頭蓋骨骨折(読み)ずがいこつこっせつ(その他表記)Skull Fracture

家庭医学館 「頭蓋骨骨折」の解説

ずがいこつこっせつ【頭蓋骨骨折 Skull Fracture】

 頭蓋骨骨折で、線状骨折(せんじょうこっせつ)、陥没骨折(かんぼつこっせつ)、頭蓋底骨折(ずがいていこっせつ)という3つの病態があります。
■線状骨折(せんじょうこっせつ)
 頭蓋骨に線のようなひびが入る骨折です。
●治療
 骨折だけであれば、とくに治療の必要はありません。
 しかし、数時間後、または翌日に硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)(「急性硬膜外血腫」)がおこってくることがあります。その場合は、血腫を取り除く手術が必要になります。
陥没骨折(かんぼつこっせつ)
 頭蓋骨が脳のほうへ、へこんでいる骨折です。折れた骨の先端が硬膜(こうまく)を傷つけ、硬膜外血腫や硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)(「急性硬膜下血腫」)をおこしたり、脳を傷つけ、脳挫傷(のうざしょう)をおこしたりすることがあります。
●治療
 折れた骨が脳のほうに深く入り込み、脳を傷つけている場合は、手術をして折れた部分を整復します。
 この場合、部位によっては、脳神経外科、脳外科、形成外科口腔外科(こうくうげか)などの協力が必要になることもあります。
 傷が開いている開放性骨折(かいほうせいこっせつ)の場合は、感染の危険があるので、できるだけ早く整復し、閉鎖します。
 折れた骨が深く入り込んでおらず、脳を損傷していないようなときは、手術をせず、経過を観察します。
頭蓋底骨折(ずがいていこっせつ)
 頭蓋骨の底辺(頭蓋底)の骨折です。目の周囲に溢血斑(いっけつはん)(ブラックアイ)がみられるときは前頭蓋底(ぜんずがいてい)が、耳の後ろに溢血斑(バトル徴候(ちょうこう))がみられるときは中頭蓋底(ちゅうずがいてい)が骨折しています。
 副鼻腔(ふくびくう)などに骨折がおよんで硬膜、くも膜に損傷があり、外部と交通してしまうと、頭蓋内に空気が入ってしまうことがあります(気脳症(きのうしょう))。
 耳や鼻から髄液(ずいえき)が流れ出てくることもあります(髄液漏(ずいえきろう)(「髄液漏」))。
●治療
 手術はせず、症状に応じた保存療法を行ないます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「頭蓋骨骨折」の解説

頭蓋骨骨折
ずがいこつこっせつ
Fracture of the skull
(子どもの病気)

 比較的多く、全分娩の10~20%に起こるといわれています。産道を通る際の圧力や、鉗子(かんし)分娩によって発生します。頭蓋骨にひびが入る線状(せんじょう)骨折と、頭蓋骨の一部が陥没(かんぼつ)する陥没骨折がありますが、多くは線状骨折です。

 陥没骨折のほとんどは鉗子分娩によって起こります。骨折部の下に硬膜外(こうまくがい)出血を伴うこともあります。また、陥没骨折の場合、程度が強ければ脳挫傷(のうざしょう)を伴うことがあります。

 線状骨折のほとんどはとくに症状がなく、自然治癒するため、治療を必要としません。硬膜外出血を伴う場合は、血腫を取り除く手術が必要になることがあります。

 陥没骨折の場合は、陰圧をかけて吸引するか、手術をして整復します。陥没骨折で脳挫傷を伴う場合は、けいれん、呼吸が止まる、吐くなどの症状が出ることが多いので、呼吸循環管理、けいれんを止める、脳圧を抑えるなどの対症療法が必要になります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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