荷重(読み)カジュウ(その他表記)load

翻訳|load

デジタル大辞泉 「荷重」の意味・読み・例文・類語

か‐じゅう〔‐ヂユウ〕【荷重】

貨物自動車などの荷の重さ。
機械や構造物の全体または部分に加わる力。また、構造物が耐えうる重さ。ロード
[類語]重さ重量

に‐おも【荷重】

[名・形動]
荷物が重いこと。また、そのさま。「荷重な車」
責任負担が重すぎること。また、そのさま。「新人には荷重仕事だ」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「荷重」の意味・読み・例文・類語

か‐じゅう‥ヂュウ【荷重】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. トラックなど貨物自動車の荷の重さ。
    2. 構造物の一部または全体にかかる外力や重さ。比喩的に、事物にかかる重圧。〔工学字彙(1886)〕
      1. [初出の実例]「雑踏と熱気に軟化した舗装道路は、自らの上にかかる荷重に呻きもだえ」(出典:われら戦友たち(1973)〈柴田翔〉一)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 負担などが重すぎるさま。
    1. [初出の実例]「荷重な税金を取立てられて」(出典:人間嫌ひ(1949)〈正宗白鳥〉)

に‐おも【荷重】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. 荷物が重いこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「右三種不残進上仕度奉存候へども、扇子は道中荷重にて不便也」(出典:殿村篠斎宛馬琴書簡‐天保七年(1836)八月六日)
  3. 責任が重すぎること。負担が重すぎること。また、そのさま。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「荷重」の意味・わかりやすい解説

荷重
かじゅう
load

物体外部から加えられる力のこと。工学の一分野である材料力学構造力学においておもに使用される術語である。荷重に加わる速度によって静荷重動荷重に大別される。いずれの場合も物体のある範囲にわたって比較的広く分布して加わっている荷重を分布荷重といい、ほとんど1点とみなされるように狭い範囲に集中して加わっている荷重を集中荷重という。また静止している物体に他の物体が落下して急に止まったときとか、動いている二つの物体が衝突したときのように瞬間的に加わる荷重を衝撃荷重という。

 細長い棒の軸線方向に力が加わってその棒を引き伸ばしたり縮めたりする荷重を引張り荷重、圧縮荷重という。また棒の軸線あるいは板の面に垂直方向に力が加わり軸や板に曲げ作用あるいはずり切るような剪断(せんだん)作用を与えるものを横荷重という。棒や板を曲げたりねじったりするように加わる一種の偶力のことを曲げ荷重、ねじり荷重とよんでいる。以上の荷重が同時に二つ以上加わったときには複合荷重という。

[中山秀太郎]

静荷重

物体の上におもりをのせたときに加わる重力作用のように、静止していてまったく動かない荷重を死荷重という。しかし、材料試験機で棒の両端をつかみ、引っ張ってその材料の機械的性質を調べるときのように、きわめてゆっくり変化する荷重は、その材料に与える作用は死荷重の場合と同じであるから、この両者を含めて静荷重とよんでいる。このほか、材料の圧縮試験、曲げ試験、ねじり試験などを行う場合にも、ゆっくり変化する荷重すなわち静荷重を与えてその材料の性質を調べる。

[中山秀太郎]

動荷重

荷重が動きながら加わるものを動荷重と総称する。動荷重の種類は多く、いろいろの名がつけられている。たとえば橋梁(きょうりょう)を構成する各部材には自重による死荷重が加わっているが、人間あるいは自動車などが橋の上を渡るときには、それらによる静荷重が橋の上を移動しながら加わるので、これを移動荷重という。クランク軸や電車の車輪を支えている車軸などは回転中ほとんど同じ大きさの荷重を連続的に受けている。これを繰返し荷重という。一方向のみの荷重が繰り返し加わるものを片振(かたぶり)荷重、引張り圧縮が繰り返し加わるものを両振(りょうぶり)荷重という。連続的に不規則な荷重が加わるときは変動荷重という。

[中山秀太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「荷重」の意味・わかりやすい解説

荷重 (かじゅう)
load

主として工学の分野で用いられる概念で,一般には物体に作用する外力のことをいう。外力には自重も含まれる。物体に荷重が加わると物体には応力が生ずる。この意味で応力を発生させる原因となるものを荷重ということもある。熱応力の原因となる温度分布を熱荷重と呼ぶなどがその例である。

 荷重を作用のしかたによって分類する場合,時間的に変化しない荷重を静荷重あるいは死荷重といい,これに対して時間的に変化して作用するものを動荷重あるいは活荷重と呼ぶ。たとえば橋を例にとると,その上をなにも通らないとすれば自重による静荷重が作用していることになるが,自動車などが通過することを考えれば作用しているのは動荷重である。さらに動荷重は,繰り返し作用する繰返荷重,大きさだけでなく方向も変わる交番荷重,急激に作用する衝撃荷重に分けられる。また荷重が物体の表面あるいは体積に広がりをもって分布作用しているとき分布荷重といい,1点に作用しているとみなせるとき集中荷重という。構造物においては荷重の作用方向によって分類することがあり,構造物の軸方向に作用する荷重を軸荷重,横方向に作用する荷重を横荷重という。このほか,荷重の作用によって生ずる材料や構造物の変形により,引張荷重,圧縮荷重,曲げ荷重,ねじり荷重,せん断荷重と呼ぶこともある。なお,負荷を荷重と同義に用いる場合もある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「荷重」の意味・わかりやすい解説

荷重
かじゅう
load

物体に外部から加える力を工学では荷重と呼ぶ。時間の経過とともに荷重の大きさ,方向,位置などが変化しない静荷重または死荷重と,これらが変化して作用する動荷重,周期的に作用する繰返し荷重に大別される。材料試験における負荷のように,わずかずつ荷重を増加させる場合は,通常,静荷重として取扱う。また圧力や自重のように広く分布して作用する場合を分布荷重,ほとんど一点に集中している場合を集中荷重という。また物体に与える作用により軸荷重,横荷重,曲げ荷重,ねじり荷重などと呼ぶ。またそれらの荷重が同時に組合さって働く場合を組合せ荷重 (複合荷重) という。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「荷重」の意味・わかりやすい解説

荷重【かじゅう】

物体に作用する外力をいう工学上の用語。構造物自体の重量による死荷重,構造物に固着しない活荷重,時間的に変化する動荷重などある。さらに一点に集中するか諸点にある広がりをもって分布しているかで集中荷重,分布荷重に区別する。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の荷重の言及

【負荷】より

…工学用語。例えば扇風機を考えると,これはモーター(電動機)で羽根を回して風を起こすものであるが,モーターには羽根の回転に伴って発生する抵抗力が作用している。このように,機械においては,駆動する側(上の例ではモーター)に対して,抵抗を及ぼす駆動される側(回転中の羽根)を負荷という。駆動される側が及ぼす力や消費するエネルギーの大きさを指すこともあり,扇風機の場合は,回転数が高くなるとともに負荷も増大する。…

※「荷重」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android