軍役帳(読み)ぐんやくちょう

改訂新版 世界大百科事典 「軍役帳」の意味・わかりやすい解説

軍役帳 (ぐんやくちょう)

戦国大名または近世大名が,家臣の1人ごとにその提供すべき軍役の内容と量を割り当てるために作成した帳面。単に役帳ともいう。戦国大名のものでは,小田原北条氏の《小田原衆所領役帳》(1559)が著名であり,これに登録された貫高を基準に年々の異動が加味されて,個々の家臣が出陣に際して携行すべき鉄砲・弓・鎗・旗と,これらを操作する戦闘員の数が定められた。近世では,家臣の軍役は石高を基準に決定されたが,それには知行高に応じて武器と従者の数を計算して割り当てた帳面が必要であったことは,戦国期と同様であった。しかし,戦争がなくなり,参勤交代,将軍供奉,城普請,城や番所の警衛など家臣団の部分的動員が普通となった近世においては,動員を免れた家臣から償銀(つぐのいぎん)や催合銀(もあいぎん)を徴収する制度が一般化したが,これらの銀も軍役帳で算出された。なお個々の家臣には,役帳によって1人ずつの書類が作られ送付されたが,これを切札(きりふだ)と称した藩もあった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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