プラスチックごみ問題

共同通信ニュース用語解説 「プラスチックごみ問題」の解説

プラスチックごみ問題

ペットボトルレジ袋ストロー食品包装や電化製品などのプラスチック製品を廃棄したごみの国内排出量は、2016年で899万トン。不法投棄などにより世界で年間800万トン以上が海に流出しているとみられる。汚染物質を吸着する性質があり、誤飲した魚や海鳥などへの被害が指摘されている。米ファストフードのマクドナルドやコーヒーチェーン大手のスターバックスがプラ製ストローの使用中止を相次いで表明。国内でも外食大手が追随するなど影響が広がっている。

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知恵蔵 「プラスチックごみ問題」の解説

プラスチックごみ問題

自然界で分解されにくいプラスチックごみの処理や再利用に関する問題。特に近年は、海に流れ込んだ後、紫外線や波で劣化して砕けて小さな粒となった「マイクロプラスチック」が引き起こす環境汚染が問題視されている。このため、使い捨てプラスチックの利用の削減や、バイオ由来のプラスチックの実用化など、プラスチックごみを減らそうという取り組みが世界で広がっている。
軽くて強く、加工しやすいプラスチックは、ペットボトルや食品トレー、漁網発泡スチロールなど、様々なものの材料に使われている。使用後にごみとして捨てられる量も多く、国連環境計画(UNEP)の報告書によると、1人当たりの使い捨てプラスチックごみの排出量は、日本は米国に次いで世界2位。プラスチック循環利用協会の資料によると、2017年に日本で出たプラスチックごみは903万トンに上る。
これらのプラスチックごみは、再びプラスチックとして利用されたり、発電などのために焼却されたりしているが、リサイクルにはコストがかかるため、日本は、プラスチックごみを再利用できる資源として海外に輸出して処理してきた。しかし、汚れたプラスチックごみについては、輸出先で再利用されずに放置され、海に流出していると言われている。そして18年、世界で排出される大量のプラスチックごみを受け入れてきた中国が、環境汚染を防ぐという理由で、プラスチックごみの輸入を禁止した。代替輸出先となった東南アジアの国々も、輸入規制の強化に乗り出し、日本や欧米などプラスチックごみを輸出してきた国々では、行き場を失ったごみの処理が課題となっている。
18年の先進7カ国(G7)首脳会議では、プラスチックの削減目標などを盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」が採択された。だが、日本は米国と共に署名を見送り、国内外から批判された。また、世界では、有害廃棄物の国境を越えた移動は、日本を含む180以上の国・機関が結ぶバーゼル条約で規制されている。19年5月、スイスで開かれた締約国会議で条約付属書の改正が採択され、リサイクル資源として扱われてきた汚れたプラスチックごみも規制の対象となった。21年1月の発効以降は、輸入国政府の同意がなければ輸出できなくなる。日本では現在、処理しきれないプラスチックごみが廃棄物処理施設にたまるなどの問題が起きているが、今後、ますます国内で処理する必要に迫られる。さらに、2019年6月に大阪で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言では、50年までに、新たな海洋プラスチックごみによる汚染ゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有した。
また、日本政府はプラスチックごみの削減を進めるため、19年5月末に「プラスチック資源循環戦略」を策定した。小売店に対するレジ袋の有料化の義務化や、石油由来プラスチックの代替品の開発・利用の促進などによって、30年までに、使い捨てプラスチックの排出量を25%抑制するといった目標を打ち出している。

(南 文枝 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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