日本大百科全書(ニッポニカ) 「視神経萎縮」の意味・わかりやすい解説
視神経萎縮
ししんけいいしゅく
視神経線維が種々の原因によって軸索の変性と機能消失をきたし、視神経乳頭が蒼白(そうはく)となり、視力が減退し、視野欠損がみられる目の疾患である。検眼鏡で眼底を拡大して見ると、健康な視神経乳頭は境界が鮮明で、橙赤(とうせき)色を呈した円板状である。これは髄鞘(ずいしょう)を構成するミエリンの色と、視神経眼内部の豊富な動脈や毛細血管の血液の鮮紅色が加わったもので、血流停止や視神経後方で腫瘍(しゅよう)などによる圧迫のため下行性萎縮をきたすと、蒼白萎縮に陥る。また炎症をおこすと、浮腫、血管の充満、神経膠(こう)細胞の増殖、炎性細胞などのために汚く混濁して境界が不鮮明になり、乳頭は灰白赤色を呈したあと炎性萎縮に陥り、橙黄色に退色萎縮する。このような萎縮に陥ると機能回復はむずかしいが、早期に冒された部位を診断して原因治療を行う。視力および視野の精密検査、X線検査、CT検査、血液凝固などの性状検索がたいせつである。なお、単性萎縮には下垂体腺腫(せんしゅ)などの圧迫でおこるものもあり、遺伝的に家族性におこるものもある。さらに眼内疾患である網膜炎のあとの萎縮は、上行性あるいは網膜性萎縮という。また眼圧が上昇して緑内障になると、乳頭は陥凹してまったく蒼白となり萎縮する。
[井街 譲]