デジタル大辞泉
「モラルハザード」の意味・読み・例文・類語
モラル‐ハザード(moral hazard)
《道徳の欠如、倫理の欠如の意》金融機関や預金者が道徳的節度を失って行動すること。金融機関が過当競争から預金保険制度を過度に充実した結果、大口預金者が多くの利子をかせごうとして経営があやぶまれている銀行にも預金したり、また、高い利子を支払って資金集めをした金融機関がリスクの高い貸付先に高金利で融資し、経営悪化を招いたりするケースなど。
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モラル‐ハザード
- 〘 名詞 〙 ( [英語] moral hazard )
- ① 保険に加入することで、かえって損害に対する注意が希薄になる危険性。被保険者、保険契約者の不注意や故意など、個人の意識に起因する危険をいう。道徳的危険。
- ② 倫理性の欠如。企業や預金者が利益追求に走るあまり、本来踏むべき手続きを無視したり、自己責任原則を欠くなどの状態をいう。
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モラル・ハザード
もらるはざーど
moral hazard
公的資金の注入や預金保険などのセーフティーネット(安全網)があることから、金融機関の経営者や株主、預金者らがリスクを軽視し、自己規律を喪失すること。通常「倫理観の欠如」「倫理欠如」などと訳される。
日本ではバブル経済崩壊後、ペイオフの全面凍結で預金が全額保護され、政府の公的資金注入で大手銀行は破綻(はたん)しないとされた時期に、モラル・ハザードが広がり、無謀な資産運用や信用供与の広がった時期があった。2008年の世界金融危機時にも、アメリカの大手証券会社ベアー・スターンズの公的救済が政府支援への過剰な期待というモラル・ハザードを生み、リーマン・ブラザーズ破綻以降の市場の混乱(リーマン・ショック)を拡大した面がある。
厳密には、モラル・ハザードは、経済学のプリンシパル(依頼人)-エージェント(代理人)理論principal-agent theoryで、「情報の非対称性」asymmetric informationからおこると説明されている。つまりプリンシパル(本人、株主、労働者、患者など)の利益の実現をエージェント(経営者、使用者、医療サービス提供者など)にゆだねる際、プリンシパルが知り得ない情報がある場合、エージェントの行動が、プリンシパル本位のものでなくなり、資源配分が非効率になる現象をさす。また保険分野では、契約によって損害を避けられるため、かえって被保険者のリスク回避行動を鈍らせる現象をさす。たとえば、自己負担額が少ないため体調の軽い変化でも病院にかかる行動や、自動車保険に加入したため運転時の注意を怠りがちになるなどのケースがモラル・ハザードに該当する。ただ日本では、1998年の金融危機時にモラル・ハザードが盛んに使われたことから、金融分野の「倫理欠如」の意味で使われることが多い。
国立国語研究所は2003年(平成15)、なじみの薄い外来語の一つにモラル・ハザードをとりあげ、言い換え語として「倫理崩壊」を提案している。
[編集部]
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知恵蔵
「モラルハザード」の解説
モラルハザード
情報の非対称性のために、プリンシパル(依頼人)がエージェント(代理人)の行動を観察できず、起こり得る結果の全てについて責任を負わせることができなくなり、エージェントが機会主義的行動を通じてプリンシパルに損害を与えること。具体例として、自動車保険市場を挙げることができる。被保険者(エージェント)は自動車を運転する時の自動車事故の危険を分散化するために、保険会社(プリンシパル)に保険料を支払い、自動車保険を購入する。この結果、事故が起こった際の賠償責任を保険会社に転嫁できるために、意図的あるいは非意図的を問わず、注意が散漫になり、事故率が上昇してしまう。なぜならば、保険会社は情報の非対称性のために、事故が偶然のために起こったのか、被保険者の不注意のために起こったのかを完全に識別することはできないからである。契約理論の見地から見ると、モラルハザードは、全ての起こり得る事柄に対して条項を結ぶことの取引費用が大きかったり、保険契約の違反行為を完全に観察することの費用が大きかったりするために発生する。
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「モラルハザード」の意味・わかりやすい解説
モラル・ハザード
本来は〈道徳的危険〉moral hazardという保険用語で,被保険者の保険加入によって危険事故の発生する確率がかえって増大することを指す。近年では転じて企業経営者の経営倫理の欠如を指すことが多い。経営破綻した金融機関への公的資金の導入,大手ゼネコンの再建計画における株主や経営者の責任,中小企業への貸し渋り対策として上積みされた特別保証制度の保証枠拡大,経営危機に陥りながらも高額な役員報酬を受け取って退職する経営陣などを論じる際,もっとも重要なのがモラル・ハザードとされる。
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モラルハザード
規律の喪失、倫理観の欠如した状態のこと。もともとは保険用語で、被保険者や保険契約者が保険に安心して、不注意や故意により事故を起こす危険という意味で使われる。保険が準備されている結果、リスクを回避しようとする意識が薄れ、リスクを一層促進させてしまう行動を指す。また、会社倒産や業績不振にもかかわらず、経営陣がその責任を明確にせず辞任しなかったり、高額な退職金を受け取ったりする場合などでも使われる。モラルハザードを防止するには、健全な行動を促すためのルールと、それを遵守する倫理観の醸成が重要。
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モラル・ハザード
moral hazard
道徳的危険と訳される。損害保険の用語で,保険契約者,被保険者が保険事故を人為的に発生させるような危険のこと。保険契約者の人格,精神状態や経済環境により生じる。たとえば,火災保険の保険契約者が放火の常習者であるような場合にモラル・ハザードが存在する。また,預金保険制度の問題点として,倒産の可能性があるにもかかわらず保険料が一律なため,加入金融機関がリスクの高い投資へ走る可能性があることが指摘されているが,これもモラル・ハザードの一例とされる。
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