コロイド溶液はろ紙を用いる通常の方法でろ過してもコロイド粒子をろ別することはできない(ろ紙の穴はふつう0.002~0.005mm,コロイド粒子の大きさは0.000001~0.0002mm)。コロイド粒子を分散媒から分離するには特別なろ過方法が用いられ,この操作を限外ろ過という。最も普通には布や素焼の多孔板などにコロジオン膜をつけたもの,あるいはホルマリンで硬化したゼラチン膜やケイ酸膜,セロハン膜などの半透膜を用い,常圧ないし減圧(あるいは加圧)でろ過する。このときのコロジオン膜などのろ過する膜を限外ろ過膜という。たとえばコロジオンなどの濃度や乾燥度,あるいはセロハンなどの膨潤度の調節などによって膜の目の大きさを調節することができ,これによってコロイド粒子の大きさに適応させることができる。このように一般に高分子膜を用いるので,この方法は膜分離の一種と考えられる。20世紀の初めドイツのベヒホルトH.Bechholdらが始めたものである。限外ろ過器として普通に用いられるのはR. ジグモンディの限外ろ過器,G.ウェーゲリンのパーコレーターなどである。
限外ろ過用にはそれぞれの目的に応じた各種のろ過器があり,それに応じた限外ろ過膜がつくられている。たとえば細菌学での滅菌,清澄などにはケイ藻土を押し固めたもの,石綿を固めたものが用いられる。中性分子を含むコロイド溶液の精製には,透析よりも限外ろ過と電気透析を組み合わせた電気限外ろ過がよく用いられる。また分子量が100以下の物質の分離には,逆浸透法が利用される。この場合には100気圧にも達する高圧を必要とする。最近はより優れたろ過膜も開発され,各種のウルトラフィルターが実用化されている。
執筆者:中原 勝儼+神保 元二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普通の濾過(沪過と書くことが多い)では分けられないコロイド粒子や細菌などの微粒子を液体から分けるのに20世紀の初めから開発されたもので、濾布のかわりに半透膜を利用する分離法である。これに利用される膜の材質は、アセチルセルロース、ニトロセルロース、塩化ビニルなどで、これを限外濾過膜という。この膜の性能は、つくるときの溶質の濃度、溶媒の種類、乾燥温度などの条件に支配される。これに使われる装置は限外濾過器(ウルトラフィルター)とよばれる。一般にこの方法によって分けられる分子量は、膜にもよるが、だいたい100以上といわれている。さらに低分子の無機塩類まで分離しようとするのが逆浸透法である。
[大竹伝雄]
コロイド溶液は一般の沪紙を通過してしまうが,沪紙にゼラチン,セロハン,あるいはコロジオン膜を用いると,コロイド粒子を溶媒から分離することができる.これを限外濾過という.膜のつくり方によって,その厚さや密度を調節すると,その最大通過粒子の大きさをある程度制限することができるので,この方法は,コロイドの精製,濃縮,均一化などに利用される.常圧のままでは濾過がほとんど進行しないので,加圧するか吸引によって促進させる.最近では,アセチルセルロース,ポリ(フッ化ビニリデン),ポリアクリロニトリルなど,合成高分子の膜も現れ,分子量数千から約十万の物質とそれ以下の低分子との分離,たとえば電着塗料の回収,油水分離,タンパク質の濃縮,酵素の分離・精製などに応用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…この場合,血漿タンパク質は移動しない。そこで,透析液として正常血漿と類似の液を用い,一定の圧力を加えて限外ろ過を行うことによって,糸球体でのろ過と同じようなろ過を行うことができる。
[透析器と透析の実際]
透析装置は透析器を中心にし,血液と透析液を流すためのポンプや透析液供給槽が組み合わされたもので,現在,日本で用いられている透析器にはコイル型,積層型,中空繊維型の3種がある。…
※「限外濾過」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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