窒素,リン,カリウムの肥料3要素のうち2成分以上を含有する肥料を総称していう。これに対し1成分のみを含む肥料は単味肥料(単肥)というが,近年は複合肥料の方が需要が多い。全肥料消費量のうち,複合肥料の形で消費される割合を複肥率といい,窒素肥料,リン酸肥料,カリ肥料それぞれの日本での複肥率は1961年には44%,62%,48%であったが,83年にはそれぞれが80%,78%,80%と増加しており,複合肥料の需要が増大していることがわかる。複合肥料には第1種複合肥料(2成分以上の肥料要素を含有し,成分の合計量が15%以上のもの),第2種複合肥料(2成分以上の肥料に泥炭などを加え造粒成形した肥料),第3種複合肥料(2成分以上を含む水溶液を泥炭,ベントナイト,ケイ藻土,沸石などに吸着させた肥料),液状複合肥料(2成分以上を含む液状の肥料),被覆複合肥料(樹脂などで粒状複合肥料の表面を被覆加工した肥料)および発酵廃液乾燥複合肥料がある。生産量,種類からみて最も多いのは第1種複合肥料で,83年には518万tが生産されており,これは他の複合肥料の合計生産量の約20万tを凌駕(りようが)している。
いわゆる化成肥料や配合肥料はいずれも第1種複合肥料であり,含有される成分の合計量によって高度複合肥料(成分合計量30%以上のもの)と低度複合肥料(30%以下のもの)に分けられる。複合肥料は複数の成分を使用目的や肥効増進の要望に応じて適当に混合したり,不必要な副成分を少なくしている。また吸湿固結などしない処理をしたり,粒状に成形したり,被覆して溶解性を制御している。このように使用上,運搬・貯蔵・取扱い上の便宜をはかって各種各様の特徴ある複合肥料が製造されて農家に受け入れられ,日本の複肥率を高めている。
執筆者:茅野 充男
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肥料の三要素である窒素、リン酸、カリ(カリウム)のうち2成分以上を含有する肥料のことで、配合肥料と化成肥料がこれに含まれる。1956年(昭和31)の肥料取締法の一部改正により新たに制定された肥料の名称である。ただし、主成分の窒素、リン酸、カリが動植物質に由来するものは有機質肥料といい、複合肥料とは区別される。複合肥料には肥料の三要素のほか微量要素のマグネシウム、マンガン、ホウ素を含有しているものもある。農家で実際に消費されるのは、ほとんどが複合肥料である。複合肥料には、化成肥料、成形複合肥料、吸着複合肥料、被覆複合肥料、液状複合肥料、配合肥料、家庭園芸用複合肥料などの種類がある。また、野菜、花、果樹などそれぞれ作物の種類、地域、気候、土壌の種類、施肥法などによってさまざまにくふうされた複合肥料の銘柄がある。
[小山雄生]
『長谷川和久著『複合肥料に関する研究と応用』(1988・養賢堂)』▽『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本で最初の合成硫安工場は23年に建設された日本窒素肥料の延岡工場である。
[種類]
化学肥料は含有する成分から,窒素肥料,リン酸肥料,カリ肥料,複合肥料に大別される。長年の間その種類は硫酸アンモニア(硫安),石灰窒素,過リン酸石灰およびカリ塩類に限られていたが,1948年より尿素,49年より重過リン酸石灰,50年より硝安,塩安,溶成リン肥の生産が開始されて現在に至っている。…
※「複合肥料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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