翻訳|statin
脂質異常症(高脂血症)の治療薬の一種。HMG-CoA還元酵素阻害薬ともいう。1973年(昭和48)に日本の生化学者、遠藤章(あきら)(1933―2024)らにより発見され、その後も新しいスタチン製剤が開発されている。
本剤の作用機序は次のとおりである。すなわち、肝臓内でコレステロールが合成される際に、その反応速度を調節する役割を果たす酵素であるHMG-CoAを特異的かつ拮抗(きっこう)的に阻害し、肝臓に貯蔵されるコレステロール(コレステロールエステル)を減少させる。すると、細胞質に存在する転写因子SREBP(sterol regulatory element binding protein)の核内への移行が促進される。SREBPはLDL受容体のmRNAを転写することから、LDL受容体の合成亢進(こうしん)が生じ、血中からのLDLの取り込みが促され、結果として血中のコレステロールが低下する。また、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞、血小板などにも作用し、抗動脈硬化作用や、血管内プラーク(粥腫(じゅくしゅ))の安定化作用も認められている。
これらのことから、スタチンには、脂質異常を改善させるだけでなく、冠動脈疾患や脳卒中に対する予防効果があることが徐々に明らかにされている。これらの詳細な作用機序や多面的作用について、現在もさらなる研究が進められている。
本剤の重大な副作用として横紋筋融解症が知られているが、頻度は0.02~0.03パーセント程度とされる。高齢者や甲状腺(こうじょうせん)機能低下症の患者で比較的起こりやすいほか、腎(じん)機能低下者におけるフィブラート系薬剤との併用は、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症誘発のおそれがある。
[編集部 2017年12月12日]
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