知恵蔵2010の解説
行政という言葉は一義的に定義されていない。立法、司法、行政の三権分立に基づいて、立法府、司法府の活動を除いた行政府の活動を行政とする定義もある。政治と行政の分化を前提として、政治つまり公選職によって任命された人々(公務員)の活動を行政ということもある。あるいはまた、組織の管理活動を行政と定義する場合もある。第1の定義によれば、行政の機能は法律の執行となるが、しかし、行政は政令、省令などの準立法機能を有し、また準司法的機能も持っている。したがって、三者の関係は明確に境界の引けるものではない。第2の定義についても、公選職の活動と任命職の活動の分離は、それほど明確ではない。この場合、任命職は政治的意思の決定にかかわっていないことが前提とされているが、実際の行政執行は、個々の任命職職員の意思決定の積み上げである。第3の定義は大規模組織一般にみられるが、政治権力との関係を視野に入れたものではない。行政という活動が行政府の活動に深く根差していることは事実だが、もう少し広く、統治過程における職業的行政官によって組織された階統制組織(官僚制組織)の活動として、理解しておくべきだろう。この活動が法律を順守すべきことは当然であるが、行政は単なる法律の執行ではなく、法律をも含めた政策の立案と執行活動に及んでいる。同時に、この活動は組織の目的達成のための管理活動を含むものである。したがって、こうした活動は立法府にも司法府にもみられるのである。国会、裁判所の事務機構は、それぞれ政策の立案と執行、組織の管理を行っている。行政が、行政府における行政官の活動として理解されがちであるのは、現代国家において行政機能が高度に発展し、それ抜きに大規模社会が成立し得ないためである。
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新藤宗幸千葉大学法経学部教授
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出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2007」
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