②の意は、その居所を定めない身を行雲流水にたとえてのこととされる。
行雲流水の語に由来し,行く雲,流れる水のように執着のない自由な禅の境地を得ること。また,雲水僧の略で,雲のごとく定まった住所もなく,水のごとく流れゆきてよる所もないように,諸方の禅師を訪ねて遍歴し,道を求める修行僧をいう。雲衲(うんのう),行脚(あんぎや)とも称す。雲水は,網代笠(あじろがさ)をかぶり,袖の長い雲水衣(直綴(じきとつ))をきて,腰に手巾(しゆきん)と称する丸ぐけの腰紐をしめる。絡子(らくす)をかけ,白木綿の手甲(てつこう)・脚絆(きやはん)をつけ,わらじをはき,機能的で簡素な服装である。所持品は,三衣一鉢(さんねいつぱつ)といわれるように,必要最小限度のもので,振分けにして肩にかける。前の袈裟行李(けさごうり)には,袈裟,白衣,かみそり,経典や三物(嗣書,血脈,大事)などを入れる。食器は応量器(おうりようき)(持鉢(じはつ))と称し,行李をいれた袋の上にしばりつけて持ち歩く。後ろに背負う荷物は着替えや雨合羽などである。雲水が修行する専門道場は,聖僧堂,僧堂,座禅堂,選仏場などと称し,そこに在留し修行することを〈かた〉〈かとう〉(掛搭)という。掛搭の時期は解間(げあい)という夏安居(げあんご)のあと次の安居までの期間で,新しく掛搭した雲水は新到(しんとう)と称する。新到の掛搭の法は,曹洞・臨済両宗,あるいは僧堂によりそれぞれ日数等多少の異なりはあるが,行法の第一として厳密になされる。山門に到着した雲水は,知客(しか)(賓客の送迎接待をつかさどる役僧)によって暫到(ざんとう)到着所に案内される。次に庭詰(にわづめ)と称し,僧堂の玄関で低頭して修行の許可を求め待つ。1日から数日間行う。雲水の求道心が試され,それが終わると雲水行脚僧の宿泊寮舎である旦過(たんが)寮に入り1週間前後止宿し,その間を暫到と呼ぶ。掛搭式を経た雲水は,単(たん)(修行者の座る座席)が決められ,清規(しんぎ)(規則)に従って僧堂生活がはじまる。1年を雨安居(うあんご)(夏安居)と雪安居(冬安居)の2期に分け,その間月に1回程度接心(せつしん)(摂心。一定期間ひたすら座禅をすること)が設けられ,また12月1日から8日朝までは臘八接心(ろうはつせつしん)と称し,昼夜を通して座禅する。開静(かいじよう)(起床)から開枕(かいちん)(就寝)までの雲水の行動は,すべて鳴らし物(柝木(たく),雲版(うんぱん),鐘,法鼓(ほつく)等)で合図され,迅速に行われる。座禅をくみ,入室問法(につしつもんぽう)(独参。修行者が1人で師の室中に入って教えを仰ぐこと)し,提唱(宗旨の大要を提起して説くこと)をきき,作務(さむ)(採薪や掃除等の労務)を行い,托鉢(たくはつ)(行乞(ぎようこつ))をする。臨済禅での独参は,雲水が師から公案をもらい,その所解を呈するところであり重視される。粥坐(しゆくざ)(朝食),斎坐(昼食),薬石(やくせき)(夕食)と称する食事は,行鉢(ぎようはつ)と称する禅門の食事作法で行う。入浴(開浴(かいよく))は,四九日(しくにち)(4と9の日)に行う。雲水の行為はすべて修行である。
執筆者:竹貫 元勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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行雲流水(こううんりゅうすい)、浮雲(ふうん)流水の略で、行脚僧(あんぎゃそう)、雲水僧のこと。修行中の僧が一所にとどまらず、自由に諸国を遍歴し、よき師を求め歩く姿が雲水に例えられた。このような僧の衲衣(のうえ)を雲に、袂(たもと)を霞(かすみ)に例えて行脚僧のことを雲衲霞袂(うんのうかべい)、略して雲衲(うんのう)ともいう。その服装は、網代笠(あじろがさ)、黒衣(こくえ)、手甲脚絆(てっこうきゃはん)、草鞋(わらじ)ばきの姿で、袈裟(けさ)文庫、頭陀袋(ずだぶくろ)を首にかけ、日常生活用具を携行するのを常とした。また一般に、叢林(そうりん)で修行中の僧や、托鉢行(たくはつぎょう)を行っている僧も雲水とよばれる。
[石川力山]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…中国で禅僧が行雲流水のごとく天下を遊行することをいい,これを唐宋音で読んだものである。僧は本来無一物となって一所不住の頭陀抖擻(ずだとそう)すべきものであるから,修行時代の禅僧はいわゆる雲水となって,行脚しなければならない。その間に明師に会えば,僧堂会下(えか)に一時とどまることもあるが,そこに定住することは許されない。…
※「雲水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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