葛飾(水原秋桜子の句集)(読み)かつしか

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

葛飾(水原秋桜子の句集)
かつしか

水原秋桜子(しゅうおうし)の第一句集。1930年(昭和5)4月馬酔木(あしび)発行所刊。全539句を「大和(やまと)の春」「山城(やましろ)の春」などと小題別に配列してある。「蟇(ひき)ないて唐招提寺(とうしょうだいじ)春いづこ」「梨(なし)咲くと葛飾の野はとのぐもり」「高嶺星(たかねぼし)蚕飼(こがい)の村は寝しづまり」などの秀作を集め、流麗にして叙情性豊かな名句集であり、好評であった。「序」で秋桜子は、自分は「自然を尊びつゝも尚(な)ほ自己の心に愛着を持つ態度」の作者であり、調べをたいせつにすると述べている。これは当時客観写生を主唱していた師高浜虚子(きょし)を念頭に置いての主張と考えられ、翌年の秋桜子の『ホトトギス離脱伏線となり、独立した『馬酔木』の基本態度となった。

平井照敏

『『葛飾』(1975・東京美術)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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