閼伽(読み)アカ

デジタル大辞泉 「閼伽」の意味・読み・例文・類語

あか【××伽】

《〈梵〉arghaの音写価値の意。功徳水くどくすいと訳す》
仏に手向ける水。閼伽水あかみず。閼伽の水。
仏前に供える水を入れる器。閼伽坏あかつき。閼伽器。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「閼伽」の意味・読み・例文・類語

あか【閼伽】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] argha, arghya 「価値」の意で、敬意を表わす贈り物のこと。功徳水と訳す )
  2. 仏に供える清水、香水など。仏教では本尊聖衆に供養する六種の物の一つに数える。
    1. [初出の実例]「閼伽 内典云、閼伽〈略〉梵語也漢言欝勃烝煮雑香、以其汁養仏也」(出典:十巻本和名抄(934頃)五)
    2. 「あか奉り花折りなどするも、あらはに見ゆ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  3. 仏前に供える水を入れる器。あかの具。
    1. [初出の実例]「行基閼伽一具をそなへてそのむかへにいだしやる」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
  4. 酒をいう、僧侶仲間の隠語。はんにゃとう。〔最新百科社会語辞典(1932)〕
  5. あか(淦)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「閼伽」の意味・わかりやすい解説

閼伽 (あか)

サンスクリットarghaの音訳。功徳,功徳水または水と訳す。〈価値がある〉という意味のarghより転じて,神仏や貴人などに捧げる水を意味する。閼伽はもともと水を意味するが,中国においても日本でも閼伽水と呼ばれる場合が多い。仏会では加持した水や,霊地の水,あるいは香木を水に入れた香水(こうずい)を用いる場合が多い。閼伽の湧く井戸閼伽井と呼び,東大寺二月堂下の閼伽井や園城寺金堂わきの井,秋篠寺の閼伽井など著名な井戸が現存する。宮中真言院の後七日護摩の閼伽水は神泉苑の池水を汲み,香水ともいわれ,大元帥法(だいげんのほう)の閼伽水は秋篠寺の井戸水を用いた。閼伽水を入れる用器は銅製・木製のものがあり,ともに閼伽桶と呼ばれる。
執筆者: 修験道においては水すなわち閼伽をとりわけ重要視する。五仏のひとつ釈迦如来の心水であるとし,閼伽によって行者自身の罪悪不浄を清める。山伏のもっとも重要な儀礼である入峰儀礼において,行者は毎日3度閼伽を谷などより汲みあげ,諸仏や先達に捧げることが定められている。このような閼伽に関する種々の儀礼所作(閼伽の法)を行者に指導する修験者を,閼伽行者ないしたんに閼伽と呼ぶ。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「閼伽」の意味・わかりやすい解説

閼伽
あか

サンスクリット語アルガarghaの音訳で、阿伽、遏伽とも書く。器、功徳(くどく)水、水と訳す。原語は「価値あるもの」の意で、客人を接待するにもっとも必要な水を意味し、転じて神に供える捧(ささ)げ物の意となり、それを盛る容器の総称となった。仏教では、仏菩薩(ぼさつ)に献ずる聖水をさし、とくに密教では仏や諸尊に捧げる六種供養(閼伽、塗香(ずこう)、華鬘(けまん)、焼香(しょうこう)、飲食(おんじき)、灯明(とうみょう))の一として、煩悩(ぼんのう)の垢(あか)を洗うものとされる。実際の修法には、特別の取水法によって得た浄水に妙華(みょうけ)を浮かべたものをいい、一般には仏前や墓前などに供える神聖な水を閼伽水と重言する。この浄水をくむ井戸を閼伽井、この水を入れるものを閼伽桶(おけ)、金属などでつくった修法用の水入れ容器を閼伽器と称し、密教修法の六器の一つに数えられる。また閼伽桶を置く棚を閼伽棚(だな)、閼伽を仏前に供える容器を閼伽杯(つき)、閼伽の浄水に浮かべ仏前に供えるシキミを閼伽の花ともいう。

[塩入良道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閼伽」の意味・わかりやすい解説

閼伽
あか

サンスクリット語 arghaまたは arghyaの音写。元来は客人の接待のときに捧げられる水。現在では仏前や墓前に供えられる水をさす。阿伽,遏伽とも書かれ,器水,功徳水 (くどくすい) とも訳される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「閼伽」の読み・字形・画数・意味

【閼伽】あか

仏に供える水。

字通「閼」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android