1票の格差(読み)いっぴょうのかくさ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「1票の格差」の意味・わかりやすい解説

1票の格差
いっぴょうのかくさ

小選挙区制の選挙などで,選挙区により議員 1人あたりの有権者数が異なるため,有権者のもつ 1票の価値に地域差が生じること。日本では憲法14条が定める「法のもとの平等」に反するとして,是正を求める訴訟が繰り返されてきた。最初に最高裁判所が違憲判決を出したのは 1976年で,1972年の衆議院議員総選挙格差 4.99倍をめぐる裁判だった。その後もたび重なる違憲違憲状態という司法の判断がくだされ,政府も選挙区の人口に応じた定数の是正を 1986,1992,2002年などに行なっている。近年では格差が 2.4倍をこえた 2012年12月の衆議院選挙で,最高裁が 2013年11月に違憲状態との判決を出した。同じ衆議院選挙をめぐっては,広島高等裁判所で選挙を無効とする厳しい判決も出ている。2013年7月の参議院議員通常選挙にも訴訟が相次ぎ,2013年中に出された一審判決に合憲はなく,違憲,選挙無効などの判断がくだされた。4.7倍超の格差を司法が強く批判したかたちとなった。

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知恵蔵 「1票の格差」の解説

1票の格差

民主主義原則は1人1票で、1票の重さは同等であるべきである。しかし人口変動に合わせて議員定数の再配分や、選挙区の区割りの変更が行われない限り、1票の格差が生じてくる。例えば、2004年の住民基本台帳人口(3月31日現在)によると最も人口が少ない選挙区が徳島1区の26万5144人、最も人口が多いのは兵庫6区の56万9911人となり、衆院300小選挙区の1票の格差は2.15倍となった。このような1票の格差を解消するために、議員定数の再配分や選挙区の区割りの変更を行うことを、定数是正という。

(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)

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