跡式(読み)アトシキ

デジタル大辞泉 「跡式」の意味・読み・例文・類語

あと‐しき【跡式/跡職】

《鎌倉時代以後の語。「後職あとしき」の意から》先代家督・財産を相続すること。また、その家督・財産。跡目
[類語]跡目家督

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精選版 日本国語大辞典 「跡式」の意味・読み・例文・類語

あと‐しき【跡式・跡職】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 相続の対象となる家督または財産。また、家督と財産。分割相続が普通であった鎌倉時代には、総領の相続する家督と財産、庶子の相続する財産をいったが、長子単独相続制に変わった室町時代には、家督と長子に集中する財産との単一体を意味した。江戸時代、武士間では単独相続が一般的であったため、原則として家名家祿の結合体を意味する語として用いられたが、分割相続が広範にみられ、しかも、財産が相続の客体として重視された町人階級では、財産だけをさす場合に使用されることもあった。
    1. [初出の実例]「父の跡職、嫡子可相続事勿論也」(出典今川仮名目録‐追加(1553)一一条)
    2. 「松平蔵人殿舎弟の十郎三郎殿御死去なされければ、御跡次(あとつぎ)の御子無しと仰せ有つて、其の御跡式(アトシキ)押領(をうれう)し給ふ」(出典:三河物語(1626頃)一)
  3. あとしきそうぞく(跡式相続)
    1. [初出の実例]「怪敷儀も無之におゐては、譲状之通、跡式可申付」(出典:徳川禁令考‐別巻・棠蔭秘鑑・亨・三・寛保三年(1743))
  4. 家督相続人。遺産相続人。跡目。あとつぎ
    1. [初出の実例]「頓死をなげく鶯の声 跡識の公事は霞てみとせまで」(出典:俳諧・大坂独吟集(1675)下)

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世界大百科事典(旧版)内の跡式の言及

【跡目】より

…中世においては,遺産のことを跡職(跡式)(あとしき)と称したが,近世には跡目という語も用いられた。相続の対象となる遺産だけでなく,その相続者をも跡目と呼ぶこともある(たとえば,〈跡目が絶える〉〈跡目を立てる〉など)。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」