シェールガス(読み)しぇーるがす(その他表記)shale gas

翻訳|shale gas

デジタル大辞泉 「シェールガス」の意味・読み・例文・類語

シェール‐ガス(shale gas)

地下の頁岩シェール)層に含まれる天然ガス。超高圧の水を注入して岩盤を破砕し、貯留しているガスを採取する。
[補説]隙間の多い砂岩層に貯留している在来型の天然ガスとは異なり、シェールガスは固い頁岩層の中に存在するため採取が困難だったが、採掘技術が確立し商業生産が行われるようになった。

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共同通信ニュース用語解説 「シェールガス」の解説

シェールガス

地中の「頁岩けつがん」に含まれる天然ガス。米国などで豊富な埋蔵量が見込まれている。従来は掘削が難しかったが、岩に水圧で割れ目を入れるなどの技術進歩により、2000年代に北米で生産が急増。日本のエネルギー企業や商社なども競って権益を取得したが、近年は資源価格下落の影響で採算が悪化し、減損処理をするケースが相次いだ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェールガス」の意味・わかりやすい解説

シェールガス
しぇーるがす
shale gas

頁岩(けつがん)(シェール)という硬い地層の中に含まれている天然ガスのこと。北米、中国や他のアジア地域、中南米、ヨーロッパ、旧ソ連など世界で広く賦存しており、膨大な資源量がある。資源そのものの存在は古くから知られていたが、硬い地層の中で1か所に集中して集積していないため、経済性をもって採掘することができなかった。しかし、シェール層を水平に長距離掘削する水平掘削技術や、硬い地層を水圧で割って隙間(すきま)をつくり、ガスや石油を取り出す水圧破砕法という先進技術を駆使することで、経済的に生産することが可能になり、パイプライン網が発展してきわめて多数の生産業者が一気に取組みを本格化させたアメリカで、シェールガスの生産が2000年代に入って急拡大した。なお、その結果、アメリカではガス利用が大きく拡大し、石炭を代替したため、二酸化炭素(CO2)排出量が大幅に減少した。一方、二酸化炭素より温室効果の高いメタンを主成分とするため、採掘などで大気中に放出されると温室効果が増加する可能性があること、などが課題となっている。

[小山 堅 2022年1月21日]

シェール革命

アメリカで先進技術を駆使することで、従来は経済的に採掘できなかったシェールガスやシェールオイル(シェール層に含まれる石油)の生産が2000年代に入って急速に拡大し、アメリカや世界のエネルギー情勢に革命的な変化がもたらされた。これを「シェール革命」という。シェール革命前は、アメリカでは、石油・天然ガスの生産は減少を続け、石油・ガスの輸入依存度は上昇を続けるものと予想されていた。しかし、シェール革命によりアメリカの生産は劇的に増加して、いまやアメリカはサウジアラビアやロシアを上回る世界最大の石油・天然ガス生産国となった。生産増加で輸入は減少し、アメリカはエネルギー自給をほぼ達成して、石油・LNG液化天然ガス)の輸出も拡大させた。アメリカのエネルギー政策は、輸入依存度上昇への対応から、豊富な石油・ガス供給をアメリカの国益最大化にどう活用するか、に変わった。

 アメリカの石油・ガス生産が急増したことで世界の需給が緩和し、原油価格には下落圧力が強くかかった。このため、石油輸出国機構OPEC(オペック))加盟諸国などの産油国は、シェール革命の影響で生産調整を余儀なくされるようになった。また、前述したようにアメリカ国内では豊富な供給に支えられ、天然ガスの価格が大幅に下落し、競争力を高めた天然ガスが石炭を代替し、結果としてアメリカの二酸化炭素排出量は大きく減少した。また、天然ガス価格の低下とそれによる電力価格の低下は、アメリカのエネルギーコストを引き下げ、産業競争力の強化に貢献した。さらに、活況を呈した石油・ガス産業や石油化学産業と関連インフラ産業がアメリカ経済の成長を牽引(けんいん)し、アメリカの全体的な国力強化をもたらすなど、シェール革命は、まさに革命的な変化をアメリカと世界にもたらした。

[小山 堅 2022年1月21日]

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知恵蔵 「シェールガス」の解説

シェールガス

地下数百~数千メートルの頁岩(けつがん)層(シェール層)に含まれているガス。主成分はメタンで、LNG(液化天然ガス)と変わらないが、従来のガス田とは異なる場所にあるため、砂岩層に含まれるタイトサンドガス、石炭層に含まれるコールベッドメタン(CBM)と共に、「非在来型天然ガス」と呼ばれる。21世紀に入り、硬い岩盤に高圧の水や化学薬品を注入し、人工的につくった割れ目からガスを取り出す「水圧破砕法」の技術が急速に進み、生産コストも大幅に下がった。現在、最も生産が盛んなのは埋蔵量世界2位のアメリカ合衆国である。2008年には「非在来型」が天然ガス国内生産量の50%を超え、これまで全米で約50万人の雇用を生んでいることから、「シェールガス革命」という言葉も飛び交っている。
11年6月には、国際エネルギー機関(IEA)が「天然ガスの黄金時代」という報告書の中で、2035年の天然ガスの生産量は08年比で約60%増加すると予測し、エネルギー関係者の注目を集めた。天然ガスは石油・石炭と比べ、熱効率が優れているわりに、二酸化炭素の排出量が少なく、化石燃料の「優等生」と言われる。中東・中南米・中国のほか、これまでロシア(ガスプロム)にLNGを依存してきた欧州でも、大量の埋蔵が確認されており、シェールガスは世界の資源地図を塗り替えるという声もある。
一方、生産拡大には課題も多い。開発に巨額の費用がかかり、現段階では先端の採掘技術を持つ米国企業の支援が欠かせない。また、大量の水の確保と排水処理もネックになる。環境面でも、破砕に必要な化学薬品や地中に漏出したメタンが水源や土壌を汚染する危険性が指摘されている。加えて、回収段階での大気中へのガス漏出も懸念されており、二酸化炭素の20倍以上の温室効果をもつメタンの大量漏出が現実になると、地球温暖化が加速しかねない。こうした点から、欧州諸国は開発に消極的で、米国でも周辺住民による「水圧破砕」反対運動が広がっている。12年5月には、IEAも「天然ガス黄金時代のための黄金ルール」という特別レポートを発表。1年前の開発推進姿勢から後退し、環境へのリスク分析と持続可能な非在来型ガス開発のための基準づくりの必要性を説く内容になっている。同年8月には、ショーン・レノンがニューヨーク・タイムズに、シェールガスの開発で所有する農地(ニューヨーク州)が汚染されると投稿し、オノ・ヨーコと共に「水圧破砕」に反対するアーティスト団体を設立した。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2012年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シェールガス」の意味・わかりやすい解説

シェールガス
shale gas

頁岩(シェール)層から採取される天然ガス。多くは深さ 1500m以上の場所に賦存する。頁岩は,数億年前に海底や干潟に堆積した有機物に富む泥土で,シルトや粘土の細かい粒子からなる堆積岩である。長い年月の間に泥土層はさらなる堆積物によって深く埋没し,泥土は熱と圧力の作用で頁岩に変成し(→変成作用),有機物は天然ガスとなった。頁岩の中で発生したガスは,長い地質時代を経て,より浸透性の高い岩層へと移動した。これは今日,在来型貯留層と呼ばれるガス鉱床を形成しており,在来型の掘削法によって容易に採掘できる。しかし多くのガスは頁岩の中に留まっており,貯留層への移動はきわめて遅いため,在来型の手段では採掘できない。最も生産性が高いのは,頁岩層を水平に掘削し,次に高圧の水を注入する水圧破砕法(フラッキング)と呼ばれる方法である。1990年代以降,アメリカ合衆国では膨大な量のガスが水圧破砕法で採掘されるようになり,2000年代初めにはアメリカ最大のシェールガス埋蔵地帯であるペンシルバニア州を中心としたマーセラス・シェール層での掘削が始まった。しかし水圧破砕法は,ガスそのものや汚染水などの有害な化学物質が地下水に混入するおそれが指摘され,環境への影響が懸念されている。アメリカエネルギー情報局が 2011年に発表した資料によると,世界のシェールガス推定埋蔵量は中国が約 36兆m3と最も多く,次いでアメリカの約 23兆m3(うちマーセラス・シェール約 3兆~14兆m3)となっている。(→エネルギー資源

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百科事典マイペディア 「シェールガス」の意味・わかりやすい解説

シェールガス

天然ガスの一種で,泥岩に含まれる。在来の天然ガスとの違いは貯留層が砂岩ではなく,シェール(頁岩(けつがん))という泥岩であること。シェールは特に,固く,薄片状に剥がれやすい性質をもつことから,シェールガスと呼ばれる。商業生産は,1970年代にアメリカ東部のアパラチア山脈などに主として分布する古生代デボン紀の頁岩,デボニアンシェールで始まった。石油,天然ガスは根源物質であるケロジェンを含む根源岩となって埋蔵されているが,頁岩は隙間も浸透率も低いため貯留岩とはなりにくい。デボニアンシェールは,非常に厚い泥岩層で,地下深くに埋蔵されており,非常に長い期間で圧密作用を受け,微細な割れ目を生じ,その結果,天然ガスなどが埋蔵され貯蔵される貯留岩としての性質を持つようになった。ただし,その孔隙率と浸透率はきわめて低くいため,シェールガスの生産には高度な技術が必要とされた。2000年代に入って,アメリカで頁岩に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し,さらに頁岩層に接している坑井(こうせい)の表面積を最大にする水平坑井掘削技術という技法で長大な横穴を掘ることが可能となり,シェールガス生産量が飛躍的に増大,シェールガス革命と呼ばれるようになった。世界の埋蔵量では,中国が第1位,アメリカ,アルゼンチン,メキシコ,南アフリカと続いている。ただし,本格的な生産はアメリカ以外では始まっていない。2012年,アメリカの天然ガス生産はシェールガス生産によって,それまで天然ガス生産で世界最大のロシアを抜いており,資源外交の切り札として用いる方針といわれる。日本は地質年代が新しいため,シェールガスの商業生産はできない。

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