状と経過
この項では非アルコール性脂肪性肝疾患を中心に扱います。アルコールが原因の脂肪肝についてはアルコール性肝障害をご覧ください。
肝臓の細胞に異常な量の脂肪が沈着した状態を脂肪肝といいます。肝臓は正常であっても4~5パーセントの脂質(リン脂質)を含んでいますが、脂肪肝の状態では中性脂肪が多量に蓄積されています。自覚症状はあまりないため、健康診断などの血液検査で肝機能の異常を指摘され、そのために行った精密検査(超音波検査)で見つかることが少なくありません。高度な脂肪肝では腹部の張り、食欲不振、吐き気、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)、疲れやすいといった自覚症状もみられます。
アルコールや薬物が原因ではない脂肪肝を、非アルコール性脂肪性肝疾患(Non Alcoholic Fatty Liver Disease:NAFLD)と呼びます。NAFLDには①ほとんど病状が進行しない非アルコール性脂肪肝(Non Alcoholic Fatty Liver:NAFL)と②肝臓の破壊が進行し肝硬変、肝細胞がんを引きおこす非アルコール性脂肪性肝炎(Non Alcoholic Steatohepatitis:NASH)の2つの病態が含まれていることが明らかになってきました。NASHによる肝硬変から生じる肝細胞がんの割合は年間約2パーセント程度で、C型肝炎・肝硬変から発生するがんよりは低率でありますが、線維化などの病状が進んだ肝臓からはより高率にがんが発生するといわれています。
●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
NAFLDのおもな原因は、肥満、糖尿病などです。脂肪や糖質の多い食事をとりすぎたりしていると、肝臓での脂質代謝に異常をきたし、中性脂肪が必要以上につくられて肝臓に蓄積されます。メタボリックシンドロームとの関連も指摘されており、NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と呼ばれています。
NAFLDでは肝機能が低下し、AST(GOT)、ALT(GPT)、血糖値、中性脂肪などの検査値が上昇する場合があります。肝硬変・肝細胞がんに至るNASHの原因については炎症が病状の進展に関与しているとの説がありますが、明らかな原因は特定されていません。
よく行われている治療とケアをEBMでチェック
[治療とケア]食事療法を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 高エネルギーの偏った食生活がNAFLDの原因のひとつですので、エネルギー量を適正に制限し、栄養素の摂取比率としては脂質を制限する食事療法を行います。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(1)(2)
[治療とケア]全身運動による運動療法を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] ウオーキング(速歩き)、ランニング、水泳など、呼吸をしながら持続的に全身の筋肉を使うような運動(有酸素運動)が、脂肪を燃やすためには効果的です。また腕立て伏せ・ダンベル体操など筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけるレジスタンス運動も有効といわれています。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(3)(4)
[治療とケア]薬物療法を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] NAFLDは、食事療法や運動療法が中心となりますがそれらの生活改善ができない場合、また、NAFLDの原因として2型糖尿病の関与がある場合などに、ビタミンEやチアゾリジン誘導体といった薬を投与することがあります。これらの投与により肝障害を示す血液データや脂肪肝が改善したという非常に信頼性の高い臨床研究があります。脂質異常症も合併しているときは、薬で脂質異常症の治療を行うこともあります。(5)(6)
[治療とケア]原因となる病気があればその治療を行う
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 肥満が原因のNAFLDであれば肥満の解消をめざして減量し、糖尿病なら食事と運動で病気のコントロールを良好にすれば、NAFLDは改善する可能性が高くなります。これらのことは非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(2)(7)
よく使われている薬をEBMでチェック
糖尿病を合併していない場合
[薬用途]ビタミンE
[薬名]ユベラ(トコフェロール酢酸エステル)(5)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] トコフェロール酢酸エステルは非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。
糖尿病を合併している場合
[薬用途]チアゾリジン誘導体
[薬名]アクトス(ピオグリタゾン塩酸塩)(6)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] ピオグリタゾン塩酸塩は非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。
総合的に見て現在もっとも確かな治療法
食事療法、運動療法を組み合わせた減量が有効
NAFLDの原因にはさまざまなものがありますが、もっとも多いのは、肥満、糖尿病などによるものです。また、糖尿病はNAFLDの増悪・肝臓からの発がんに密接に関連することが知られており、その良好なコントロールはNAFLDの増悪抑制のためにも重要です。
したがって、肥満や糖尿病によるNAFLDの場合には、肥満や糖尿病に対する治療と同様に食事のエネルギーを制限し、脂肪分の摂取を減らして積極的に適度な運動を行うことで減量することが有効です。減量は急激な減量は避け、週0.5~1キログラム程度、当初の体重より5~10パーセント程度が目標です。
食事療法、運動療法などに取り組んで適正な体重に戻せば、最終的には肝臓の細胞に沈着した異常な脂肪が消失し、炎症も改善すると考えられています。ただし肝硬変まで進行した肝臓の場合には完全な回復につながるかは疑問です。
薬物療法も効果がある
病状に応じたビタミンEやチアゾリジン誘導体の投与も行われます。また、NAFLDは心血管疾患のリスクが高いことも知られており、高血圧や脂質異常症に対する治療も考慮する必要があります。
肝硬変に至ったNASHでは病状にあわせた検査、治療を行う
肝硬変に至った場合にはほかの肝疾患と同様、病状に応じた治療が必要となります。また、肝細胞がんを早期に発見するための定期的な血液検査や、腹部超音波・CTなどの画像検査が必要となります。(1)Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat,protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009;360:859-873.
(2)Promrat K, Kleiner DE, Niemeier HM, et al. Randomized controlled trial testing the effects of weight losson nonalcoholic steatohepatitis. Hepatology. 2010;51:121-129.
(3)Johnson NA, Sachinwalla T, Walton DW, et al. Aerobic exercise training reduces hepatic and viscerallipids in obese individuals without weight loss. Hepatology. 2009;50:1105-1112.
(4)Bacchi E, Negri C, Targher G, et al. Both resistance training and aerobic training reduce hepatic fat content in type 2 diabetic subjects with nonalcoholic fatty liver disease (the RAED2 RandomizedTrial).Hepatology. 2013;58:1287-1295.
(5)Sanyal AJ, Chalasani N, Kowdley KV, et al. Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis.N Engl J Med. 2010;362:675-1685
(6)Boettcher E, Csako G, Pucino F, et al. Meta-analysis: pioglitazone improves liver histology and fibrosis in patients with non-alcoholic steatohepatitis. Aliment PharmacolTher. 2012;35:66-75.
(7)Lazo M, Solga SF, Horska A,et.al. Effect of a 12-month intensive lifestyle intervention on hepatic steatosis inadults with type 2 diabetes.Diabetes Care. 2010;33:2156-2163.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
脂肪肝
しぼうかん
正常な肝組織中にはリン脂質、中性脂肪、コレステロールなどの脂質が含まれているが、脂肪肝は肝細胞中に中性脂肪が蓄積することにより肝の中性脂肪が異常に増加した状態である。成因によって、アルコール性、過栄養性、内分泌性(糖尿病やクッシング症候群)、薬物性(コルチコステロイド、テトラサイクリンなど)、妊娠性などがある。このほか、コレステロールやリン脂質脂肪肝のような特殊型脂肪肝もある。なお、アルコール過飲や栄養不適による脂肪肝は、脂肪性肝硬変の原因となる。
肝細胞の中性脂肪が増加する機序は、一般に末梢(まっしょう)脂肪組織の脂肪酸が動員されて肝に集まり、中性脂肪の生成が増えること、また中性脂肪の利用が不十分となり、さらにリポタンパクの合成不足によって、超低比重リポタンパク(VLDL)として肝外へ出ることが障害されることによる。
脂肪肝の自覚症状は軽度の全身倦怠(けんたい)感、疲労感を訴えることがあるが、まったくないこともあり、健康診断や偶然の機会に発見されることが多い。肥満、アルコール過飲、高カロリー輸液、糖尿病、ステロイドなどの薬物投与、妊娠後半期におけるテトラサイクリン投与歴などに注意する。なお、小児に脳症を伴う脂肪肝があり、ライReye症候群とよばれる。診断は肝機能検査、画像検査、肝生検を総合して行う。血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)の軽度上昇、コリンエステラーゼの高値などがあると、腹部エコーで肝にびまん性(病変あるいはその状態が、一か所ではなく広範囲に広がっているようす)の高い反射があり、CTスキャンではびまん性の低密度を認めることで診断が可能であるが、確認は肝生検による。過栄養性脂肪肝と慢性肝炎との鑑別診断は重要で、困難な場合もある。予後は妊娠脂肪肝、ライ症候群を除くとよい。
脂肪肝のなかに、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という病気がある。飲酒しない(1日1合以下)にもかかわらず、アルコール性肝炎と同じく肝細胞の変性(風船様の肝細胞膨化、マロリー小体)と炎症による好中球細胞浸潤と線維化などが肝臓に生じる。肝硬変に進行するとともに、肝細胞がんを併発することもある。原因は、メタボリック症候群(肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)や薬物(タモキシフェンなど)、低栄養状態による。診断は、脂肪肝があることを肝機能検査や腹部超音波検査、CTで知るとともに、最終的には肝生検による。治療は、食事療法と運動療法を含む生活習慣の改善や原因となる薬物の中止などによる。
[太田康幸・恩地森一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
脂肪肝
しぼうかん
Fatty liver
(肝臓・胆嚢・膵臓の病気)
肝臓はたくさんの肝細胞の集合体ですが、脂肪滴がたまった肝細胞が全体の1割を超えたら脂肪肝と呼ぶのが一般的です。慢性の脂肪肝は肥満や糖尿病、高脂血症などで起こりやすいのですが、従来これ自体は多くの場合無害と考えられてきました。
しかし、このような変化が一部の人では肝硬変への一里塚となっていることが最近明らかになってきました。このため、今日では、「脂肪肝は万病の元」、「脂肪肝を良性の疾患として見過ごしてはいけない」というのが世界の潮流です。
他方、急性に発症するものにはライ症候群や急性妊娠性脂肪肝がありますが、いろいろな原因により生じる全身のミトコンドリアの機能不全が原因といわれ、死亡率が高いのが特徴です。
脂肪肝は、原因により栄養性、内分泌性、代謝性、中毒性に分類されます。慢性の脂肪肝は、食欲不振症のように高度の飢餓状態や、ホルモンの異常、高度の肥満に際して生じます。急性の脂肪肝は、ライ症候群や急性妊娠性脂肪肝などの代謝異常や、アセチルサリチル酸やバルプロ酸などの薬の過剰な服薬で生じます。
全身のミトコンドリア機能不全で生じる脂肪肝では意識障害が生じることが多いのですが、慢性に生じる脂肪肝には通常、自覚症状はありません。
ライ症候群や急性妊娠性脂肪肝の診断は臨床所見に基づくことが多く、重い病気で死亡率が高いので、すみやかな治療が必要です。
処方箋を必要としない市販薬(OTC薬:オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ)でも、重症肝障害を来すことがあるので注意が必要です。
慢性の脂肪肝については、腹部超音波検査により肝腎コントラストの増強、深部エコーの減弱などを指標に肝臓の脂肪化を検査します。肝臓の脂肪化が見つかれば、腹部CT検査で肝臓のCT値と脾臓のCT値を測定して肝/脾比を計算し、それが0.9以下であれば脂肪肝と診断します。
単なる脂肪肝か非アルコール性脂肪肝炎(NASH)(コラム)かを知るためには、肝生検といって、肝臓の組織検査をする必要があります。
カロリーの制限と運動量の増加が大切です。予後は合併症の有無により大きく変わります。NASH、糖尿病、高脂血症、高血圧の合併がないかどうかを確認し、飲酒量もチェックしてみます。
病状の正しい評価が必要です。生活習慣病では合併症が多岐にわたることが多く、診療科を選ぶ場合に混乱が生じやすいので、家庭医に相談して合併症に応じた専門医を紹介してもらうことが大切です。
西原 利治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
しぼうかん【脂肪肝】
《どんな病気か?》
〈脂肪肝の3大原因は肥満、アルコール、糖尿病〉
脂肪肝(しぼうかん)は、肝細胞の内部に脂肪が異常に多く蓄積した状態をいい、肝臓の重量の5%を超えた場合、または、肝細胞の30%以上に脂肪が蓄積している場合に、脂肪肝と診断されます。
しかし、脂肪肝ではあまり自覚症状がありません。ひどくなったときに、食欲がなくなったり、疲労感を感じたりする程度です。そのため、健康診断での血液検査の際に、GOTやGPTの上昇がみられることから偶然発見されることが多いようです。脂肪肝は重大な疾患につながるようなことはありませんが、まれに肝硬変(かんこうへん)へ移行することがあります。また、肝機能を正常に保つためにも、蓄積した脂肪を取り除くことはたいせつです。
おもな原因には、肥満、アルコール、糖尿病(とうにょうびょう)があります。それぞれが原因となっていたり、または複合的に影響している場合もありますが、その原因を明らかにして、体重をコントロールしながら、肝細胞に蓄積した脂肪を取り除くようにします。
肥満が原因の場合、まずは減量が必要です。摂取カロリーの制限と運動によって、体重が減少すると、検査数値も改善され、蓄積した脂肪も減少していきます。
アルコールが原因の場合には、禁酒が大前提になります。禁酒によって脂肪の合成が減少し、逆に蓄積した脂肪が分解され、改善されていきます。
糖尿病が原因の場合には、糖尿病の食事療法に従います(「糖尿病」参照)。
《関連する食品》
〈摂取カロリーを制限しつつ、たんぱく質を補給する〉
原因はいずれにしても、食生活で気をつけなければいけないことは、摂取カロリーの制限です。摂取カロリーの目安は、標準体重1kgあたり、20~25kcal。以下を参考に、標準体重を計算し、そのうえで摂取カロリーを計算してください。また、著しい肥満の場合には、標準体重1kgあたり20kcalが目安です。
〈適正エネルギーの簡易算出法〉
適正エネルギー量(kcal)=生活活動強度指数×標準体重(kg)
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
*生活活動強度とは、Iが散歩、買い物程度のゆっくりした歩行1時間以内。IIが通勤、立位の業務などを2時間以内。IIIはIIの生活をしている人が1日1時間程度の速歩、サイクリングなどを行っているか、農作業、漁業などの運動強度の高い業務を1時間程度行っている場合。IVはそれ以上となります。
*また、生活活動強度指数については以下を参照してください。[年齢/I(低い)/ II(やや低い)/ III(適度)/ IV(高い)]の形で示しています。
・18~29歳/男31 女31/男36 女35/男41 女40/男46 女45
・30~49歳/男29 女28/男33 女33/男38 女37/男42 女41
・50~69歳/男28 女27/男32 女31/男37 女35/男41 女39
・70歳~/男28 女27/男32 女31/男37 女35/男41 女39
○栄養成分としての働きから
そのうえで、重要となる栄養素がたんぱく質です。たんぱく質は、肝細胞の再生と、脂肪を肝臓から放出するのをうながします。とくに良質なたんぱく質が好ましく、とうふやダイズ、たまごや鶏のささみなどで摂取しましょう。
また、肝臓での基礎代謝を促進するには、ビタミンやミネラルが必要です。ビタミンはトマトやレタス、ピーマンから、ミネラルはシイタケやワカメ、コンブなどの海藻類から摂取できますが、ビタミン・ミネラルの各種類を多くの食品から摂取すると、より効果的です。
脂質や糖質の吸収を抑える作用がある食物繊維の摂取も欠かせません。
シイタケやエノキタケなどのキノコ類やこんにゃくなどは、食物繊維を豊富に含むほか、摂取カロリーの制限にも役立ちます。
出典 小学館食の医学館について 情報
しぼうかん【脂肪肝 Fatty Liver】
[どんな病気か]
肝臓に、中性脂肪(ちゅうせいしぼう)(トリグリセリド)が蓄積した状態です。
[原因]
アルコール過飲、肥満(栄養過多)、糖尿病が、脂肪肝の三大原因です。
まれに薬剤性脂肪肝(やくざいせいしぼうかん)や、女性の場合は急性妊娠性脂肪肝(きゅうせいにんしんせいしぼうかん)(妊娠後期におこり重症化することがある)のことがありますし、子どもの場合は、ライ症候群(しょうこうぐん)(コラム「ライ症候群」)が原因のことがあります。
[検査と診断]
急性妊娠性脂肪肝とライ症候群以外は、脂肪肝とわかる症状がないのがふつうです。
健康診断などの検査で偶然、発見されることがほとんどです。
血液中のChE(コリンエステラーゼ)、TC(総コレステロール)の値が上昇します。また、アルコール性脂肪肝ではGOTが、それ以外の脂肪肝はGPTが上昇します。しかし、血液検査だけでは、脂肪肝と診断することはできず、腹部の超音波検査やCTの検査と照らし合わせて診断します。
確定診断には、皮膚の上から針を刺し、肝臓の組織を微量採取してきて調べる肝生検(かんせいけん)が必要です。
[治療]
原因に対する対策を講じることがたいせつです。これで、たいていの脂肪肝は解消し、健全な肝臓にもどります。
肥満、糖尿病、栄養過多が原因であれば、減量を行ないます。
アルコールが原因であれば、禁酒を厳守し、薬剤が原因の場合は、薬剤の使用を中止します。
出典 小学館家庭医学館について 情報
脂肪肝 (しぼうかん)
fatty liver
肝臓における脂肪の代謝障害により,個々の肝細胞内に脂肪,おもに中性脂肪が異常に蓄積する状態。肝臓の生検を行って染色標本を顕微鏡で観察すると,細胞内に沈着した脂肪が空胞状にぬけて見える(肝細胞脂肪変性)。通常,観察しうる細胞の50%以上にこのような変性をみとめるものを脂肪肝と呼ぶが,ひどい場合には,ほとんど全細胞に及ぶ。原因としては,肥満(栄養過多),糖尿病,飲酒過剰(これをアルコール性脂肪肝という),薬物毒性などがあるが,一方,高度の栄養障害(タンパク質欠乏,吸収不良)によっても生じる。すなわち,脂肪摂取過剰,肝細胞内での脂肪酸の産生亢進,脂肪酸酸化障害,リポタンパク質の産生,分泌の障害などが脂肪肝の発生に関連している。症状は慢性肝炎様であり,高度のものでは,まれに黄疸が出ることもある。多くは,栄養状態の改善,原疾患の治療,原因除去(禁酒,薬物の中止)により改善するが,長く続くと,肝臓の血流障害,肝細胞の壊死,繊維化を招き,肝硬変へと進行することもある。
執筆者:松崎 松平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
脂肪肝【しぼうかん】
脂肪の沈着と腫大を示す肝臓をいう。肥満,糖尿病,アルコールの多飲,ステロイドホルモン投与時などのほか,栄養障害,甲状腺機能亢進症などが原因となる。肝臓は腫大しているが機能は比較的障害されていないことが多く,原因除去により予後良好。肝臓穿刺(せんし)で診断を確定することができる。
→関連項目アルコール性肝障害|強肝剤|高脂血症
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
脂肪肝
しぼうかん
fatty liver
肝臓内に中性脂肪が異常に多量沈着する状態をいう。肝細胞の半数以上に脂肪空胞が認められると脂肪肝といい,肝機能低下状態で脂肪の多い食事をとり,蛋白質を少ししか食べないことなどが原因とされる。肥満,アルコールのとり過ぎ,糖尿病,薬の中毒なども原因になる。原因を取除けば,多くは比較的短期間で正常に戻る。慢性肝炎との鑑別が大切。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
脂肪肝
肝臓の細胞内に中性脂肪が過剰に蓄積した状態のこと。栄養過多、糖尿病、お酒の飲み過ぎ、薬物使用などが原因となります。肥満者のほぼ半数に脂肪肝がみられます。食事や運動による肥満改善や禁酒によって改善が可能です。
出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報
脂肪肝
肝細胞に中性脂肪の脂肪滴がたまった状態。原因はアルコール・脂質・糖質の過剰摂取、ホルモン異常、妊娠、栄養不良状態など。生活習慣病につながるため、対策は重要。
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の脂肪肝の言及
【肝炎】より
…十分な栄養とは,一般的に35~40kcal/kg,タンパク質80~100g,脂肪40~60g,および高ビタミンをいう。過度の高カロリーは,かえって[脂肪肝]を引き起こす。急性肝炎の治療に各種の薬剤が使用されるが,その根拠は,多くは慢性肝炎に対する二重盲検法による有効性にもとづいている。…
※「脂肪肝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」