鼓腸(読み)コチョウ(その他表記)meteorism

デジタル大辞泉 「鼓腸」の意味・読み・例文・類語

こ‐ちょう〔‐チヤウ〕【鼓腸/鼓×脹】

腸内ガスが大量にたまって腹が膨れ上がった状態腸閉塞腹膜炎などでみられる。
反芻はんすう動物、特に牛で、第1胃に食物発酵によるガスがたまった病的な状態。

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精選版 日本国語大辞典 「鼓腸」の意味・読み・例文・類語

こ‐ちょう‥チャウ【鼓腸・鼓脹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 腸管内あるいは腹腔内にガスが充満し、腹部がふくれあがった状態。打診すると腹部全般に高い鼓音を発する。腸閉塞、腸の吸収不全、胃および腸の穿孔(せんこう)による穿孔性腹膜炎の際にみられる。
    1. [初出の実例]「病鼓脹。腹皮光瑩射人」(出典:漫遊雑記(1764)上)
  3. 牛や綿羊など反芻(はんすう)類の第一胃で、食物が発酵して多量のガスを発生する病気。急性型と慢性型があり、急性の場合には数時間で死ぬこともある。鼓腸症

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改訂新版 世界大百科事典 「鼓腸」の意味・わかりやすい解説

鼓腸 (こちょう)
meteorism

腹部にガスがたまり膨隆した状態をいう。腸管内に内容が停滞し発酵分解し多量のガスが発生することによって生ずる。自覚症状としては腹部膨満腹痛がみられ,打診をすると腹部全体に高調な鼓音をきくことができる。腸管腔内にガスが充満した場合を腸性鼓腸と呼び,これに対して腸管外で腹膜腔内にガスが充満した場合を気腹あるいは腹膜性鼓腸と呼ぶ。両者X線検査で容易に鑑別することができる。腸性鼓腸の状態は,(1)腹膜炎,外傷,開腹手術後,重症な伝染病,低カリウム血症,モルヒネ投与などにより腸運動の低下,腸管麻痺をひきおこしたとき,(2)腸管の狭窄捻転癒着等によりイレウス(腸閉塞)をひきおこしたとき,(3)便秘,結腸過長症等によりガスの通過障害がもたらされたとき,(4)腸炎等により腸内ガスの吸収障害をひきおこしたとき,(5)発酵しやすい食事をとり腸内ガス発生が亢進したとき,(6)空気嚥下の増加したとき,などにみられる。一方,腹膜性鼓腸は,胃潰瘍,十二指腸潰瘍等の穿孔(せんこう)によって空気が腹腔内にもれた場合にみられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼓腸」の意味・わかりやすい解説

鼓腸
こちょう
meteorism

腸管内あるいは腹腔(ふくくう)内にガスが異常にたまり、腹が張ってくることをいう。ガスが多くなると腹が膨れてきて俗にいう「タヌキの腹」のようになり、手をのせてその上を軽くたたく打診によりポンポンと鼓音が出る。腹腔内に液体がたまる腹水の場合は、打診によって重い濁音が聞こえるので容易に鑑別できる。鼓腸のおもな原因は腸閉塞(へいそく)や腸麻痺(まひ)であり、腸のガスが下部へ移送されないためにおこる。空気を異常に多く飲み込む人にみられる空気嚥下(えんげ)症も、代表的原因の一つである。ごく軽い鼓腸は、ガスの多く出る食物、たとえばサツマイモ、ゴボウなどを多く食べたり、便秘が強いときにもみられる。

[吉田 豊]

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百科事典マイペディア 「鼓腸」の意味・わかりやすい解説

鼓腸【こちょう】

腸管内に異常にガスがたまった状態。全体に認められる場合は消化異常,腸運動異常によることが多く,局所的なものは腸の閉塞(へいそく),狭窄(きょうさく)によるものが多い。なお胃・腸の穿孔(せんこう)による腹膜炎の場合に見られる腹部の膨隆は腹膜性鼓腸という。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鼓腸」の意味・わかりやすい解説

鼓腸
こちょう
meteorism

腸管内や腹腔あるいは腹膜腔内にガスがたまって腹部の膨隆した状態。腸性と腹膜性がある。前者は腸管麻痺,腸閉塞,消化不良などによって腸管内にガスがたまるもので,後者は,胃や腸の穿孔による穿孔性腹膜炎による。

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