詞書(読み)コトバガキ

デジタル大辞泉 「詞書」の意味・読み・例文・類語

ことば‐がき【詞書(き)/言葉書(き)】

和歌や俳句の前書きとして、その作品の動機・主題・成立事情などを記したもの。万葉集のように、漢文で書かれたものは題詞だいしという。
絵巻物の絵に添えられた説明文
絵本などで、画中の人物の会話文

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百科事典マイペディア 「詞書」の意味・わかりやすい解説

詞書【ことばがき】

絵巻の中の文章の部分。《鳥獣戯画》のように詞書のないものもあるが,普通の絵巻は絵と詞書からなり,絵は詞書の造形的(さし絵的)説明の役をし,詞書もまた絵の補足をし,二つは密接な関係をもつ。《源氏物語絵巻》では下絵を描き,砂子,野毛をまき,切箔(きりはく)を散らした華麗な料紙に書かれており,詞書の装飾美にも特色がある。
→関連項目石山寺縁起絵巻北野天神縁起絵巻弘法大師行状絵巻

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「詞書」の意味・わかりやすい解説

詞書
ことばがき

歌学用語。「題詞(だいし)」とも、単に「詞(ことば)」ともいう。主として歌集で、歌の前に置かれ、歌の題や歌を詠んだ事情などを述べたもの。『万葉集』は漢文で記してあるが、『古今和歌集以後はほとんど和文である。短詩形のために表現不足となりやすく、詞書を借りることが効果的な場合があるのである。比較的短いのが普通だが、『後撰(ごせん)和歌集』や『伊勢(いせ)集』で長い詞書をもつものもあり、これらは物語的であるといわれる。また、歌集で、歌の成立事情や異伝などが歌のあとに書かれていて、詞書と補い合って歌の理解に資するものもあり、これを「左注」という。なお、物語類の和歌の前後の文は、「地の文」とよんで詞書と区別している。

[新井栄蔵]

 絵巻などで、絵の前後にある、絵の内容について説明した文章、あるいは画中に登場人物のことばを書いたものも詞書という。絵だけを鑑賞するのでは、その時間的経過や事柄推移の理解は不十分なので、もともと詞書はそれを補助する役割のものであった。詞書を朗読しながら絵を楽しむ一方、詞書の書の美しさも鑑賞の対象であり、執筆には能書が選ばれるのが常であった。また、その料紙も、絵の部分にふさわしく技巧を凝らした美しいものが用いられている。

[尾下多美子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「詞書」の意味・わかりやすい解説

詞書
ことばがき

絵巻の物語の筋,内容を説明した文章。絵の前段に書かれるのが一般的形式であるが,特殊な例として一部分を絵の中に注釈,会話として書込んだものがある。かな交り文が大部分であるが,『絵因果経』『華厳五十五所絵巻』『十二類因縁絵巻』などのように,経文,あるいは経文の一部,漢文体のものもある。

詞書
ことばがき

和歌の前につけ,作歌の時,所,事情などを簡単に説明する文章。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「詞書」の解説

詞書
ことばがき

題詞・詞とも。和歌の前におかれ,詠作事情や歌題などを散文で記したもの。和歌はそれ自体で完結した内容をもつべきだが,詠歌の場や雰囲気を補うことで,より深い理解・鑑賞を可能にする性格をもつ。歌集の種類や性質によって,長短,繁簡の違いなど多様性がある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の詞書の言及

【絵巻】より

…絵巻物とも呼ぶ。この名称は江戸時代に一般化したもので,古代・中世においては〈……絵〉と称され,また今日では絵巻と同義語のように用いられている〈絵詞〉は本来,絵巻の詞書(ことばがき)を指すものであった。この巻物形式の絵画は中国から伝わり(中国では画巻と呼ぶ),日本で独自の発展をとげ,日本絵画史の代表的な領域を形成した。…

※「詞書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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