遠・彼方(読み)おち

精選版 日本国語大辞典 「遠・彼方」の意味・読み・例文・類語

おち をち【遠・彼方】

〘代名〙 他称。
① 遠く隔たっている場所を指す(遠称)。また、ある範囲にはいらない場所をもいう。
古今(905‐914)離別・三八〇「白雲八重に重なるをちにても思はん人に心へだつな〈紀貫之〉」
② 遠く隔たっている時を指す(遠称)。
万葉(8C後)一五・三七二六「このころは恋ひつつもあらむ玉匣(たまくしげ)明けて乎知(ヲチ)よりすべなかるべし」
拾遺(1005‐07頃か)雑賀・一一五九「昨日よりをちをばしらず百年(ももとせ)の春の始めは今日にぞ有りける〈紀貫之〉」
[語誌](1)上代においては、方向を表わす代名詞は、指示代名詞に「ち」を付けて、「こち」「そち」等の言い方をするが、遠称にはこのような言い方がなく、「をち」「かなた」がこれを代用している。
(2)②の意は、「万葉集」では未来を表わしているが、中古では過去を表わしていると見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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