自由港(読み)ジユウコウ(英語表記)free port

翻訳|free port

デジタル大辞泉 「自由港」の意味・読み・例文・類語

じゆう‐こう〔ジイウカウ〕【自由港】

中継貿易加工貿易の発展を図るため、全域または一定区域に限り、自国の関税法を適用しないで外国貨物の自由な出入を認める港。香港ホンコンシンガポールハンブルクなど。自由貿易港フリーポート

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精選版 日本国語大辞典 「自由港」の意味・読み・例文・類語

じゆう‐こうジイウカウ【自由港】

  1. 〘 名詞 〙 一定の区域を限り、その区域内に出入する貨物に対し関税を課することなく、外国貨物および船舶が自由に出入することのできる港湾。自由港区自由港市、自由地区の三つに分けられ、中継貿易や加工貿易を促進するために指定される。自由貿易港。
    1. [初出の実例]「露国は遂にダルニーを以て一の自由港となすの止むを得ざるに至れり」(出典:報知新聞‐明治三六年(1903)三月一七日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由港」の意味・わかりやすい解説

自由港
じゆうこう
free port

輸入品に関税を賦課して保護貿易政策をとっている国が、保護政策を保持しつつ、中継貿易や加工貿易の発展を図る目的で、貿易港の全域あるいは一部の地域に限って、自国の関税法を適用しないで輸入貨物の自由な出入を認める制度である。この区域では、輸入貨物の積込み、陸揚げ、保管、荷分け、あるいは加工製造が行われ、海運、倉庫、保険などの商港業務の発展も図られている。自由港の制度は、中世のイタリアの自由都市に由来するといわれるが、現在ではその指定地域や業務の範囲によって自由港市、自由港区、自由地区の三つに分けられる。自由港市は本来の自由港であり、港市全体が関税区域外とされ、外国貨物の輸出入およびそれらの加工のみならず市民の居住も認められている。しかし、自由港市は脱税密貿易の危険、あるいは港内の市民と港外の市民との利害対立などがおこるため、現在ではほとんどみられない。ただシンガポール、香港(ホンコン)がこれに近い形態を残している。自由港区は自由港市の欠点を除き、範囲がより狭くなったものである。貿易港のうちとくに開放地域の全部あるいは一部を関税区域外とし、そこでの貨物の輸出入、保管、加工は自由になされるが、居住は認められていない。加工貿易や中継貿易の促進を目的としている。自由地区の場合はさらに範囲が狭くなり、加工も認められず、貨物の積み卸しと倉庫保管が認められるだけで、いわばおもに中継貿易の発展のみを目的としたものである。なお最近では、中継貿易や加工貿易の振興のためには、この自由港制度にかえて、より弾力的な保税地域制度が利用されることが多い。たとえば、台湾の高雄(たかお/カオシュン)や韓国の馬山(ばさん/マサン)、マレーシアペナンなどでは、外国資本を誘致して輸出の増大と外貨獲得、技術導入、雇用機会の増大などを目的に、輸出加工区を設けた。わが国でも類似の制度として、輸入を促進するために、1992年以降輸入品を関税や消費税を支払わずに展示、加工できる総合保税地域を設けている。

[秋山憲治]

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改訂新版 世界大百科事典 「自由港」の意味・わかりやすい解説

自由港 (じゆうこう)
free port

外国貿易には税関審査,関税支払等の複雑な税関手続が必要であるが,港湾の一部または全部をそのような手続から解放し,中継貿易ないし加工貿易の促進をはかるのが自由港である。港湾設備の利用率を高め,中継貿易の発展に資するために設けられる港湾内の自由地域free port zoneでは,外国貨物の搬入,再輸出が認められている。例としてはアメリカのニューヨーク,ニューオーリンズサンフランシスコなどがある。また外国貨物の加工・製造をも認めるのが自由港区free port quarterであり,コペンハーゲンロッテルダムグダンスク,シンガポール,香港などがある。

 自由港の歴史をさかのぼると,古代カルタゴ,ローマ帝国に求められるが,近代の原型は16,17世紀イタリアの主要港,リボルノベネチア,ナポリ,ジェノバなどである。これらの港のあった都市は外国人の居住も自由に認めたので自由港市free port cityとも呼ばれる。のちに,中・北欧の発展に伴って自由港市はハンブルク,ブレーメン,ダンチヒ(グダンスク)などにも広がった。自由港市は密輸の取締りが難しく,現在では存在せず,香港,シンガポールがそれに近い形で残っているだけである。

 最近では自由港制度と似た保税倉庫・保税工場の制度によって,中継・加工貿易の促進に資するケースが増えてきている(〈保税制度〉の項参照)。これらの制度は港湾から離れた地域での2年間までの貨物の蔵置,あるいは加工等を認めるので,自由港よりも弾力的な制度である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自由港」の意味・わかりやすい解説

自由港
じゆうこう
free port

一般に中継貿易や加工貿易の発達を促すため,外国貨物に関税を賦課せず自由に出入りをさせることを認めた商港。機能によって,自由港市──港市全域にわたって外国貨物の保管,加工製造,居住の自由をもつもの (ホンコン,シンガポールなど) ,自由港区──港の一部に限定して居住以外の自由を認めたもの (ハンブルクなど) ,自由地区──自由港区の機能から加工製造の自由を除いたもの (トリエステなど) に分類される。自由港の地区内は関税取扱い上外国同様とみなされ,国内の他の地区との間の出入については課税の対象となる。なお,日本においては沖縄振興開発特別措置法による自由貿易地域 (フリーゾーン) の制度があり,その地域は関税法上の指定保税地域とみなされ,地域内においては関税は課されない。

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百科事典マイペディア 「自由港」の意味・わかりやすい解説

自由港【じゆうこう】

中継貿易,加工貿易の促進のため,港の全部または一部に限り,関税を課さずに外国貨物を出入・改装・荷分け・加工・製造することを認める商港。指定範囲の広狭,許容条件の差異から自由港市,自由港区,自由地域などの種類がある。現在ではドイツの免税地域,香港などがその例。
→関連項目港湾自由貿易地域

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