( 1 )東北方言では、普通名詞として、湿地帯を意味する。関東地方の「やと」「やつ」は、現在では「たに」と同義か。しかし、「や」は「四谷」「渋谷」など、固有名詞を構成する形態素としては存在するが、普通名詞としては使われない。
( 2 )アイヌ語に沼または泥を意味するヤチという語があるところから、地名に多く見られる「やち」「やと」「やつ」「や」がアイヌ語起源であるとの説(柳田国男)があった。しかし、北海道の地名にこれらの語が使用されていないところから、むしろアイヌ語のヤチの方が日本語からの借用語ではないかと考えられている。
最上川左岸にあり、中世以来山形盆地北部の一中心で、近世にはいくつかの村に分立したが、そのうちの町部の総称とされ、村山郡第二の商業地として栄えた。明治二〇年(一八八七)近世分立していた八村が合併し、再び谷地村を称した。現在はほぼ近世の八村を継承する住居表示に分けられている。その住居表示とそれに含まれる通称は次のものである。
古くは谷後といったとする説もある(「白鳥系図」茂木文書)。天文五年(一五三六)八月一日の願文(熊野那智大社文書)に「出羽国最上谷地」とある。この史料は斎藤牛田左近大夫藤原長実ら谷地の住人一〇名が竹本坊を先達とした熊野参詣に際し、奉納した願文である。同七年二月五日刻銘の
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…山形盆地西部,最上川と寒河江川の合流点付近にあり,町域の約7割が平地である。最上川西岸に位置する中心集落の谷地(やち)は,戦国末期に白鳥氏が築いた谷地城の城下町で,江戸時代は米,ベニバナ,特産の草履表の取引でにぎわい,六斎市が開かれていた。また明治末期に水運が衰えるまで最上川の船着場としても栄えた。…
…とくに武蔵と相模で多く使われている語。同様の語として鎌倉や下総での〈やつ(谷,谷津)〉,東北地方や北海道でひじょうに多く使われている〈やち(谷地)〉がある。いずれもアイヌ語起源とされる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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