精選版 日本国語大辞典 「足洗」の意味・読み・例文・類語
あし‐あらい‥あらひ【足洗】
- 〘 名詞 〙
- ① 足を洗うこと。また、足を洗うための盥(たらい)など。
- [初出の実例]「ゆなどもてきてあしあらひなどしてのち」(出典:御伽草子・鶴の草子(古典文庫所収)(室町末))
- ② 足で物を踏み洗う洗濯法。
- [初出の実例]「しづのめも大道井づつに夕涼みふるかたびらのあしあらひして」(出典:広本拾玉集(1346)二)
- ③ いやしい身分の者が出世すること。泥にまみれて働く境遇から抜け出して偉くなること。農民が仕事を終えて泥足を洗うことにたとえた語。
- [初出の実例]「田中よりたつと云はここらに足あらいと云事ぞ。げすがさぶらいに足をあらうて上らうまじりをするぞ」(出典:玉塵抄(1563)一六)
- ④ 思わしくない境遇などから抜け出すこと。遊女、芸妓、やくざ、乞食などが、その境遇をはなれ、堅気になること。
- [初出の実例]「仲間入りの金をとるか、足洗ひの金をとるか」(出典:歌舞伎・蝶々孖梅菊(1828)序幕)
- ⑤ 「あしあらいおんな(足洗女)」の略。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
- ⑥ ( 地方の風習で ) 新しく加わる者が、前からいた人に酒食や金銭を出すこと。また、その酒食や金銭。
- [初出の実例]「市中ばんの最も大なる者、之に入らんとするには酒一升金十銭、アシアラヒと呼べるを入れざるべからず」(出典:日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉一)
- ⑦ 和船の部材名称。江戸後期になって弁才船の垣立に付加された厚い筋。大筋の上縁に並行し、波除け用の蛇腹垣を立てる際の土台となるもの。
- ⑧ 妖怪の一種。天井から大きな足を突き出して洗わせ、洗うとすぐに消え失せるというもの。
- ⑨ 寺院仏閣の付近にあって、高僧などが足を洗ったと伝える池または井水。例えば、東京都大田区の洗足池は、池上本門寺に近く、日蓮の足洗いの池と伝える。