野老(読み)ところ

精選版 日本国語大辞典 「野老」の意味・読み・例文・類語

ところ【野老】

[1] 植物おにどころ(鬼野老)」の別名。《季・新年》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
拾遺(1005‐07頃か)雑春・一〇三二・詞書「女どもの野辺に侍りけるを見て何わざするぞと問ひければところほるなりと応へければ」
[2] 狂言。和泉流。人々が掘り出して食べた野老の精を弔うために立てたという卒都婆(そとば)の前で僧が回向していると、野老の精が現われて最後の時のさまを語り、僧の回向でやっと成仏できたと喜ぶ。
[語誌](1)ヤマイモによく似た野生植物で食用になり、「風土記」にも「萆薢」として見られる。古くはトコロヅラといい、中古にトコロと呼ばれるようになった。
(2)「野老」と書くのは、その髭根を老人の髭に見立てたからで、海老にたいして野老、ノノオキナとも呼ばれた。この芋がきわめて長いので長命を連想させ、毎年掘り出す普通の芋に対し長く土中においておくほど大きくなるところから、年をとるほど栄える縁起物とされる。

や‐ろう ‥ラウ【野老】

〘名〙
田舎の老人。いなかおやじ。村翁。また、老人が自分をへりくだっていう。
性霊集‐六(835頃)於大極紫震両殿請百僧雩願文「野老不帝力、家嬰悉飽王乳
正法眼蔵(1231‐53)行持下「いまは田夫農夫、野老村童までも」 〔宋史‐司馬光伝〕
② 植物「おにどころ(鬼野老)」の異名。〔元和本下学集(1617)〕

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デジタル大辞泉 「野老」の意味・読み・例文・類語

ところ【野老】

ヤマノイモ科蔓性つるせい多年草原野自生。葉は心臓形で先がとがり、互生する。雌雄異株。夏、淡緑色の小花を穂状につける。根茎ひげ根が多く、これを老人のひげにたとえて野老やろうとよび、正月の飾りに用い長寿を祝う。根茎をあく抜きして食用にすることもある。おにどころ。 新年》「―うり声大原の里びたり/其角

や‐ろう〔‐ラウ〕【野老】

田舎の老人。老人が自分をへりくだっていう語。村翁。
ヤマノイモ科の多年草トコロの別名。

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普及版 字通 「野老」の読み・字形・画数・意味

【野老】やろう(らう)

いなかの老人。宋・舜欽〔滄浪亭記〕觴(しやう)して歌し、踞(きよ)して仰嘯(かうせう)す。野老至らず、魚鳥共に樂しむ。形骸すれば、則ち(こころ)煩(わづら)はされず。

字通「野」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「野老」の解説

野老 (トコロ・ヤロウ)

学名:Dioscorea takoro
植物。ヤマノイモ科のつる性多年草

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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