角化症(読み)かくかしょう(英語表記)keratosis

翻訳|keratosis

精選版 日本国語大辞典 「角化症」の意味・読み・例文・類語

かくか‐しょう カククヮシャウ【角化症】

〘名〙 皮膚表面角層が異常に厚く堅くなる疾患。代表的なものとして、たこ、さめはだ、乾癬(かんせん)などがある。原因は、遺伝や代謝障害などがあるが、不明のものもある。

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デジタル大辞泉 「角化症」の意味・読み・例文・類語

かくか‐しょう〔カククワシヤウ〕【角化症】

皮膚の表面の角質層が異常に厚く堅くなる疾患。うおのめたこなど。

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改訂新版 世界大百科事典 「角化症」の意味・わかりやすい解説

角化症 (かくかしょう)
keratosis

表皮角質層の著しい肥厚を主症状とする皮膚疾患群。このうち発赤を伴い炎症症状の顕著なものは炎症性角化症と呼ばれる。

魚鱗癬(ぎよりんせん)(さめ肌)を代表とし,多くは遺伝性を示すが,その発症機序は大部分不明で,現在国際的に統一された分類はない。おもな疾患として次のものがある。(1)尋常性魚鱗癬 生後間もなくから皮膚が乾燥し,ざらざらになり,魚鱗状を呈するもの。優性遺伝と伴性劣性遺伝の2型がある。(2)魚鱗癬様紅皮症 生下時すでにみられる全身の発赤と角質の増加が主症状である。先天性魚鱗癬,薄葉状魚鱗癬は本症とほぼ同症とされる。劣性遺伝。(3)水疱型魚鱗癬様紅皮症 前者と同様の症状のほか,水疱の形成が特徴である。優性遺伝。(4)魚鱗癬症候群 皮膚変化がいくつかの症候群の部分現象としてみられるもの。(5)紅斑角化症 発赤を伴う角質増加がおもに四肢末端から始まる疾患群。(6)掌蹠(しようせき)角化症 もっぱら手のひら,足の裏に角質の増加が現れるもの。(7)ダリエ病 角化性丘疹で,夏季増悪し悪臭を放つのが特徴。優性遺伝。(8)汗孔角化症 辺縁隆起した角質増加性環状皮疹が特徴。優性遺伝。(9)黒色表皮腫 腋窩(えきか)等,おもに皮膚のすれる部分が黒くなり,表面乳頭腫を示すもの。優性遺伝のほか,内臓の悪性腫瘍に伴うものがある。(10)毛孔性苔癬 おもに思春期の女子の上腕・大腿伸側に生ずる毛囊一致性角化性丘疹。

 炎症性角化症のおもなものとしては次のものがある。(1)尋常性乾癬 円形ないし楕円形の紅斑に,厚い雲母状鱗屑(りんせつ)が固着し,銀白色を呈するのが特徴。(2)類乾癬 乾癬に似た皮疹で,粃糠ひこう)様鱗屑を付着する。後に菌状息肉腫症に発展するものがある。(3)扁平紅色苔癬 表面光沢のある扁平な紫紅色丘疹が特徴。(4)毛孔性紅色粃糠疹 頭部,手,指背,肘頭,膝蓋等に,粃糠様鱗屑をもつ毛囊一致性角化性丘疹が多発融合し,ときに紅皮症化する。優性遺伝型で,暗順応障害のあるものがある。(5)ジベル薔薇色粃糠症 辺縁環状に鱗屑をもつ爪甲大程度の紅斑が,おもに体幹に多発する。軽度のかゆみがある。紅斑の長軸が皮膚割線方向に一致するのが特徴。青壮年に好発。4~6週間で消退。季節の変り目に多い。

角化症の多くは難治で,根本的治療法の見当たらないものがほとんどである。ただ内服療法としてレチノイドは著しい症状の改善をもたらす。外用剤としてサリチル酸ワセリン,尿素軟膏等が用いられている。
乾癬 →苔癬
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家庭医学館 「角化症」の解説

かくかしょう【角化症】

 皮膚のいちばん外側は角質(かくしつ)という硬い層でおおわれています。これが異常に厚くなった状態を角化症(角皮症(かくひしょう))と呼びます。
 正常な皮膚の角質は肉眼ではっきり見えるものではありませんが、厚くなるとかさついた鱗屑(りんせつ)(ふけや日焼けしたあとにむけてくる薄皮を連想してください)としてみられます。粉をふいたような鱗屑を粃糠疹(ひこうしん)(米ぬかの意)と呼びます。角質がさらに厚くなると、亀裂(きれつ)ができ、魚のウロコのように見えます。これが魚鱗癬(ぎょりんせん)です。
 特殊な例ですが、ぶつぶつとこけが生えたように硬くなるものもあります(苔癬(たいせん))。
 手のひらや足の裏はもともと角質が厚いのですが、このような場所にできる角化症は踵(かかと)の皮膚より硬くなります。これが胼胝腫(べんちしゅ)(たこ(「たこ(胼胝腫)」))です。
 湿疹(しっしん)、みずむし、いぼなどの皮膚病でも角質は厚くなります。それぞれアレルギー、かび、ウイルスが原因ですが、これらは角化症とは呼ばれません。

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百科事典マイペディア 「角化症」の意味・わかりやすい解説

角化症【かくかしょう】

皮膚の角質層の過剰形成をきたすもの。角質増殖症とも。先天性角化症と後天性角化症に大別される。前者は遺伝的な素因によって発生するもので,各種魚鱗癬(ぎょりんせん),先天性掌蹠(しょうせき)角化症,ダリエー病などがある。後者にはたこ魚の目などがこれに属する。
→関連項目さめ(鮫)肌鱗屑癬

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「角化症」の意味・わかりやすい解説

角化症
かくかしょう
keratosis; keratodermia

角皮症ともいう。表皮組織を構成する細胞のうち,最上層を構成する角質層の肥厚,増殖,形成異常に基づく疾患の総称。このうち乾癬などのように強い炎症を伴うものを炎症性角化症という。角化症は限局性と汎発性 (全身性) に大別され,さらに原因により非遺伝性角化症,遺伝性角化症,毛包 (毛嚢) 性角化症,黒色表皮腫などに分類される。

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栄養・生化学辞典 「角化症」の解説

角化症

 →過角化

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世界大百科事典(旧版)内の角化症の言及

【皮膚】より

… (1)遺伝性疾患 生下時より病気の発症が運命づけられているもので,診断はできても治療は困難である。皮膚のあざや奇形,いわゆる母斑と全身異常を合併する母斑症,皮膚が魚のうろこ状を呈する魚鱗癬(ぎよりんせん)群を代表とする角化症,核酸,タンパク質,脂質,糖質代謝経路に関与する酵素の異常,欠損が証明されている種々の代謝異常症など。(2)伝染性疾患 いわゆる感染症で,ウイルス,リケッチア,クラミディア,細菌,真菌,原虫,寄生虫などによる皮膚病。…

※「角化症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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