改訂新版 世界大百科事典 「鼻中隔穿孔」の意味・わかりやすい解説
鼻中隔穿孔 (びちゅうかくせんこう)
perforation of nasal septum
鼻中隔は左右の鼻腔を境するしきりで,前方の鼻中隔軟骨と後方の篩骨(しこつ)鉛直板,鋤骨(じよこつ)などの骨と,それをおおう粘膜で構成されている。これに穴があいた状態を鼻中隔穿孔という。鼻中隔彎曲(わんきよく)症を矯正するために手術をした後に起こることが最も多く,ほかに,梅毒,結核や,全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとして血管炎を起こす膠原病(こうげんびよう),ウェゲナー肉芽腫などに伴って起こる。穿孔部位は主として鼻中隔の前部であり,かさぶたがつく,鼻血が出る,息を吸いこむときに音がするなどの症状があるが,穿孔があるからといって必ずしも症状があるとは限らない。症状が強い場合には穿孔をふさぐ手術を行うが,難しい手術の一つといえる。1975年,6価クロム中毒の際に起こることが報道され,社会問題となった。
執筆者:市村 恵一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報