解放(読み)かいほう

精選版 日本国語大辞典 「解放」の意味・読み・例文・類語

かい‐ほう ‥ハウ【解放】

[1] 〘名〙
① からだや心の束縛や制限などを除いて、自由にすること。開放。
※東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉初「娼妓を解放して妓楼を廃し、其の名号を改めて、貸座舗と称す」 〔魏志‐趙儼伝〕
② 組織された人員を解いてばらばらにすること。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉四「奸賊会津中将等が〈略〉頓に攘夷御親征の御幸を解放(カイハウ)なせる条倶(とも)に天を戴くに忍びざるの仇敵なり」
③ 権力を打倒して人民が自由になること。政治革命。特に、中国で、中国共産党による革命をいう。
※招かれて見た中共(1956)〈橘善守〉百年河清を待たず「この全総傘下の組織労働者は、解放後の累増にもかかわらず、まだ千二百四十五万」
[2] 総合雑誌。第一次創刊は大正八年(一九一九)で、大鐙閣から発行。大正デモクラシー思潮を背景に社会主義的傾向を示す。同一二年終刊。全五二冊。プロレタリア文学の舞台となる。昭和八年(一九三三)頃終刊。

とき‐はな・つ【解放】

〘他タ五(四)〙
延喜式(927)祝詞「舳解放(ときはなち)・艫解放(ときはなち)て」
※義血侠血(1894)〈泉鏡花〉五「渠(かれ)は手早く一頭の馬を解放(トキハナ)ちて」
※春の城(1952)〈阿川弘之〉四「自分何物からも解き放たれる日の近づいている」

とき‐はな・す【解放】

〘他サ五(四)〙
① つながっているものや結ばれているものを、解いてはなればなれにする。ときはなつ。
都会憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉「互に解き放し難いほど複雑にもつれ合ってゐるものである」
② 束縛を解いて自由にする。ときはなつ。〔羅葡日辞書(1595)〕
面影(1969)〈芝木好子〉四「凍った自分を解き放そうとしてくるのである」

とき‐さ・く【解放】

〘他カ下二〙 解きはなつ。解きやる。ときほどく。ときあく。
※書紀(720)允恭八年二月・歌謡「ささらがた 錦の紐を 等気舎気(トキサケ)て 数(あまた)は寝ずに 唯一夜のみ」

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デジタル大辞泉 「解放」の意味・読み・例文・類語

かい‐ほう〔‐ハウ〕【解放】

[名](スル)束縛そくばくされたり、制限されたりしているものを、ときはなして自由にすること。「貧困から解放される」「解放感」
[補説]書名別項。→解放
[類語]放す放つ解き放す放れる

かいほう【解放】[書名]

総合雑誌。大正8年(1919)創刊。大正デモクラシーの流れにのって、社会主義的傾向を示した。大正12年(1923)終刊。1年後に再刊されたが、昭和8年(1933)ころ廃刊。

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改訂新版 世界大百科事典 「解放」の意味・わかりやすい解説

解放 (かいほう)

大正・昭和期の雑誌。

(1)第1次 吉野作造福田徳三らの黎明会同人を中心として,デモクラシー思想の普及のために1919年(大正8)6月大鐙閣から発行された総合雑誌。創刊号の定価38銭。20年6月号から麻生久,山名義鶴らが結成した解放社によって編集された。創刊号に〈宣言〉をかかげるなど,他の総合雑誌とは性格を異にし,労働問題,社会問題がとくに重視され,社会主義思想の影響を強く受けた。黎明会,新人会の会員が執筆したほか,荒畑寒村,堺利彦山川均山川菊栄などの社会主義者も毎号のように登場している。文芸欄には小川未明,宮地嘉六,金子洋文らが執筆,しだいに労働者作家,社会主義的作家の寄稿が増加したが,関東大震災のため23年9月終刊した。

(2)第2次 25年山崎今朝弥(けさや)の経営に移り,日本フェビアン協会の《社会主義研究》を7月号より《解放》と改題,10月号から総合雑誌化された。定価は50銭。第1次よりもはるかに社会主義の色彩が強く,山内房吉,青野季吉らによってプロレタリア文学の発表の場となった。27年5月から一時期江口渙,小川未明らの日本無産派文芸連盟の機関誌となり,その後山崎の自由奔放な編集で体裁を変えながら33年ころまで刊行された。

(3)第3次 34年10月には渡辺潜を編集発行人として清談社から再び発行された。この《解放》は第2次の巻号を継承しているが,従来のものとは異なり総合雑誌の形をとらず,社会大衆党系の政論雑誌の性格をもっている。執筆者には,主宰者の麻生久のほか,田所輝明,菊川忠雄ら同党系の論者が多い。36年(17巻2号)まで確認されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「解放」の意味・わかりやすい解説

解放
かいほう

第一次世界大戦直後のデモクラシー思潮を背景として創刊された総合雑誌の一つ。1919年(大正8)5月、大鐙閣(だいとうかく)から創刊。23年9月に終刊。総合雑誌として『改造』や『中央公論』よりも社会主義的で、吉野作造(さくぞう)や黎明(れいめい)会の福田徳三、東大新人会の赤松克麿(かつまろ)を中心として、佐野学(まなぶ)、堺利彦(さかいとしひこ)、石川三四郎らが登場。マルクス主義者とアナキストの呉越同舟である。創作欄は、小川未明(みめい)、宇野浩二、宮地嘉六(みやちかろく)らの初期プロレタリア文学系の創作・評論が主流。24年5月に再刊された第二次『解放』は、山崎今朝弥(けさや)、石川らによって編集されたが、第一次よりも急進的で、プロレタリア文学の舞台となり、葉山嘉樹(よしき)や平林たい子らが活躍した。第二次の廃刊時期は不明だが、32~33年(昭和7~8)ごろとされる。

[松浦総三]

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普及版 字通 「解放」の読み・字形・画数・意味

【解放】かいほう(はう)

ときはなつ。〔三国志、魏、趙儼伝〕儼に之れを囚へ、乃ち府に表して解放せしむ。是れより威恩竝(なら)びはる。

字通「解」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「解放」の解説

解放
かいほう

吉野作造・大山郁夫・赤松克麿(かつまろ)・佐野学ら進歩的知識人や社会運動家を編集顧問・協力者として,1919年(大正8)6月大鐙閣より創刊された総合雑誌。山川均(ひとし)・山川菊栄・荒畑寒村・石川三四郎らも労働運動・普通選挙・婦人参政権獲得運動・水平運動などに大正デモクラシー運動を指導する論陣を張った。関東大震災で休刊。25年10月復刊,プロレタリア文学の拠点となり,34年(昭和9)10月社会大衆党系の政論雑誌となる。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「解放」の解説

解放

あるプログラムが確保していたメモリー領域を他のプログラムでも使えるようにすること。

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