一般的禁止(不作為義務)を特定の場合に解除し、適法に特定の行為をなすことを許すことをいう。公共の福祉に反する個人の行動を規制する行政の監督手法の一つで、個人が行動に出る前に、その行為が許されるかどうかを事前にチェックするシステムである。行政法学上の観念で、実定法上の用語例とは関係がないので、法律の規定上、認可・免許とよばれるものも、学問上では許可になることがあり、逆に実定法上、許可という用語が用いられていても、学問上は特許や認可とされることがある。許可制度の置かれる法領域や目的により、警察許可、規制許可、財政許可などに分けられる。飲食店の営業許可、公衆浴場業の許可、旅館業の許可、自動車運転免許、風俗営業の許可、薬の製造承認、酒屋の販売免許、農地転用の許可、バス・タクシーなどの免許、住宅団地などの開発許可などがその例である。建築確認は建築計画が法令に適合することを確認する行為で、いわゆる確認行為の一種であるが、建築の一般的禁止を事前に解除する許可的な性質も有する。
許可は、行政上の見地から公共の福祉に反しないことを確認して不作為義務を解除するにとどまるもので、許可権者の私法上の権利の有無とは関係がない。たとえば、甲・乙間で所有権の帰属が争われている旅館の建物について、甲・乙がともに旅館業の許可を出願した場合、甲・乙が欠格事由に該当せず、当該旅館が公衆衛生上の基準に合致する限り、両者とも許可が与えられる。現実に営業できるかどうかは甲・乙間の民事訴訟により決せられる。また、自分の建物について他人が営業許可を得ても、その取消訴訟を提起する利益は認められない。したがって、所有権に基づき明け渡しなどを求めるべきである。
許可を要する行為を許可を得ないでしたときは、処罰されるとともに行政強制の対象となることがあるが、その行為の私法上の効力には関係がない。たとえば、道路運送法による免許を受けない、いわゆる白タク(白ナンバーの無免許タクシー)の経営者は同法違反により処罰の対象となるが、その乗客は料金支払義務を免れない。建築確認を得ないで建築基準法違反の建物を建てると、処罰の対象となるほか、行政代執行により取り壊されることがありうるが、その所有権は否定されない。
許可と混同しやすい概念として、特許、認可がある。特許は相手方に権利・権利能力・包括的な法律的地位を設定する点で、権利を与えない許可と区別され、認可は法律行為に効力を与える行為である点で、私法上の効力を左右しない許可と区別される。
[阿部泰隆]
行政法学上の概念。人の行動を規制するための行政上の手法の一つとして〈許可制〉がある。これは,ある種の行動をひとまず一般的に禁止したうえで,個々人についてこの禁止を解除するかどうかを行政庁に決定させるというしくみである。〈許可〉とは,この場合に,行政庁が一般的禁止を個別に解除する行為を指し,許可制を定める目的に応じて警察許可(例,自動車運転免許),財政許可(例,関税法による輸入許可)等々に分類される。法令上は〈許可〉以外にも〈免許〉〈承認〉等,種々の名称が用いられる。許可を与えられた者が法令または許可条件(付款)に違反した場合には,許可の取消し(行政法学にいう〈撤回〉),停止もありうる。許可を要するにもかかわらず無許可で,または許可の取消し,停止を無視してなされた行動については,罰則による制裁が定められているのが普通である。なお,許可とは逆に,一般的な作為・給付または受忍の義務を個別に解除する行為は〈免除〉と呼ばれる。許可および免除は,それが公権力の行使たる性質をもつかぎりで,いずれも行政法学にいう〈行政行為〉にあたる。
→行政行為 →許可営業 →認可 →免許
執筆者:小早川 光郎
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…行政行為による下命,禁止の例として,道路交通法に基づく違法駐車車両の移動命令,道路標識による通行禁止等がある。(2)〈許可〉および〈免除〉 法令または行政行為によって課せられた一定の不作為義務(禁止)を特定の場合について解除することを許可といい,通行を禁止されている道路における特定車両の通行許可等がその例である。逆に,いったん成立した納税義務を免除するというように,作為,給付または受忍の義務を特定の場合について解除することを免除という。…
…一般的には,君主ないし国家が特定人に特別の法的地位を承認することを,特許と呼ぶことができる。
【行政法上の特許】
行政法学上の理論にみる概念としての特許は,人の自然の自由に属さない能力を特定人に対して賦与することを内容とする行政庁の行為,と定義され,法人の設立許可,外国人の帰化の許可,公企業経営権の特許,公物占用権の特許などを含む。ドイツ語ではVerleihung,フランス語ではconcessionという。…
※「許可」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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