鞆(広島県)(読み)とも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鞆(広島県)」の意味・わかりやすい解説

鞆(広島県)
とも

広島県東部、福山(ふくやま)市の一地区。旧鞆町。燧灘(ひうちなだ)に面した沼隈(ぬまくま)半島の南東部と仙酔(せんすい)島、走(はしり)島などを含む地域。地名は、神功(じんぐう)皇后が征韓の帰途、手に巻いていた鞆を沼名前(ぬなくま)神社に納めたことに由来するという。古くから瀬戸内海の港津として知られ、港が巴(ともえ)形をしていることから巴津(ともえつ)ともいった。大宰府(だざいふ)からの帰路鞆に寄港した万葉歌人大伴旅人(おおとものたびと)もこの地を詠んでいる。中世以降、軍事上の拠点として、また近世には諸大名や朝鮮通信使の利用が多かった。

 瀬戸内海国立公園の一部で、仙酔島を中心とする鞆の浦一帯は鞆公園として国名勝に指定され、鞆の浦は重要伝統的建造物群保存地区、日本遺産にも指定されている。また5月の鯛(たい)網でも知られる。安国寺、沼名前神社、朝鮮使が宿泊した福禅寺対潮楼(たいちょうろう)(朝鮮通信使関係資料はユネスコ(国連教育科学文化機関)登録「世界の記憶」)などみるべきものも多い。江戸時代から酒造地としても知られ、保命酒の醸造元中村家を受け継いだ太田家住宅(1788年建造、国の重要文化財)など古い町家も残る。町の背後にはドライブウェーが通じており眺望がよい。

[北川建次]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

発見学習

発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...

発見学習の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android