ハラスメントについて確定的な定義は存在しないが,広義には人間としての尊厳や権利を侵害する行為と捉えられる。一般に,①パワー・ハラスメント(パワハラ)は組織における一定の地位や権力を背景として行われるもの,②セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)は行為者の性的な言動に起因するもの,③アカデミック・ハラスメント(アカハラ)は,とくに教育・研究上の地位や権力を背景として行われるもの,として概念上は峻別される。しかし,事象としてのハラスメントは複合的な要素により構成され,明確な区分が困難な場合もある。日本の大学におけるハラスメントに対する問題認識は,1990年代にジェンダーの観点から提起され,2000年代以降に職場における地位・権力上,もしくは教育・研究上の観点へと拡大した。1999年には文部省(当時)が,「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」を定め,セクハラに対応するための委員会などの設置を国立大学に義務付けた。現在では,設置者の別を問わず,ハラスメントに関する相談窓口の設置などの対応が進んでいる。
著者: 橋場論
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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