子嚢(しのう)菌の一種であるスクレロチニア・スクレロチオルムSclerotinia sclerotiorumの寄生によっておこる作物の病気。この菌は32科160種以上の植物を侵し、ネズミの糞(ふん)に似た特徴のある菌核を形成するところから、この病気は菌核病とよばれる。菌核とは菌糸が密に絡み合って堅くなり、高温や乾燥などの悪条件に耐え、生存できるようになった菌の一形態である。本病は豆類、ウリ類、ナス類などで被害が大きい。露地栽培の作物では、地際(じぎわ)の部分や枝の分岐点などに、初め水浸状の変色部ができ、のちに淡褐色になり茎全体が侵されて立ち枯れになる。雨のあとや湿度の高いとき病斑(びょうはん)の部分に白色綿毛状の菌糸を生じ、のちに菌核をつくる。温室やハウス栽培の野菜類では、葉、茎、果実などあらゆる部分が侵され、腐敗や立ち枯れをおこし被害が大きい。気温10~15℃のときによく発生する。防除は、ハウス栽培では温度が下がらないよう、また湿度が高くならないよう管理するとともに、イプロジオン剤(「ロブラール」)、チオファネートメチル剤(「トップジンM」)、プロシミドン剤(「スミレックス」)などの薬剤を散布する。なお果樹類の病気で、この菌の近縁の菌によっておこる灰星(はいぼし)病も菌核病とよばれることがあり、また白絹(しらきぬ)病など菌核をつくる病気を菌核病と総称することもある。
[梶原敏宏]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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