錯乱(読み)さくらん

精選版 日本国語大辞典 「錯乱」の意味・読み・例文・類語

さく‐らん【錯乱】

〘名〙
① 秩序などが乱れること。
※醍醐寺本元興寺伽藍縁起并流記資財帳(747)「若滅此文、若錯乱者、当知二寺即将散滅
太平記(14C後)一二「此の如く互に錯乱(サクラン)せし間、所領一所に四五人の給主付いて、国々の動乱更に休む時なし」 〔書経孔安国序〕
思考感情などが混乱して、異常な精神状態に陥ること。
実隆公記‐永正九年(1512)二月八日「孫子今夕向甘露寺。乳母錯乱之子細在之間如此」

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デジタル大辞泉 「錯乱」の意味・読み・例文・類語

さく‐らん【錯乱】

[名](スル)入り乱れて秩序がなくなること。ごちゃごちゃになること。特に、感情や思考が混乱すること。「考えが錯乱する」「錯乱状態」
[補説]書名別項。→錯乱
[類語]しっちゃかめっちゃかはちゃめちゃ乱雑雑然乱脈紛然紛紛繚乱蕪雑ぶざつ狼藉卍巴まんじともえ不統一ごっちゃごちゃごちゃごしゃごしゃごじゃごじゃごたごためちゃくちゃまぜこぜ支離滅裂かなえの沸くが如し上を下へ蜂の巣をつついたよう押すな押すな押し合いへし合い混乱錯綜混沌錯雑交錯混線混同混交混迷ごた混ぜごちゃ混ぜどさくさこんがらかる紛れる

さくらん【錯乱】[書名]

池波正太郎歴史小説。昭和35年(1960)発表。同年、第43回直木賞受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「錯乱」の意味・わかりやすい解説

錯乱 (さくらん)
confusion

思考や行動の著しい乱れに関する医学用語。意識障害といってもよく,自分自身および自分と外界との関係に対する意識が希薄になり,時間や場所,方向などの認識が困難で,話や行動にまとまりがなく,周囲と正しい交渉ができない。こうした意識障害はいわば深い昏睡から半覚醒した状態であり,当人は眼を閉じたり開いたりして横たわっていることが多く,歩こうとしてもよろけてぶつかったりする。振戦せん妄(しんせんせんもう)といわれるアルコール依存症さいには幻覚錯覚,人物誤認などが活発に現れ,また重い頭部外傷の一時期には激しい興奮を伴って錯乱が出現したりする。これらから覚めて正常の意識状態に戻ったさいには,その間のことを覚えていないのが普通である。心因性の場合,たとえば生命を脅かすような破局的事態によって外界と自己の認識ができず考えをまとめることのできない困惑状態が起こった場合や,統合失調症の急性状態で支離滅裂状態に陥った場合にも錯乱といわれることがある。
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百科事典マイペディア 「錯乱」の意味・わかりやすい解説

錯乱【さくらん】

精神医学用語。高度の思考障害があるため,話や動作にまとまりがなく,外部の状況を誤認して,適した行動をしないなどの混乱状態。意識混濁が起こることも。一般に急性脳疾患,慢性アルコール中毒癲癇統合失調症精神分裂病),老人性認知症(痴呆(ちほう))などに見られる。

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普及版 字通 「錯乱」の読み・字形・画数・意味

【錯乱】さくらん

前後が乱れる。漢・孔安国〔尚書の序〕(すべ)て五十九、四十六卷と爲す。其の餘は錯亂滅し、復(ま)た知るべからず。悉(ことごと)く官に上す。

字通「錯」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「錯乱」の意味・わかりやすい解説

錯乱
さくらん

意識障害の一型で、正しくは精神錯乱とよばれる。いちおう覚醒(かくせい)していて意識混濁はみられないか、あっても軽度であるにもかかわらず、意識内容の精神的統合がうまく行われないことを基本的特徴とする一種の意識変容である。支離滅裂な言語表出に反映される思考障害、外界と情況の認知障害ないし誤認、日付や自分のいる場所がわからず身近な人の区別ができない失見当、過去の体験の想起困難ないし記憶錯誤などが目だった症状であるが、幻覚や精神運動性興奮はかならずしも伴わない。なお「私はだれなのか、どうなったんだろう」と不審がる困惑状態がとくに目だつ場合はアメンチアとよばれ、急性脳疾患(脳外傷など)のほか、さまざまの急性精神病でしばしば出現する。

[濱中淑彦]

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デジタル大辞泉プラス 「錯乱」の解説

錯乱

池波正太郎の時代小説短編集。1960年刊行。表題作は第43回直木賞受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の錯乱の言及

【アメンチア】より

…以来アメンチアは,外因反応型を呈する疾患,すなわち症状精神病の特徴的な意識障害の一型とされた。なおイギリスでは,amentiaは精神遅滞を意味し,かわってconfusionという言葉が用いられる。【石黒 健夫】。…

※「錯乱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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