腎（読み）ジン

デジタル大辞泉

じん【腎】［漢字項目］

［常用漢字］　［音］ジン（呉）
１ 五臓の一。腎臓。「腎盂じんう・腎炎・腎虚／副腎」
２ 大切な所。かなめ。「肝腎」

むら‐と【^▽腎】

腎臓じんぞうの古称。〈和名抄〉

じん【腎】

腎臓のこと。「萎縮腎」

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

じん【腎】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 腎臓(じんぞう)のこと。〔色葉字類抄（1177‐81）〕
   1. [初出の実例]「経曰、一水不_レ勝_二二火_一、一水(いっすい)者(は)腎(ジン)也」(出典：浮世草子・武道伝来記（1687）五)
   2. [その他の文献]〔黄帝内経素問‐六節蔵象論〕
3. ② 「じんすい（腎水）」の略。
   1. [初出の実例]「学者虚して曰すくないかな腎」(出典：雑俳・川傍柳（1780‐83）三)

むら‐と【腎】

1. 〘 名詞 〙 ( 院政期より「むらど」 )
2. ① 腎臓の古称。〔新訳華厳経音義私記（794）〕
3. ② 転じて、心。心中。考え。
   1. [初出の実例]「言問はぬ木すら紫陽花諸弟等が練の村戸(むらと)にあざむかれけり」(出典：万葉集（８Ｃ後）四・七七三)

腎の補助注記

②の「万葉集」の例は、「占戸(うらへ・うらと)」とする説もあるが、「うらへ」とする説は「へ」と、原文「戸」が上代特殊仮名遣上違例になるので誤り。

出典　精選版 日本国語大辞典

普及版 字通

腎
常用漢字 12画

[字音] ジン
[字訓] じんぞう

[説文解字]
[その他]

[字形] 形声
声符は〔説文〕^四下に(けん)声とするが、腎は堅・賢(けん)と声異なり、臣(しん)と同声である。〔説文〕に「水の（臓）なり」とあり、五行説によって五臓を説く。腎は精の存するところ。腎子は睾丸、腎水は精液、その精の尽きることを腎虚という。肝と腎とは、人の活動力の源泉であるから、合わせて肝腎という。

[訓義]
1. じんぞう、むらと。
2. かたい。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕腎　牟良登（むらと）〔和名抄〕腎　无良度（むらと）〔名義抄〕腎　ムラド　〔立〕腎　ムラト・ユハリフクロ

[語系]
腎・臣zjinは同声。〔説文〕の声十六字のうち、ひとり腎のみ声が異なり、臣声の字のようである。

[熟語]
腎気▶・腎虚▶・腎候▶・腎子▶・腎水▶・腎腸▶・腎▶
[下接語]
肝腎・心腎・腸腎・内腎

出典　平凡社「普及版 字通」

世界大百科事典（旧版）内の腎の言及

【腎虚】より

…漢方の病名。漢方医学では〈腎〉は精液(腎水)をつくる臓器とされ，精液が枯渇するとなると考えられ，とくに房事過多がその原因とされた。いわば過淫による強度の衰弱症である。…

【唾液】より

…また肝臓でタンパク質が分解して生じた尿素は血液中から唾液腺に吸収されて分泌され，共生微生物のタンパク質合成に利用される。【佃 弘子】
［文化史］
　中国では古来，唾液と腎とは精気に関連するとみた。《黄帝内経素問（こうていだいけいそもん）》遺篇刺法論に，慢性腎疾患の際は寅の刻(午前4時ころ)南面して座し，雑念を去って7回静かに呼吸しつつ顎を引いて息を飲みこめば，舌下に唾液が多量に出てこれを嚥下することにより腎疾患が治る，とある。…

※「腎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」