雲水(読み)ウンスイ

デジタル大辞泉 「雲水」の意味・読み・例文・類語

うん‐すい【雲水】

《「行雲流水」の略》
雲が定めなく行き、水が流れてやまないように、一所にとどまらない自由な人。また、そのような境涯。
行方を定めないで諸国を行脚する修行の僧。雲水僧。雲衲うんのう
[類語]旅僧行脚僧虚無僧山伏雲衲うんのう普化僧薦僧こもそう行者修験者梵論ぼろ遍路僧侶坊主坊さん御坊お寺様僧家沙門法師出家比丘僧徒桑門和尚住職住持方丈入道

くも‐みず〔‐みづ〕【雲水】

雲と水。また転じて、行く先の定まらないこと。うんすい。
「上り下るや―の、身は定めなき習ひかな」〈謡・船弁慶

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精選版 日本国語大辞典 「雲水」の意味・読み・例文・類語

うん‐すい【雲水】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 雲と水。
    1. [初出の実例]「酉天は溟海、漫々として雲水蒼々たり」(出典:海道記(1223頃)萱津より矢矧)
    2. [その他の文献]〔杜甫‐刈稲了詠懐詩〕
  3. 所定めず諸所を遍歴する禅僧。行脚(あんぎゃ)頭陀(ずだ)雲衲(うんのう)。雲水僧。
    1. [初出の実例]「しかあれば参学の雲水、かならず勤学なるべし」(出典:正法眼蔵(1231‐53)心不可得)
    2. [その他の文献]〔宋史‐方技伝下莎衣道人〕
  4. ( から転じて ) 思うままに遍歴すること。また、その人。
    1. [初出の実例]「ことに六欲兼備の輩、遺言にそふかは、はた㒵(かほ)あかめあふ本意なければ、又元の雲水と成て」(出典:俳諧・父の終焉日記(1801)五月二八日)
    2. [その他の文献]〔豊干‐壁上詩〕

雲水の補助注記

の意は、その居所を定めない身を行雲流水にたとえてのこととされる。


くも‐みず‥みづ【雲水】

  1. 〘 名詞 〙 雲と水。行く雲や流れる水のようにゆくえの定まらないこと。転じて、諸国行脚(あんぎゃ)の僧侶をいうこともある。うんすい。
    1. [初出の実例]「そことなき野沢の末の雲水のうきてただよふ身にこそ有けれ」(出典:堯孝集(1455頃)雑)

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改訂新版 世界大百科事典 「雲水」の意味・わかりやすい解説

雲水 (うんすい)

行雲流水の語に由来し,行く雲,流れる水のように執着のない自由な禅の境地を得ること。また,雲水僧の略で,雲のごとく定まった住所もなく,水のごとく流れゆきてよる所もないように,諸方の禅師を訪ねて遍歴し,道を求める修行僧をいう。雲衲(うんのう),行脚(あんぎや)とも称す。雲水は,網代笠(あじろがさ)をかぶり,袖の長い雲水衣(直綴(じきとつ))をきて,腰に手巾(しゆきん)と称する丸ぐけの腰紐をしめる。絡子(らくす)をかけ,白木綿の手甲(てつこう)・脚絆(きやはん)をつけ,わらじをはき,機能的で簡素な服装である。所持品は,三衣一鉢(さんねいつぱつ)といわれるように,必要最小限度のもので,振分けにして肩にかける。前の袈裟行李(けさごうり)には,袈裟,白衣,かみそり,経典や三物(嗣書,血脈,大事)などを入れる。食器は応量器(おうりようき)(持鉢(じはつ))と称し,行李をいれた袋の上にしばりつけて持ち歩く。後ろに背負う荷物は着替えや雨合羽などである。雲水が修行する専門道場は,聖僧堂,僧堂,座禅堂,選仏場などと称し,そこに在留し修行することを〈かた〉〈かとう〉(掛搭)という。掛搭の時期は解間(げあい)という夏安居(げあんご)のあと次の安居までの期間で,新しく掛搭した雲水は新到(しんとう)と称する。新到の掛搭の法は,曹洞・臨済両宗,あるいは僧堂によりそれぞれ日数等多少の異なりはあるが,行法の第一として厳密になされる。山門に到着した雲水は,知客(しか)(賓客の送迎接待をつかさどる役僧)によって暫到(ざんとう)到着所に案内される。次に庭詰(にわづめ)と称し,僧堂の玄関で低頭して修行の許可を求め待つ。1日から数日間行う。雲水の求道心が試され,それが終わると雲水行脚僧の宿泊寮舎である旦過(たんが)寮に入り1週間前後止宿し,その間を暫到と呼ぶ。掛搭式を経た雲水は,単(たん)(修行者の座る座席)が決められ,清規しんぎ)(規則)に従って僧堂生活がはじまる。1年を雨安居(うあんご)(夏安居)と雪安居(冬安居)の2期に分け,その間月に1回程度接心(せつしん)(摂心。一定期間ひたすら座禅をすること)が設けられ,また12月1日から8日朝までは臘八接心(ろうはつせつしん)と称し,昼夜を通して座禅する。開静(かいじよう)(起床)から開枕(かいちん)(就寝)までの雲水の行動は,すべて鳴らし物(柝木(たく),雲版(うんぱん),鐘,法鼓(ほつく)等)で合図され,迅速に行われる。座禅をくみ,入室問法(につしつもんぽう)(独参。修行者が1人で師の室中に入って教えを仰ぐこと)し,提唱(宗旨大要を提起して説くこと)をきき,作務(さむ)(採薪や掃除等の労務)を行い,托鉢たくはつ)(行乞ぎようこつ))をする。臨済禅での独参は,雲水が師から公案をもらい,その所解を呈するところであり重視される。粥坐(しゆくざ)(朝食),斎坐(昼食),薬石(やくせき)(夕食)と称する食事は,行鉢(ぎようはつ)と称する禅門の食事作法で行う。入浴(開浴(かいよく))は,四九日(しくにち)(4と9の日)に行う。雲水の行為はすべて修行である。
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普及版 字通 「雲水」の読み・字形・画数・意味

【雲水】うんすい

雲と水。また禅宗の行脚僧をいう。唐・韓〔晩に宣渓に次(やど)りて、~張使君の恵書に酬ゆ〕詩 州南に去れば、宣溪に接す 雲水として、日、西に向ふ

字通「雲」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雲水」の意味・わかりやすい解説

雲水
うんすい

行雲流水(こううんりゅうすい)、浮雲(ふうん)流水の略で、行脚僧(あんぎゃそう)、雲水僧のこと。修行中の僧が一所にとどまらず、自由に諸国を遍歴し、よき師を求め歩く姿が雲水に例えられた。このような僧の衲衣(のうえ)を雲に、袂(たもと)を霞(かすみ)に例えて行脚僧のことを雲衲霞袂(うんのうかべい)、略して雲衲(うんのう)ともいう。その服装は、網代笠(あじろがさ)、黒衣(こくえ)、手甲脚絆(てっこうきゃはん)、草鞋(わらじ)ばきの姿で、袈裟(けさ)文庫、頭陀袋(ずだぶくろ)を首にかけ、日常生活用具を携行するのを常とした。また一般に、叢林(そうりん)で修行中の僧や、托鉢行(たくはつぎょう)を行っている僧も雲水とよばれる。

[石川力山]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雲水」の意味・わかりやすい解説

雲水
うんすい

中国,朝鮮,日本における修行僧の呼称。師をたずね道を求めて各地をめぐり,あたかも行雲流水のように一ヵ所にとどまらずに修行する僧。特に禅宗では参禅し師に仕えて修行する僧もさす。衲 (ころも) を雲にたとえて雲衲ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の雲水の言及

【行脚】より

…中国で禅僧が行雲流水のごとく天下を遊行することをいい,これを唐宋音で読んだものである。僧は本来無一物となって一所不住の頭陀抖擻(ずだとそう)すべきものであるから,修行時代の禅僧はいわゆる雲水となって,行脚しなければならない。その間に明師に会えば,僧堂会下(えか)に一時とどまることもあるが,そこに定住することは許されない。…

※「雲水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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