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中国,元代の戯曲。作者は王実甫。元の雑劇としては破格の,5編分より成る長編作,21幕(折)。唐の元稹(げんしん)《会真記(鶯鶯伝)》にもとづく金代の語り物《董西廂》を歌劇に改編したもので,山西省隅の名刹を舞台に展開される,旅の書生と亡き宰相の令嬢の波乱にみちた恋愛をつづる。作者は語り物が設定した封建礼教に対する自由結婚の抗争というテーマに添いつつ,登場人物たちの性格を的確に強調し,礼教の権化たる宰相未亡人と人間性を代弁する小間使いを両極に配しつつ,その間に恋の当事者を介在させ,彼ら相異なる四つの性格の対比が生む多様な波乱を,雅俗語を巧みに使い分ける洗練された筆致で描く。とくに,それ自身の礼教性をなかなかにぬぐいえぬヒロインの心理の推移や,恋のアドバイザーとしての小間使いのはつらつたる言動が印象的である。南戯盛行の明・清期にも出版が重ねられ,インテリ子女の血を沸かせた元曲の傑作として知られる。
執筆者:田中 謙二
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元代の長編戯曲。作者は王実甫(おうじっぽ)。唐の元稹(げんしん)の『会真記』に取材し,金代の語り物『董西廂』(とうせいしょう)を歌劇に改編,張君瑞(ちょうくんずい)と崔鶯鶯(さいおうおう)との恋愛を描く。登場人物の性格と心理を的確に描写したことで定評があり,明清代にも版が重ねられた。元代社会史の史料としても有用。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…幼時から俊才ぶりを現し,しかも好んで反俗・反常識の見解を発揮した。その本領を最も奔放に示したのは,《荘子》《楚辞》《史記》《杜詩》《水滸伝》《西廂記》を古今第一等の〈奇文〉として〈六才子書〉と名づけ,それぞれに警抜な批評を加えたことであった。特に《水滸伝》のような通俗小説や《西廂記》のような戯曲を一級の文学として評価したのは,唐順之や李贄(りし)が端緒を発した見識をさらに推し進めて,新しい価値観を定立したものであった。…
…特にその組曲形式と四声を通押するそれまでにない押韻法は,元代の雑劇や散曲,すなわち元曲と共通しており,元曲を生みだす有力な母胎となったと考えられる。ただし明代以降は急速にすたれ,現存する作品も少なく,完全に残っているのは,金の章宗の時の人といわれる董解元の作《西廂記諸宮調》,別名《董解元西廂記》(略して《董西廂》)だけである。この作品は唐の元稹の伝奇小説《鶯鶯伝(おうおうでん)》を題材としており,元の王実甫の雑劇《西廂記》に大きな影響をあたえた。…
…戯曲作家として傑出したのは関漢卿(かんかんけい)と王実甫の2人で,ともに14世紀初めに死んだ。関漢卿は多数の作品を公にし,舞台の経験のあった人と思われ,王実甫の名は《西廂記(せいしようき)》によって不朽である。これは元曲中の最長編であり唐代の恋愛物語の演劇化であった。…
※「西廂記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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