ジェンダー平等(読み)ジェンダーびょうどう(その他表記)gender equality

翻訳|gender equality

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジェンダー平等」の意味・わかりやすい解説

ジェンダー平等
ジェンダーびょうどう
gender equality

ジェンダー(社会的性差)にかかわらず社会全体のさまざまな状況において個人が平等な状態にあること。ジェンダー平等主義,男女平等ともいう。ジェンダーに基づいた種々の役割立場を個人にあてはめようとする傾向に歯止めをかけるものである。この文脈においてジェンダーとは,個人のジェンダー・アイデンティティ(自分が男性あるいは女性,またはどちらでもないという認識),もしくはジェンダー・アイデンティティの表れであるジェンダー・ロール(性役割)をさす。ジェンダーは必ずしも個人の解剖学的なとは一致しない。したがって,ジェンダー平等はときとして「ジェンダーや性,セクシュアリティ(性的傾向)に関係のない普遍的な平等」の意味で使われる。
ジェンダーの不平等は雇用,教育の機会,医療面などさまざまな次元現れ,そうした諸問題の存在については幅広い観点から解釈が加えられている。生物学的な還元主義や進化心理学などを含めた本質論的な議論もその一つであり,そこでは,社会における個人の経験は生まれながらの生物的,生理的,心理的な性差に基づく区別反映であるとされる。また,ジェンダーの不平等についての文化的な解釈ではおおむね,不平等な役割が個々人の身に及ぶのは,すでに構築されている社会通念のせいであるとしている。
ジェンダー不平等に対処する試みのおもなものに,平等な待遇付与を目指す政策アプローチがある。たとえばジェンダー・メインストリーミング(ジェンダー主流化)の考えでは,組織的な政策の計画段階および実施段階において,ジェンダーの問題点を体系的に組み入れようとしている。職業上の不平等など,ある種のジェンダー不平等をめぐって大きな議論の的となるのが,背景条件を等しくするために,個人にどの程度の特例や独占的利益を認めるのかという点である。アメリカ合衆国アファーマティブ・アクションのような特例を付与するための差別是正措置がとられることもあり,就労の機会を増やす具体的政策や,復職の権利を伴う有給家族休暇といった権利保護の実現が目指される。そのような取り組みにおいて重要視されるのは,手段や機会の均等よりも,結果の平等をもたらす可能性の高い条件の創出となる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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