スペースデブリ(読み)すぺーすでぶり(その他表記)space debris

翻訳|space debris

デジタル大辞泉 「スペースデブリ」の意味・読み・例文・類語

スペース‐デブリ(space debris)

《debrisはフランス語破片の意》地球の周囲に浮遊する、不用となった人工物。役目を終えた人工衛星や、打ち上げに使用したロケット残骸など。宇宙ごみ宇宙デブリ
[補説]宇宙開発進展とともに増加し、宇宙船人工衛星に衝突するなどの危険性も高まっているが、回収技術は未確立。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペースデブリ」の意味・わかりやすい解説

スペースデブリ
すぺーすでぶり
space debris

地球の大気圏外に漂う人工物体。宇宙ごみともよぶ。運用停止された人工衛星やロケットの破片、宇宙飛行士が落とした手袋やねじなど、人類の地球大気圏外での活動に伴って排出されたものが、地球軌道上を回っている。それらの速度が毎秒数キロメートル(ピストルの弾丸速度の数千倍)に達して宇宙ステーションや宇宙飛行士に衝突すると、大惨事になることが予想されるため、対策が急務になっている。事実、1996年に日本の宇宙飛行士若田光一(わかたこういち)がスペースシャトルエンデバーでのミッションで回収した宇宙実験室には、スペースデブリの衝突によると思われる衝突痕が500か所近くあった。

 スペースデブリの破壊力は非常に大きく、10センチメートルの大きさでも、宇宙船を完全に破壊できる。大きさ10センチメートル以上のスペースデブリは約2万個、10センチメートル以下のデブリも含めると数百万から数千万個あるとされ、将来の宇宙開発の障害になりつつある。その対策として、デブリを大気圏への投入によって落下消滅させる方法や、デブリを軌道から回収するなどの方法が模索されている。2007年には国連宇宙空間平和利用委員会において「スペースデブリ低減ガイドライン」が合意され、ロケット、人工衛星などはデブリの発生を防止するよう設計すること、またそれらの意図的破壊を行わないことなどが求められている。

 日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))がスペースデブリ対策として、「スペースデブリを、観る!」「スペースデブリを、減らす!」「スペースデブリを、除去する!」の観点から研究を行っている。

 また、日本スペースガード協会も上記の観測に協力して、上斎原(かみさいばら)スペースガードセンター(岡山県苫田(とまだ)郡鏡野(かがみの)町)のレーダー観測施設と美星(びせい)スペースガードセンター(岡山県小田郡美星町)の光学望遠鏡でスペースデブリを探索している。同様にJAXAの長野県入笠山光学観測施設では、60センチメートル望遠鏡を使い、大型の軌道上物体を直接観測する技術を研究・開発している。東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター木曽観測所のトモエゴゼンでも、スペースデブリの状況の把握を行っている。

[山本将史 2022年3月23日]

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知恵蔵 「スペースデブリ」の解説

スペースデブリ

利用の目的を失って大気圏外に打ち捨てられ、地球軌道を周回する人工物体のこと。宇宙の破片の意で、宇宙ゴミとも呼ばれる。宇宙開発の進展に伴い、運用が終了したまま放置された人工衛星やロケットの一部、それらの破片など多数のゴミが残されるようになった。スペースデブリの多くは、高度800キロメートルから850キロメートルの軌道付近に集中しているが、それ以外の高度でも増加し続け、高度によって異なるが、数年もしくは、数十年から数百年以上にもわたって周回を続けることになる。
スペースデブリの個数は、米国の宇宙監視ネットワークにより監視されている大きさ約10センチメートル以上のものだけで、およそ2万個になる。それ以下の微細なものまで含めると、無数のスペースデブリが宇宙空間に散在している。なお、人工物体ではなく、彗星の尾などから出された天然の物質からなる宇宙塵(うちゅうじん)も、地球の公転軌道などに広く存在するが、これらは通常はスペースデブリには含めない。
スペースデブリは、人工衛星と同様に、高度2千キロメートル以下の低軌道では秒速7~8キロメートルの非常に速い速度で地球を周回している。高度3万6千キロメートルの静止衛星軌道でも秒速3キロメートルほどの速度である。周回軌道はそれぞれ異なるため、他の人工衛星などと交差して衝突するときの相対速度は更に速くなることがある。実際に運用中の人工衛星などに衝突して、いくつかの深刻なトラブルが発生している。
ISS(国際宇宙ステーション)は、直径1センチメートル程度のものまでの衝突には耐えられる設計となっているが、直径約10センチメートルを超えるようなものが激突すれば、完全に破壊されて乗員の生命が危機にさらされる。このため、ときとして衝突回避操作や乗員のソユーズ宇宙船への退避などを余儀なくされている。これらのことからスペースデブリの増加は宇宙開発において深刻な問題になっている。何らかの方法で回収するなどの方策がいくつか提案されているが、実現には至っていない。また、人工衛星などの巨大なスペースデブリが大気圏に再突入する際には、一部が燃え残って地球に落下する。人的被害の起こる確率はゼロではないが、可能性は非常に低く数千分の一程度である。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スペースデブリ」の意味・わかりやすい解説

スペースデブリ
space debris

宇宙ゴミ,宇宙の破片ともいう。宇宙塵のような自然のものと,打上げロケットや人工衛星の残骸,破片など人工のものがある。 1957年のスプートニク以来これまでに約 4000個の人工衛星が打上げられたが,そのうち大気圏に突入,溶融してしまったものを除けば約 1800個が「ゴミ」となって地球周回軌道を回っている。打上げロケットの最終段もほぼ同数存在し,さらに切り離しの際に飛び散ったベルトやボルト,ナットなど 1cm以下のものまで含めると 350万個以上のスペースデブリがあるといわれる。これらがスペースシャトルなどの飛翔体に衝突すると大惨事を招く恐れがあり,その対策が近年真剣に検討されるようになった。

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