薬袋紙(読み)ヤクタイシ

デジタル大辞泉 「薬袋紙」の意味・読み・例文・類語

やくたい‐し【薬袋紙】

主に、薬を入れる包み紙の材料とされた紙。ガンピ、または、ガンピとコウゾを混ぜたもので漉かれ、キハダで染められる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「薬袋紙」の意味・読み・例文・類語

やくたい‐し【薬袋紙】

〘名〙 主として配置売薬の包紙やその包みを納める大袋に用いた紙。土佐高知県)産のものは、茶褐色で、本焦げとも称し、上等品は大名方の敷ぶすまに用いられた。摂津兵庫県)名塩産のものもあったが、黄褐色で質が劣っていた。〔随筆・秋斎随筆(1750頃)〕
※開化自慢(1874)〈山口又市郎〉初「次なるは花本志庵といふ医者、薬袋紙(ヤクタイシ)のやうな黄八丈の古小袖」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「薬袋紙」の意味・わかりやすい解説

薬袋紙
やくたいし

かつての生薬(しょうやく)を入れた袋の材料とした和紙。この名は室町時代以降一般化したようで、1603年(慶長8)刊の『日葡(にっぽ)辞書』にも採録されている。薬袋紙には緻密(ちみつ)な紙質が要求されるため、ガンピ(雁皮)、あるいはこれとコウゾ(楮)を混合した繊維で漉(す)かれ、キハダ(黄蘗)で染められる。土佐国(高知県)産の赤褐色のものが「本こげ」の名で最高級品とされ、摂津国(兵庫県)名塩(なじお)産の黄褐色のものがこれに次いだ。また、そのじょうぶさと雅趣が好まれて、書物表紙敷物に用いられることもあった。

[町田誠之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android