乳頭腫とともに良性の上皮性腫瘍(しゅよう)の群に属する腫瘍で、胃、腸管、乳腺、卵巣、甲状腺などにしばしば発生する。肉眼的には臓器などの内部に発生する結節状のもの、および粘膜の表面に発生するポリープ状のものがある。組織学的には腺管構造の形によって管状腺腫、腺房状腺腫、濾胞(ろほう)状腺腫に分類され、腺管内の分泌物の性状によって漿液(しょうえき)性腺腫、膠質(こうしつ)性腺腫、偽粘液性腺腫などに区別するのが常である。また、分泌物の貯留が高度で腺管が拡大した状態のものを嚢胞(のうほう)腺腫、腫瘍細胞が腺腔(せんくう)内に向かって乳頭状に増殖しているものを乳頭状腺腫とよぶ。さらに乳腺に発生する腺腫では、基質である結合織の増殖も著明であることが多く、とくに線維腺腫とよばれるが、これはさらに、結合織が腺管を取り巻いて増殖する型(管周囲性線維腺腫)と、腺管の腔内に向かって結合織が増殖する型(管内性線維腺腫)とに分けられる。
[渡辺 裕]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…皮膚や食道など扁平上皮領域からは扁平上皮癌が,消化管の円柱上皮や腺上皮からは腺癌が,膀胱の移行上皮からは移行上皮癌が生じる。対応する良性腫瘍は,乳頭腫(扁平上皮腫というべきところであるが乳頭腫が慣用されている)や腺腫である。肉腫のほうも,筋肉腫,骨肉腫,血管肉腫,脂肪肉腫等々と分類する。…
…したがって,組織像が明確となった時点でそれぞれの名称で呼ばれる。良性非上皮性腫瘍は一般に粘膜下腫瘍といい,良性上皮性腫瘍は腺腫と呼ばれる。ポリープはこの腺腫であることが多いので,ポリープの別称のように使われたことがあった。…
※「腺腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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