風の便り(読み)カゼノタヨリ

デジタル大辞泉 「風の便り」の意味・読み・例文・類語

かぜ‐の‐たより【風の便り】

どこからともなく伝わってくるうわさ風聞。「風の便りに聞く」
吹く風が伝えるもの。風の使い。
「花の香を―にたぐへてぞうぐひす誘ふしるべにはやる」〈古今・春上〉
ふとした折。
「如何なる―にか、此の君に見え初められ参らせ給ひしより此の方」〈義経記・七〉
[類語]風聞風説風評風声ふうせい評判世評取り沙汰ざた下馬評巷説こうせつ浮説流説流言飛語流言飛語虚説空言俗言前評判デマゴシップ

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精選版 日本国語大辞典 「風の便り」の意味・読み・例文・類語

かぜ【風】 の 便(たよ)

  1. 風が伝え手となって物を吹き送ること。風が知らせてくること。また、風という使者。風の使い。
    1. [初出の実例]「花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる〈紀友則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・一三)
  2. 手紙などを送るべき、わずかな機会。ちょっとしたついで。
    1. [初出の実例]「さりぬべきかぜのたよりある時は」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  3. 風が吹き送ってきたような手紙。
    1. (イ) どこから送られてきたとも、どこへ送るかともわからない手紙。
      1. [初出の実例]「ほのかにはかぜのたよりに見しかどもいづれの枝と知らずぞありける」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
    2. (ロ) わずかな手紙。とりとめのない内容の手紙。
      1. [初出の実例]「花の香にさそはれぬべき身なりせばかぜのたよりをすぐさましやは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅梅)
  4. どこから伝わってきたともわからないうわさ。だれが伝えたとも言えないような話。風聞。
    1. [初出の実例]「田舎の事風(カセ)の便(タヨリ)もなければ、朝暮は母の事を申てぞ泣ける」(出典:米沢本沙石集(1283)七)
    2. 「風の音信(タヨリ)に聞けば、お前はもう疾に嫁(かたづ)いてゐるらしくもある」(出典:別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉)
  5. ひろく手紙をいう。
    1. [初出の実例]「一筆のかぜのたよりをも」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上)

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