翻訳|aircraft
人が乗って空を飛ぶことのできる乗物の総称。ただし宇宙船,宇宙ロケットのように宇宙空間を飛ぶものは含めない。空気より軽い軽航空機lighter-than-aircraftと空気より重い重航空機heavier-than-aircraftとに分けられる。前者は空気より軽いヘリウムや水素のガスを袋に詰めたり,あるいは袋の中の空気をバーナーなどで熱して周囲の空気より軽くすることにより,機体全体の比重を空気の比重より軽くし,浮力を利用して浮くもので,航行のための動力の有無によって飛行船と気球に分けられる。原理的には簡単で,18世紀の終りには気球による人類初の飛行が行われている。しかし,ガス容積1m3当りで発生できる浮揚力は1kgf程度であり,重量の割りに極端に大型の機体になる。例えば重さ約230tの硬式飛行船ツェッペリンLZ129ヒンデンブルク号は,20万m3のガス容積を必要とし,船体の全長が245m,直径が41.2mという巨大なものであった。しかし,これに乗り組める乗員,乗客は100人ほどであり,また時速も大きな空気抵抗を受けるため130km/hにとどまった。重航空機は,翼が空気中をある速さで進むときに,翼に生ずる動的空気力(揚力)によって機体の重量を支えるもので,飛行機やグライダーのように機体に固定された翼を用いる固定翼機と,ヘリコプターやオートジャイロのように軸のまわりを回転する回転翼を用いる回転翼航空機に大別される。翼に生ずる揚力は速度の2乗に比例するので,速度が速くなれば,機体の比重が空気の比重よりはるかに大きくなっても飛ぶことができる。例えば現用のボーイング747は,重さが約350tであるが,これを全長71m,翼幅60mにまとめて,飛行速度は飛行船の約7倍の900km/h,乗客約400人を乗せて飛行することができ,その翼は1m2当り700kgfに近い揚力を出している。
原理的には困難な点が多かったため,登場は軽航空機よりはるかに遅れ,19世紀の終りにようやくグライダーによる滑空試験が始まった。このグライダーにプロペラとそれを駆動する12馬力のエンジンを取り付け,ライト兄弟が人類最初の飛行機による飛行に成功したのは,1903年12月17日,このときの機体の速度はたかだか40km/hであった。その後飛行機は搭載エンジンの出力向上とともに多葉機から主翼が1枚の単葉機が主流となり,どんどん高速化,大型化を続けた。第1次世界大戦以後は軽航空機にとって代わるまでになり,さらに第2次大戦でジェット機がうまれてからは,速度は音速を突破した。
回転翼航空機の中では,まずジャイロプレーンが1920年代に登場し,第2次大戦後はヘリコプターが目覚ましい勢いで軍用・民間用ともに発展しつつある。飛行場をほとんど使うことなく発着できる垂直離着陸特性と空中に停止できるホバリング特性が買われて,飛行機とは違った利用分野が開拓されている。
ヘリコプターのこのような飛行特性と,飛行機の高速で遠距離を飛ぶことのできる特性とを合わせたハイブリッド航空機が考えられるのは当然で,低速飛行における浮揚のための回転翼を高速飛行では軸を水平に倒してプロペラとして使い,重量は高速飛行では翼の揚力に頼るという転換機も登場している。このほか,回転翼を利用しないで垂直離着陸特性を与えた垂直離着陸機には,離着陸時にジェットエンジンを立てた状態にして上向きの推力を作り出すもの,エンジンは水平のままであるが,排出ノズルの弁を作動して噴出ガスを下方に向けて同じ効果を出すものなどがある。またプロペラ後流やジェットエンジンの噴出ガスを主翼のフラップなどを利用して下方に曲げ,離着陸の際の滑走距離を短くした短距離離着陸機も実用化されている。
→航空
執筆者:東 昭
航空機は,国際慣習法上,国家または私人の管理に属することにより,公または私の航空機に分類される。1944年の国際民間航空条約(シカゴ条約)では,用途を基準として,軍・税関・警察業務に用いるものを国の航空機といい,他の航空機を民間航空機とする。航空機は,公海・無主地上の飛行の自由を有し,登録国の支配に服する。航空機が外国領空に許可なく侵入する場合には,領空侵犯を構成し,撃墜を含めて下土国の自由な決定にゆだねられる。軍用航空機が許可を得て外国領域にあるときは,軍艦と同様の特権(不可侵権,治外法権)を有する。軍用以外の国の航空機には,軍艦以外の公船の地位が類推されるといわれている。民間航空機の外国領域における飛行の権利は,不定期飛行についてシカゴ条約により認められ(ただし実際上制限されることが多い),定期国際航空業務については2国間航空運送協定で規定されることが多い。民間航空機は,外国領域において,その国の航空規則などの法令に従わなければならない。外国領空の民間航空機内での犯罪につき,1963年の〈航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約〉(東京条約)により登録国の裁判権が認められ,その後ハイジャックや航空機の安全に対する不法な行為に関するハーグ条約(1970採択)やモントリオール条約(1971採択)が成立した。
執筆者:西井 正弘
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人が乗って空中を航行する機器の総称。航行するといっても、大気の動きに従って航行するものや、凧(たこ)や係留気球のように地上につながれたものも、人が乗っていれば航空機となる。しかし、高速の空気を地表面または水面に吹き付け、その反動を利用してわずかに浮き上がる乗り物(地面効果機、ホバークラフト)あるいは宇宙ロケット(宇宙船)などは航空機には含めない。航空機は空気より軽いか重いかで軽航空機、重航空機に大きく分類できる。さらに、動力のあるなし、自由に航行するか地表面と結ばれているか、動力の種類、飛行の方法などで細かく分類される。
[落合一夫]
…地表から離れるにしたがい,空気の密度が減るので,生ずる空気力がそれに比例して弱くなる。したがって,現代の航空機が水平飛行を続けられる実用高度はだいたい0~20kmの範囲である。これまでの水平飛行における高度の最高記録は25.9km(1976),母機から進発したロケット機の到達高度としては95.9km(1962)の記録がある。…
…航空機は空を飛ぶために極力軽く作る努力が払われる。重ければ,空へ飛び上がれないだけでなく,たとえ飛び上がっても性能は悪くなり,経済性も悪くなってしまうからである。…
…こうした航路によって,全国的な貢租米輸送のしくみが形づくられ,大坂,江戸がその中心となった。 20世紀は,鉄道や汽船に加えて,自動車と航空機がめざましく登場する時代である。1885年,ドイツのベンツとダイムラー,イギリスのE.バトラーによって,内燃機関を動力とするガソリン自動車がほとんど同時に造られた。…
※「航空機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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